15 転んでから
「お手柄だったじゃないか」
ゴルテア副隊長は、朝日を背に笑顔を見せた。 昨日、私たちが逮捕した5人の盗賊は、宿場町パステルの警邏官補が仮牢屋に捕らえられていた。ゴルテア副隊長は、身柄を首都に移送するため、首都ソレイユから護送馬車に乗ってやってきた。
「手錠をかけた3人、身分証を出しな」
ドレイクが3人、キリンとソラが一人ずつ、手錠をかけた。
身分証は、黒曜石のような輝きを放つ、黒い金属でできていた。常に、警邏官服の内ポケットに入れているが、無くしたら相当怒られると聞いた。
「ドレイクは星のかけら3つ、キリンとソラは、1つずつ。今回は逮捕した人数分、単純加算だ」
ゴルテア副隊長は、自分の身分証を取り出すと、それを縦にして、ドレイク、キリン、ソラの身分証の順番で、軽く叩いた。ドレイクの身分証は3回叩かれ、そのたびにうっすら光を放った。
「公的案件とは別に、犯罪者の捕縛は、記録して成績に加算される。名のある指名手配犯なら、こんなもんじゃないが。ま、もし出世を考えてるなら、頑張ると良い。無理は禁物だが」
「副隊長、その……今回の件はコテツが相手の存在を察知して、それで私たち……」
「そうです、なので、僕の3回分は、コテツに!」
ドレイク君が、困惑した顔でゴルテア副隊長に詰め寄った。
「生憎それはできない。それ、難しいんだ。逮捕の過程はいろいろあるんだろうけど。評価が難しいから、特別な記録でもない限り、手錠をかけた人数でカウントしてる」
「いーよ、それはドレイクの分だろ」
コテツの声に、ドレイク君が振り向く。
「俺は、何もしてねーし。面倒だし。副隊長にも迷惑だろ」
ドレイク君が、憮然とした表情のまま、ゴルテア副隊長の前から引き下がった。
「実際に襲撃があった。難易度3案件から、3.5に引き上げておく。くれぐれも気をつけるて、完遂してくれ。それから……」
ゴルテア副隊長の顔が険しさを増した。
「キリンを狙撃した矢はこちらの捜査に使う。命を狙われているのは間違いない。それも気をつけるように」
***
「それが、エレナを見た最後か?」
「はい……」
やはり、と言えば良いのか。
黒男。
エレナと接触していたのか。
飛行船周辺での、少女の目撃情報。
今回の試験失格者の中で、消息が不明なのはエレナだけ。
「助かった。ありがとう。じゃ、ここは奢りだ。元気そうで良かった。何かあったら連絡してくれよな」
街の喫茶店。エレナと良く行動を共にしていて、2の試験で、エレナと共謀し、キリンとソラを陥れた生徒の一人。ローザック・ミレイ。
地元に戻って、家業のパン屋の手伝いをしているそうな。
案外、すっきりした顔をしていて、安心した。
店を出た矢先、ローザックに呼び止められ
「あの……スザク先生」
「ん?」
「エレナのことを聞きに来ただけだと思いますけど……話ができて良かったです」
「なんだそりゃ?」
「……嫌われたかと思って……俺、あんなことして……」
ああ、そうか。
「エレナのことが無くても、会いには来てたさ」
「……何でですか? 俺……試験、落ちたくなくて……キリンやソラや、コテツとか……あいつら、凄かったから……焦って、不安になって……それで、あんな……」
「お前、反省してるんだろ?」
「……反省するような、馬鹿なことを……」
「なら、大丈夫だ。ま、もし困ったり、迷ったりしたら、連絡してこい。相談ぐらい乗るからさ」
「怒ってないんですか?」
「当然、怒ってる。だから、お前のことは忘れない。俺、お前の先生だから」
ローザックが頭を下げた。
間違ってもいい。
転んでもいい。
むしろ、そこからが本番なんだ。
そこから、どう立て直すか、立ち上がるか。無様でもあがくのか、それとも誤魔化すのか、逃げ出すのか、うずくまって下を向くのか。
そこに、そいつの可能性が全部詰まってる。
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