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何故、野球場にクラスメイトが?

人はあるはずのない所にあるものを見つける力がある。

それは例えものでなくても、俺の目のまえで一人の美少女が白地に縦縞のユニフォームを着て外野席で跳ねている姿もそうと言える。


クラスでは所謂(いわゆる)、陰キャと呼ばれる人種の俺、鈴木良太(すずきりょうた)はひそかな趣味があった。

こんな陰キャならアニメやゲームだと思われるが、その趣味は……



「一番センター福田……」

「うぉぉぉぉ」

そう俺のひそかな趣味は野球観戦だ!

チケットを見せ球場入りすると太鼓の音と歓声がこだまする。

薄暗い通路を通り階段を上ると白い光に灰色の天井、階段を上りきると緑の芝生を走るマスコットたち、試合前のファンサービスかと軽く眺め席に向かう。

「応援出来て、試合観戦もできるそれにいて安いとか最高かよ! 外野席やっぱ学生の見方だわ」


席に着き、最低限の荷物を置くと球場内の売店へと向かい、球団の帽子をかたどった容器に入る料理を買う。

レフト外野席の席に戻ろうと、もう一度通路を通り階段を上ると応援合戦が始まっていた。

ビジター側の応援はすさまじく球場が揺れるほどに声援を贈るファンたちを見ている時は床が抜けるのではないかと思う。


そんな応援の中で一人、俺はとある人物に目が行く。

それは、俺の通う学校の高嶺の花である[[rb:千葉麻美 > ちば まみ]]だった。

呆然と彼女を見つめる、するとそれに気が付いたのかこちらに視線を送り返す。

俺はまずいと思い自身の席へと戻り、試合観戦に集中した。



翌日の俺は睡眠不足だった。

昨日の試合は接戦で楽しかった、しかし昨日の千葉さんの事が気になり眠る事ができなかった。

「おい、鈴木!」 

「なんだよ! 杉谷」

こいつは俺の数少ない友人で何故か俺なんかに絡んでくる。

「お前? 何やらかしたんだ?」

「いきなり、失礼だな?」

「だってよ、お前にお客さんだなんて」

杉谷の指を指す方には寝不足の原因であり、昨日にインパクトを与えた千葉麻実が立っていた。


学校のマドンナでもある、千葉さんが陰キャの俺を指名するなんて、ドラフトの一位に無名の選手を指名するみたいな話だ。

学校のマドンナが立つ教室のドアの前へと向かう。

後ろからは男子生徒から痛い視線で見られ、なんで俺がこんな目に遭わないといけないんだと名指しの千葉さんを少し恨む。

「鈴木君よね?」

「……はい」

「ちょっと、こっち来てくれるかしら?」

千葉さんに言われるがままに、千葉さんの後ろを着いて歩く。


俺たちの通る廊下はいつも陽キャたちの騒がしい声とドタドタという慌ただしい足音が響いているが、この時間帯では異常と言える。

その理由は陰キャの俺と真反対の千葉さんという奇妙な組み合わせが廊下の真ん中を歩いている事が理由だろう。

千葉さんに連れられて、一つの空き教室に案内される。

俺は何をされるのかと言う恐怖とこの有り得ない状況に混乱していた。

(もしかして、俺の秘密を? いやこんな陰キャが野球のファンだなんて、ばらしたところで何の得もない。

どちらかと言えば千葉さんの趣味をばらすなとくぎを刺しに来たのか?)



そんな事を考えていると、千葉さんが空き教室のカギをガチャリと閉めると俺の前へと行き、一呼吸おいて俺の目を見つめる。

「驚いたわ、まさかあなたが千日オリオンズのファンだったなんてね!」

「はい?」

俺はぽかんとした顔をしていたのだろう。

「もしかして、違うの?」

驚きながら、聞き返す千葉さんは「えぇ―やっと仲間を見つけたと思ったのに!」

あからさまに落胆した表情を映す

「えっと、千葉さんはもしかして……」

「そうよ! 私はオリオンズを一筋に応援しているわよ!」

「そうなんですか……」

俺はイメージを崩したくなく、俺を呼び出したのかと思っていたが、全く別の理由だった為驚いていた。

千葉さんはまた、顔をあげて、詰めるように聞いてきた。

「じゃあ、なんで鈴木君は昨日オリオンズ側で応援していたのよ!」

「いや、俺、野球が好きなだけで贔屓球団とかありませんし」

「へぇ、そう」

千葉さんは、何かをたくらんだ笑顔を浮かべる。

「えっと千葉さん……」

「贔屓球団がないって事は、これからロッテの沼にはめれる、という事ね!」

千葉さんは目を輝かせ、こちらに見つめるのだった。



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