野球部は心をフワフワにする力を持っている
授業中になっても、俺は野球部の事を考え込んでしまっていた。
昼休み直後の授業である、古文の内容は耳に入る事も無く、はるか夢の彼方へと飛んで行ってしまっている。
いわゆる上の空だ、そんな状態に俺も、内心驚いていた。
俺は野球部に、千葉さんの熱い思いを受けて入ったが、どちらかと言うと、波に呑まれたと言った方が正しいとも考えていた。
そんな中で俺は野球部に入りその空間が気に入って、野球部の事を一番に考える様になっている。
居心地がいい理由が、共通の話題で盛り上がれるからなのか、それとも他の理由があるのか、今は考えても答えは見つからないだろう。
「えっと、あの……鈴木くん?」
「あっ! はい」
「次のところを、えっと読んでほ、ほ、欲しいんですけど」
授業中に上の空だった俺に、古文の大村先生が歩み寄っていた。
次のところを読んで欲しいと、話が頭に入ってない俺に問いかけていた。
焦った俺の反応を見て、クラスではクスクスと笑い声が飛び交う。
そんな中、顔が熱くなるのを感じつつも、俺は指定された文を、読み上げた。
授業中に笑われ、恥ずかしさを隠しきれないだろうと、クラスメイトの心遣いか、単なるぼっちなのか? 俺の周りにはからかいに人が寄ってこなかった。
ただ一人を覗いては、「おいおい、上の空くん? どうしたんだよ」
「うるさいな! 杉谷」
「まぁ、そう怒るなって、友達として、心配してるんだぞ?」
「別になんでも無いよ!」
「本当にか?」
「あぁ」
「まぁ、こんなお調子者の脳筋馬鹿だけど、困った事があれば、協力するぜ! 友達だしさ」
一年の頃、俺がクラスから、孤立していた時、唯一俺に話しかけて、俺の反応が悪くても止まる事なく話し続けてくれた、杉谷の言葉は信頼できるものだった。
二人で、話している所を割って入るかの様に、俺は言葉をかけられた。
「あの、鈴木くん?」
「はい」
「えっと、頼みがあるんですが……もし嫌なら断ってもらっても構いません」
「なんですか?」
「あの……今日提出のプリントを放課後持って来て貰えませんか? 先生、次も授業があって、そのクラスのプリントも持っていかないと行けなくて……あの、その」
大村先生はいつものように自信が無さそうで低姿勢な物言いをしている。
「わかりました! 今日の授業半分、上の空でしたし、それのお詫びだと思って頑張ります」
先生はまたもオドオドとしながら「い、いえ、元わといえば先生の授業が退屈なのが、原因ですし……」
「そんな、事ないって! 自信持ちましょ! 先生」
「は、はい、そうですね杉谷くん、えっとでは次も授業ありますので、プリントお願いします」
そういうと、大村先生はプリントを俺の机の上に置き、教卓の上にある、教材を抱え、次の授業の先生にクラスを託し、でて行ってしまった。
「この、プリントどうすればいいんだ?」
「さぁな、前に置くと、糸井先生の授業の邪魔になるし、とりあえず鈴木のカバンの中に入れといたら?」
ノーテンキな答えだったが、他の方法が思いつかず杉谷の言う通り、カバンへと丁寧に入れ、カバンを閉じた。
次の授業は、勉強へと意識を持っていっていたが、やはり、野球部の事を頭の片隅で考える事を辞める事が出来ないでいる。
それは、ホームルームもそうで、考え込みながら、気がつくと、部室へと向かい顧問を誰にするかと言う話し合いに参加をしていた。




