17 意気投合
中継宿場で、割り当てられた一棟の平屋は、マルカンティア首都のソレイユで俺たちが借りた警邏官宿舎と良く似た構造だった。イースターの話では、設計者が一緒だという。
俺たちは、平屋の中心テーブルで、暗い顔でお互いに視線を送り合っていた。
「命を狙われるほどの恨みを?」
首を振るソラとキリン。
エレナの矢は、明らかにこの二人に集中していた。
特に、後半はキリンばかりを。
「何なら……どっちかと言えば……」
キリンが眉間にしわを寄せる。
「被害に遭ったのは私たちの方よ。エレナは、いつだって意地悪ばかりしてきたし、挙げ句の果てに、2の試験では襲われて……」
「逆恨み……」
ドレイクが呟いた。
ソラが驚いたように目を見開いてドレイクに視線を送る。
「私たちのせいで、退学になったってこと?」
「それなら……理解できる、とは言わないが、説明はできる」
俺には全く分からなかった。
エレナは散々、キリンの悪口を言い、クラスで孤立に追いやった主犯格だ。何なら、俺もついでにあれこれ言われたし。
何でそこまでキリンを嫌うのか。
「お前は、キリンさんを守ってりゃいいよ。どうせ、分かんないだろ」
むかっ。
「な、何だよ、その俺が馬鹿みたいな物言いは! お前は分かるってのかよ? 同じ生徒に悪意を向けて、挙げ句の果てに盗賊に荷担して、命まで狙ってきて」
「全く分からないでも、ない。それと……」
ドレイクが、腰に下げた刀に視線を落とす。
「黒男と通じている可能性が高い。極めて、危険な状態だ」
そう。エレナの身にまとっていた黒いローブは、明らかにあの黒男と同じ力を放っていた。森の中を滑るように駆け抜け。ドレイクの攻撃をからめ取り、刀を奪った。
「とにかく。明日、リスリルに着いたら、ゼスト隊長に報告しましょう。それと……コテツ君」 ん?
ソラがじっと俺の方を見ている。
「今日は女子部屋で寝て」
がたっと、ドレイクが椅子から転がり落ちた。
「え? 嫌だ」
俺は間髪入れず、反抗した。
何でそんなとこ行かないといけないんだ。
めっちゃ気詰まりじゃないか。
「ダメ。ソファ運んでおくから」
「ち、ちょっと、ソラ。何でコテツを……」
「え? 分かるでしょ?」
きょとんとした顔で、ソラがスパナを見つめた。
「……もしキリンさんが弓でまた狙撃されても、コテツ君が側に居れば、守れる。そういうことですよね」
スパナは、宿舎備え付けのお茶に何かを混ぜて、うっすら緑色の煙をわき上がらせている。
「キリンちゃんに飛んでった矢は、全部弾くか掴むかしてたでしょう。私に飛んできたのは、何もしてくれなかったけど」
……。
「え?」
「逸れたから良かったけど、私に飛んできた矢は、全然反応してなかったよね、コテツ君」
……何か怒られてる?
「まぁ、ここまであからさまに差別されたら、怒る気にもならないけど、ね」
なんだこの空気は。
そうだ、ドレイクが何か不満や文句を言えば、雰囲気も……。
「……まぁ、状況が状況だ。仕方ない。コテツ、くれぐれも、粗相のないように。ソラ、ソファの配置は相談させてもうぞ」
「そうね、その辺は、ちゃんとしましょう」
えぇ……。
何でその二人が意気投合するの?
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