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文化部の野球部も雨は嫌いです

今日も俺は放課後にあの教室へと向かうこれが最近の日常だ。

しかし、今日の廊下はいつもより騒がしく混んでいる様で陰キャな俺は、声もかけず人の隙間を縫うように抜ける。

環境は変われど、人間根本的な所は変わらないようだ。


人の波を避け、いつもよりゆっくりと部室の前にたどり着いた俺は、扉をスライドさせ中に入る。

今までの少しレアな日常から、変わらぬ日常に戻るとしよう。

「お疲れ様で……す」

「遅かったわね!? 鈴木」

「いら……しゃい……鈴木君」

平常運転というべきか部室で本を黙々と読む折原の机を挟んで向こうにいるのは、いつものように明るく無駄にテンションが高く元気な千葉さん。

ではなく、机に突っ伏して項垂れる千葉さんの姿だった。

(んっ! いつもと違う!)


「おい、折原? 千葉さん(アレ)はどういう事なんだ?」

俺は折原の耳元により小声で状況を確認する。折原は読んでいた本をパタンと片手で閉じ俺の声に反応してくれた。

「知らないわよ? あたしも。あたしが来た時にはもうあんな感じだったし」

小声でのやり取りをしている間も項垂れる千葉さんは言葉にならない声を漏らすだけであり、元気が無いようだった。

「確か、昨日は千葉さんが応援するオリオンズは、勝った筈だし」

「えぇ、守護神は楽しませていたけどね?」

「その事、知ってるって事は、やっぱり折原――」

俺がそこまで言うと、折原は変わらず顔を真っ赤にし大きな声で否定する。

「はぁ? 違うから、野球が好きとかじゃなくて……そう! あの女が応援するチームの醜態を見てやろうと思っただけよ!」

中々に無理のある言い訳をしている折原にいつもならば突っかかって来る千葉さんだが、今日は驚くほど大人しく、俺は気持ち悪ささえ覚えた。

それは同じなのだろう。折原もいつもと違う千葉さんにイライラしてきた様で折原は千葉さんに声を荒らげる。

「あぁ〜もう! なんなのよ! 今日のあんたは、しっかりしなさいよ! 何があったのよ!」


折原の声が届いたのか、千葉さんは顔をすっとあげ、今日で2度目だろう。伝わる言葉で話し始めた。


「アレよ……」

千葉さんはか細い声で話しながら指を差した。

俺と折原が千葉さんの指す方向に目をやるとそこ薄暗くシトシトと雨の降る外が見える窓だった。


「もしかして、千葉さん、低気圧で体調が悪いんですか? なら早く帰った方が――」


「違うわ、今日のオリオンズの試合が無くなるのよ……」


「そんな、理由! あんたどれだけ野球バカなの!?」

折原は大声をあげると同時に呆れた表情を浮かべる。


「野球バカ? 折原さんは推し球団の試合が雨で中止になったらどうなの? 悲しくならない?」


「ならないわよ! そこまで野球好きじゃないし、それに……ポンタースの本拠地はドームだから雨の影響無いし……」

折原は最初の勢いとは違い尻すぼみにボソッと話した。


「それに、ここは雨でもオリオンズの本拠地は雨か分からないじゃないですか? ね?」

俺は苦笑いをしながら落ち込んだ千葉さんを慰める。

「鈴木? こんなバカな悩みに付き合わなくっていいわよ?」

折原はツンとしながら再び本を開き読み始める。

「雨だと明日の部活動が出来なくなるのよ!」

「明日の部活動を休みにすればいい話じゃない?」


俺は千葉さんと折原の言い合いを苦笑いで眺めながら、サッとスマホを取り出し、オリオンズの本拠地の天気を確認する。

俺はハッとスマホの画面を見て驚き、千葉さんに声をかける。

「千葉さん! オリオンズの本拠地の天気を確認したらほら、」

折原とのいいあいを遮り俺は千葉さんに自身のスマホを見せつける。

「見てください千葉さん! オリオンズの本拠地の天気、17時から晴れる見たいですよ!」

スマホを見た千葉さんの顔は晴れる様に明るくなり直ぐにいつものテンションへと戻るのだった。



「野球部……こんな変な部活うちが何とかしたる!」









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