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試合前、交友

野球用語解説あります

 決戦の当日、昨日から降り続いていた雨でグラウンドの状態は悪いが、雨は止んでいた。

しかし雲は厚く空にかかり、太陽は顔を出すことはなさそうだった。

「ていうか? 何ですかあれは?」

 俺の指をさす方には体育祭でよく使われるテントが張ってあり、そこには、一つ何十万もするであろうカメラが並べられており、そこに数人の生徒がいた。

「あぁ、あれは、リクエスト用のカメラよ」

「この、試合にリクエスト制があること初めて知ったんですけど?」

「あら、そうだったかしら? 私が写真部の子に頼んだのよ?」

「あっ、千葉さん今日はよろしくお願いします!」

「えぇ、こちらこそよろしくね? 名幸さん、右田さん、それに山路さん」

 野球好きが、集まり野球をするのが楽しみなのか、千葉さんは負けたら野球部が無くなってしまうというプレッシャーを受けているなどの雰囲気は感じられず、ただ、これから始まる試合が楽しみでならないといった様子だ。

「あと、あのテントは怪我を治療する場所よ? だからほら、保健委員の野川君がいるでしょ?」

「あの、今日はよろしく」

「えぇ、本当なら今日は家で撮りだめたアニメを見ようと思っていたんですが、委員の仕事ならとわざわざ出向いたんですよ? デュフフ」

「あぁ、うん今日はよろしくね?」

 野川君との挨拶が終わったタイミングで、俺は千葉さんに手招きをされて、それに答えるように、近づくと、尚もテンションが高い千葉さんは、「ほら、あれが解説席よ!」と指を刺し、一人浮かれていた。

「浮かれて、いるようね?」

「えぇ、これから始まる試合が楽しみでならないわ」

「いいご身分……負けるとも知らないで……クシシシシ」

 さも勝って当然と言わんばかりの反応を見せる田中さんに、千葉さんは「でも、負けないわよ~」とポジティブな返答をする。

「すまん、すまん遅なって、なんせ野球やるなんて久しぶりやからグローブの手入れに時間かかってなぁ」

 小走りで、俺と千葉さんの元に阪田さんが駆け寄った。

「そんな事より、折原さんはまだ来てないんかいな?」

 呼んだと言わんばかりのタイミングで折原も到着しこちらに駆け寄ってきた。

「ごめんなさいね? グローブにボールの形を覚えさせてたもんだから」

 両チームとも続々とメンバーが集まり始めて、最後は時間を待つのみとなった。

「そうそう、親戚のお兄ちゃんから伝言でね? 怪我はしないでって言ってた」

「あの、怪我なく頑張りましょう……」

「まぁ、やるなら本気でやるけど、怪我されたらどうしようもないからね」

そんな文化祭前の様なほっこりとした雰囲気をしながら話しているが試合時間は、刻一刻と迫り、十四時十分前になった。

 千葉さんはズボンのポケットからメモ帳を取り出し、大村先生に耳打ちをしながら渡した。

 それに、あぁ! と大村先生は答え席をコホンと一つすると、いつもより偉く見えるように立ち振る舞い、紙に書いている事を読み上げ始めた。

「えっと、スターティングメンバーを発表します、一番投手折原さん!」

「一番投手であたしって正気!? ……まぁ、やるけど」

「二番捕手で杉谷君」

「おぉ、俺は二番か! 親友の為にも恥ずかしい所見せられないな~」

「三番左翼手でラファエルさん」

「三番って確かクリーンアップって所だったよね? よ~し頑張るぞ~」

「四番二塁手で千葉さん」

「当然ね?」

「まぁ、あんたが決めたスタメンだもんね?」

「五番遊撃手でえっと、阪田さん」

「うちは、五番か? 縁の下の力持ちとして頑張るで」

「えっと、六番三塁手鈴木くんです」

「やっぱり、鈴木は三塁手よね?」

「元オリオンズの選手と重ね合わせないでくださいよ?」

「七番中堅手、小林さん」

「まさに、ラッキーセブンという事か!」

「八番に右翼手武田さん」

「おぅおぅ、八番から攻撃ってわけか?」

「九番一塁手平野さん」

「えっと、ミスはしないように頑張ります」

 スターティングメンバーの発表が終わり、円陣を組むことになった、と言ってもどちらかと言うと口下手な、大村先生の考案というよりかは、千葉さんがやってみたかっただけの様な気もするが、最後の声掛けに入った。

「どんな結果になってもこの試合が最初で最後だけれど、予祝はやっとかないでいいかしら?」

「ってそれはあかん奴やないかいな!」

「だったら、あかん野球部優――」

「それも、あかんちゅうねん! 今の時代はアレや!」

 千葉さんと阪田さんのやり取りで俺を含めて皆の緊張をほぐし、円陣は終わった。

そして十四時になったと同時に、試合が開始されるのだった。


リクエスト 試合中に2回使用できる権利。審判の判定に不服がある場合カメラ判定を行える。審判の判定が覆るとリクエスト回数は消費されないが判定が覆らなかった場合は1回減る。


クリーンアップ 野球の打順の3~5番の打順に入った選手達のことを表す言葉。会話的にはクリーンナップとも言われるが意味は一緒

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