推しには真摯に向き合う様に「喝」!
部室には、俺の他に千葉さんや折原等昨日のメンバーが勢ぞろいしており、大村先生は少し遅れて部室へと来た。
「あの、先日は、ご、ご、ご迷惑おかけしました」
「いえ、あの状況だと仕方ありませんから」
後日(といっても翌日)大村先生に野球部の部室へと出向いてもらい、事の顛末を一から伝えた。
「なるほど、でもどうして先生なんでしょうか? 先生部活の顧問なんてやった事ないですし……」
「いや〜、ちょっと悪いかな〜とも思ってんけど今年のオープン戦で先生を見たからもしかして野球興味あるんかな〜思って」
うぇ〜とまたもオドオドする大村先生は顧問の選考理由が、野球好きだった事だと知り、改めて混乱をし始める。
「で、でも、あれは……友人に誘われ……」
「いや、確かあんとき先生一人や思うたけどな〜、それにゴッサムズのユニフォーム来てたやんかいな?」
この部活から逃げたいのだろうがことごとく逃げ場を潰され、困り果てる大村先生に折原は拒む理由をストレートに聞いた。
「顧問と言うよりも、あの〜」
大村先生のはっきりしない態度にイラついたのか? 折原は少し強い口調で「先生なら、もっとはっきりしなさいよ!」と喝を入れる。
「は、はい!」
喝が聞いたのかそれとも、大きな声に驚いたのか少しハキハキと喋りだす。
「あの、私、別に顧問が嫌なんじゃなくて……関西なのにゴッサムズファンっていうのが嫌で、今まででも、友人にその話をすると、関西なのにって驚かれて……その度に私、変なんだなって思わされて、でも野球をゴッサムズを嫌いになることも出来なくて……だから私がゴッサムズファンだって事は隠そうと……」
詰まりながらも大村先生は、自身の感情を打ち明けて言った。
それに、俺を含め三人は沈黙を辞める事は出来ず、かける言葉が見つからないとはこの事を言うのだろうと感じていた。
そんな沈黙を折原が破るかのように一つため息をつき大村先生に言葉をかけた。
「先生さ? なんで好きな事が恥ずかしいわけ?」
「えっと、それは……」
「ゴッサムズファンなんて関西だって関東だっているじゃない! それにチーターズに入る選手って案外ゴッサムズファンが、多いらしいし」
「でも……それとこれとは」
「別じゃない! 好きな球団の事好きって言う! その為には環境を買えるか自分を変えるかの、二択なの! 環境変えられないんだったら先生が変わればいいじゃない!」
「……」
「見てみなさいよ! ここに、関西に住んで学校に通っているのに、オリオンズファンがいるじゃない! オリオンズファンなんて、ゴッサムズファンより、珍しいわよ! それでもアイツは自分の好きな球団の事を曲げたりしないでしょ!」
大村先生は折原の気迫に負けて、黙っていたが、昨日の様に涙は流れていなかった。
「どうして、ゴッサムズが好きなの?」
「それは、昔父と一緒に良く観戦に行っていたから……」
「なら、尚更その親子の思い出を隠したらダメじゃない!」
ものすごい、折原の喝に場は静まり返ったが、その空気を和ませる為か、それともただ単に空気が読めていないのか千葉さんが口を開く。
「オリオンズって関西だとマイナーなの?」
俺と阪田さんに千葉さんは問いかける。
「まぁ、主にはチーターズかポンタースやろな?」
「後、ゴッサムズじゃないですか?」
俺の一言に反応した大村先生は俺に質問をした。
「関西で、ゴッサムズファンって多いの?」
「まぁ、そこそこいるんじゃないですかね?」
「断然、オリオンズよりはおるやろな?」
「そうなんですねぇ〜」
「そうなの!」
大村先生は少し健やかな笑顔に表情は変わり安堵をする中で隣では、自身がマイノリティ側だと初めて知った事に驚きを隠せない人もいた。
だが、さすがわ千葉さんだ。今回も素早い立ち直りを見せて、少し脱線した話を元に戻すと「それで、顧問の件受けて頂けますか?」
「……はい、もちろん」と憑き物が落ちたような顔で大村先生が了承をすると、千葉さんはやった〜と喜びを見せた。
「だけど、条件で……あ、もし良かったらの話なんですけど……折原さんも部員として迎え入れたいんですが……」
大村先生の一言に折原に視線が集まる。千葉さんの入ってくれるわよねという、期待の視線とやめといた方がという阪田さんの視線、そしてどっちにするんだろうと興味のある俺の視線を浴びた折原は「仕方ないわね、鈴木が心配だから入部するわよ!」
その一言で、千葉さんは人生最高の日と言わんばかりの笑みを浮かべ、飛んで喜んだのだった。
「それで、どう? あの部活は?」
「いや、なんというか顧問の方が決まってしまって、部員も三人に増えましたし」
「じゃあ、仕方ないわね? 力ずくにでもあの部活を潰しましょう、そう野球部を……」




