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アレステリア国物語  作者: 鳩峰浦
第二章
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19 相手の気持ち

 「コテツ君、寝たかな?」

 「うん、あれは寝たね……」


 ソラの電撃で弾き飛ばされた後、しばらく不機嫌そうにしていたコテツは、平謝りのソラと私があげたクッキーで少し機嫌をなおして、マルカンティアの本を何となく眺めていたが、いつの間にかソファの上、毛布にくるまって静かな寝息をたたてていた。

 

 ソラと私は一緒のベッドで寝ることにした。 

 二人でベッドに入っていると、なかなか暖かい。そういえば、こんな風に誰かと一緒に寝たのなんて、いつぶりだろう。


 施設に引き取られて、最初の頃、ミリアムのベッドで寝たとき以来かも。

 ソラはちょっと恥ずかしがっていたが、これが一番安全だろう、という話。


 万一、エレナが狙ってきても、私の近くにソラが居れば、多分コテツは……。


 エレナ、か。

 隣で横たわるソラに視線を送る。


 「思い当たるとしたら、あの最初の的当て、かな」

 「え? あの時の?」

 「うん」

 「あれは……」

 「そうよ、だってさ。ひどかったじゃない。ソラのこと馬鹿にしてさ。いっつも私とソラのこと、目の敵にしてるみたいだったし。やりかえしてやろうって、少しはさ、思ってたよ、そりゃ」 

 そう、私の放った矢が、二本とも的の中心を射抜いて、それは、すっきりした。

 

 さぞ、悔しがるんだろう。人のこと、馬鹿にしておいて。

 幼かった私は、そんな風に思っていた。

 でも、一瞬。

 あの時、エレナが見せた表情は。

 あれは悔しさじゃなかった。


 「……ねぇ、キリンちゃん」

 「ん?」

 「エレナ、本当に、私たちのこと、殺そうとしてるのかな?」

 ソラが、天井の方に視線を移した。


 「殺そうと思ったら、もっと私を狙えば良かったのに」

 「どういうこと?」


 「キリンちゃんに、いくら撃っても、コテツ君が防いじゃうじゃない。そんなの、エレナだったら、絶対すぐ気付いてた。あの子、頭が良いから……無駄なことなんて、しない。するはずない」


 そう。

 エレナは、賢かった。だからソラの言うこともよく分かる。

 何か、彼女らしからぬ攻撃の仕方。


 「本当に、本心で動いているのかな。あの、黒いローブ……」

 「そうね。私も……少し心当たりがあるの。あの黒男、私の心を、何度も操ろうとした。同じことを、エレナにもしていたとしたら……あの黒男は、心の隙を狙ってくるから……」


 何か、付け入られて、操られている可能性はある。

 「まだ狙ってくるはず。何とかして捕まえましょう。聞きたいこともあるし。……また、コテツの力を借りないといけないけど……」


 「コテツ君、すごいよね……ほんと、キリンちゃんだけのナイトって感じ」

 「そ、そんな……ちょっと、ソラ。発言に悪意を感じるわ」


 「本当のことだもん。私は全然守ってもらえなかったし……」


 ソラがちょっとすねたような顔をした。


 それで、私はなぜだか思いの外、動揺してしまった。


 「え……あ……」

 「ん?」

 「ソラも……コテツに守ってほしかったり……する?」


 考えたことも無かったけど。

 私たち、結構ずっと5人で行動してるし。

 そういえば、ソラがコテツをどう思ってるか、何て改めて考えたこともなかったけど……。

 

 急に緊張してきた。

 

 「……そうだったら、キリンちゃんはどうする?」

 

 ソラが、まじめな、真っ直ぐな視線を私に向けてきた。


 

 困った。



 驚くほど困った自分に、頭が真っ白になった。

 え、どうしよう。


 


 「……」




 「え、あっ、その……違う……違うの」

  

 ソラが、ひどく慌てている。

 

 あれ?

 

 シーツが濡れてる。

 

 あ、私、泣いてる?

 

 「……ごめん……キリンちゃん、間違った」

 

 ソラが私をぎゅっと抱きしめていた。

 

 「そんなに困らせると思わなくて……違うの、私……駄目な奴だ……」

 

 私の胸元に顔を埋めたソラが、暖かかった。

 

 「あの、その……私は、全然、コテツ君のこと、何とも思ってないから、安心して」

 

 「な……何を言い出すのよ?」

 「だから、ごめん、泣かないで。私、ひどいことした」


 「べ、別に何も、私は……」

 「嫉妬」

 「え?」


 嫉妬?


 「嫉妬してたの。だって、キリンちゃんにとって、コテツ君は、あんまりにも、特別なんだもの。キリンちゃんに何かがあったら、自分の危険も何も省みず、盗賊でも矢でも、何だって。私にはできない。あんな風に、役に立てない」


 「ソラ……」

 「ずるいよ、あんなの。私だって、特別になりたかったのに」

 「え、えーと……その……それは……」

 「……でも、ちょっと満足した」

 「ま、満足?」


 どういうこと?


 「何でもないです」

 ソラが、ふわりと身体を離した。


 「後は、コテツ君が何考えてるか。分からないね。キリンちゃんのこと、どう思って守ってるのかな」

 「コテツは……あいつは……しょうがないな、と思ってるんじゃないかな。昔、噛みついたこと、未だに根に持ってるし……」


 ソラが、きょとんとした目で私を見つめた後、くすくすと笑い始めた。

 「ほんと、人の気持ちって全然分かんないね」

 そう言うと、ソラは、急に、明日も早いから、寝よっか、と言った。

 

 ***


 自分の思いが強いほど、相手の気持ちって見えなくなるんだな。

 でも……私は、本当にひどい奴だけど……。

 歪んでるって思うけど。

 泣くほど困ってくれるなんて、思ってなかった。

 それだけで、もう十分私は幸せ。

読んでいただいてありがとうございます!

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