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アレステリア国物語  作者: 鳩峰浦
第二章
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24 極めて私的な依頼

 「あれか……あの、飛行艇にぶつかってきた……」

 「そうだ、お前達がマルカンティアに来た時の飛行艇。あれは小型の空鯨から攻撃を受けた痕跡があったな」


 小型?

 飛行艇にあれほどの衝撃を与えた存在が、小型?


 「この季節、マルカンティア上空は、あいつらの求婚が行われる。あいつらの求婚は、雲の中に隠れて行われる。だから、この時期の雲の中は、絶対に入っちゃいけないんだ。求婚の邪魔をされた空鯨は、雄も雌も、怒り狂うからな」


 へー、空の雲の中で求婚だなんて、何か素敵じゃないの。

 「邪魔をしないように、雲を避ければいいのでは?」


 「今日から明日にかけて、マルカンティア上空を巨大な雲が覆う。花火大会前、毎年恒例、年に一度の豪雨の2日間だ。それは、空鯨達の、結婚式会場みたいなもんでな。この時期、この雲の発生とともに、大気が不安定になる。通常、すべての飛行便は運行停止。だが……明日までに、至急、原材料の薬品と金属粉を、マルカンティアに届ける必要が生じた。花火大会用の保管倉庫に落雷があって、一部の花火が焼失したんだ。それで、王室が職人をかき集めたんだが、原材料が不足してな。リレニア商会に在庫があることが判明したってわけだ」


 ええと……つまり……。


 「極めて危険な雲の中を突っ切って、花火の材料を運べってことですか?」

 コテツが、やや警戒した声でそう言った。


 「王室が絡まなければ、本音は断りたい依頼だ。危険度が高すぎる。だが、王室はこの案件に特殊な報酬を設けてきた。アレステリア南部への穀物輸出関税の1年間の引き下げだ。南部は昨年、日照りがひどく、今年は王都から備蓄穀物をを搬出してる。多分、交渉用にとっていたカードの一つだろうが、ま、この案件を受ける意義は、君たちの評価を上げる上でも、高いものになるだろう」

 それは……確かに、私たちにとってもメリットではある。評価を早く上げることができれば、それぞれの目標に近づくの早くなる。


 私たちは、顔を見合わせた。


 「正直、新人5人には荷が重い。だが、もう時間がない。リスリルにいる警邏官は君たちだけだからな。こちらからは、君たちの護衛として副隊長に出発の準備をさせている。さて、どうする? 引き受けるか? 最後は、君たち次第だ」


 「一つだけ……王室はどうしてそんなに花火にこだわるんです? 少し打ち上げる数が減ったって……」


 「国王の母親……母后が、大病を患ってる。見せたいんだとさ。完全な花火を。つまり、極めて私的な依頼ってことだ。そして、そんな私的な依頼で、国を動かしてる。正直、私は不快だが、ね。さて、改めてどうする?」


 ゼスト隊長は沈黙した。


 極めて私的な依頼。


 それに、命を晒せ、という。

 引き受けない、という選択肢は、それはそれで正しいような気がした。

 

 「……きっと、このくらいのことは、何とかする必要があるんだろうな」

 コテツがぼそっと呟いた。


 「ゼスト隊長、これ、危険だったら途中で撤退するのはありですよね」

 「当然だ。あらゆる公的案件は、完遂されなあい可能性を含む。ま、引き受けて失敗、は大きく評価を下げることになるが、な」


 コテツが、みんなに視線を送った。


 「僕は一人でも受けるけどね」

 ドレイク君がコテツに視線を返す。


 「お前一人に抜け駆けさせるわけにはいかないな」

 「自分は、空鯨に興味がありますね」

 「危険な時は、ちゃんと撤退するのよね……」 

 ソラがため息をついた。

 「ま、最悪、コテツ君の側でキリンちゃんにくっついてれば安全かな」


 え、何よそれ……ソラ……。なんかそれはちょっと引っかかるけど……。 


 私は、みんなに一度視線を送った後、通話機に近づいた。

 「ゼスト隊長、本件、5人で引き受けます」

読んでいただいてありがとうございます!

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