野球部のチルさは消えつつある日
そんな事があった、翌日だったが、何故か全員が、部室へと揃い、野球のゲームをしていた。
「オールスターだれに入れようかしら?」
「知らないわよ! まぁ、応援してる選手でいんじゃないの?」
「後、何日で締め切りでしたっけ?」
「それは、大丈夫よ! まだまだ期間はあるから」
ドアをガラガラと勢いよく開ける音がし、ちらっと見ると、阪田さんだった。
だが、安定のと言っていいのか、解らないが、俺を含め三人は阪田さんの無視をした。
「って、無視すんな!」
「あら、三‐三四、さんじゃない?」
「名前で呼ばんかい! うちの名前は阪田虎々や」
「それで、どうして来たの?」
「きのう、言うたやろ! 明日も来るって!」
怒り気味の阪田さんに対し、冷静な千葉さんは淡々と質問をしていった。
「だけど、どうしてそんなに怒っているのかしら?」
「当たり前や! よくも……よくもだましてくれたな!」
「何の事かしら?」
「きのうのユニフォーム2001年代で背番号22それにチーターズやったら、藤山や思うやろ! せやのに、なんでギンケードやねん!」
俺と折原は二人の会話においていかれていた。
根っからの野球ファンの会話に、一応野球が好きではあるが、推し球団がない俺はそこまで入れ込む事が出来なかった。
折原は椅子に座り、怒れる坂田さんを見つめながら1つの疑問を投げかける。
「っていうか? もしかして阪田さんチーターズファンなの?」
何を言っているんだという顔を浮かべる阪田さんは、当然の様に述べるのであった。
「当たり前、やんかいな! 関西人、言うたらチーターズ、大阪言うたらチーターズやん? こんなん、常識やで?」
その様子に阪田さんに質問をした、折原は、体を少しプルプルと震わせながら、外にも聞こえるのではないかというような大きな声で、叫んだ。
「勘違いしないでよね! 大阪の球団はポンタースだって事!」
その気迫に押された阪田さんは言葉を失い固まってしまっただが、プライドが許さなかったのか、阪田さんは直ぐに反論した。
「フン! 笑わせるわ? 確かに大阪の本拠地はポンタースやけど、人気は断然チーターズや!」
この揉め事に、何故か折原も介入し、余計ややこしい事になっていく。
「折原も、阪田さんも落ち着いてください!」
「鈴木は黙ってて、ここは譲れないの!」
「どこが贔屓球団かは知らんけど、ちょっと黙っといてくれへんか?」
二人の言い合いを俺は止めようとしたが、止められなかった、というよりも二人の言い争いは勢いを増していた。
「二人とも落ち着きなさい!」
千葉さんの一括で二人の言い合いはぴたりと止まった。それもそうだろう千葉さんはあまり大声で怒鳴りつけるようなタイプではない、そんな人が大きな声でそして威圧的に言うのは俺も、初めての経験だった。
「虎々さんも、ギンケードみたいに当たり屋にならないでもらえるかしら?」
冷静を取り戻した阪田さんは、反省したのか落ち着いた口調で折原と話す。
「さすがに、好きな球団の事とはいえ、向きになり過ぎたわ」
「あたしも、ちょっと熱くなりすぎてた、ごめんね鈴木」
二人の怒りは静まったようで、内心ほっとしたが、初めて見る千葉さんの一面に困惑は隠しきれなかった。
「っていうか、今うちの事、ギンケード見たいって言ったよな?」
「あら、そうだったかしら?」
困惑していたが、もう千葉さんはいつもの千葉さんに戻っているようで、切り替えの早さも驚くほどだ。
「まぁ、なんや今日はなんか疲れたさかい、うちはもう、帰るわ」
阪田さんは嵐の様に来て嵐の様に去る人だと心の中で思いながらも、なんだかんだ静かな野球部に楽しさがあるようで俺は好きではあった。




