表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アレステリア国物語  作者: 鳩峰浦
第二章
70/86

8 雨音/暗殺

 その日は雨が降っていた。

 家を出て、5日間くらい経っていたか。


 所持金も底をついて、お腹が空いていた。

 警邏官学校から着てきたままの服は、汗を吸って、臭い。

 

 街の図書館の裏にある静かな公園。夜中に忍び込んで、屋根のあるベンチに横たわり、雨を凌いでいた。

 

 家には、帰れない。

 学校は退学になったし、先生達だって、私のことを蔑んでいるだろう。

 警邏官に保護を求める? 

 どの面を下げて?


 そんな、惨めな姿を晒すくらいなら。


 頬を涙が伝った。

 

 死のう。

 

 私の視界を、真っ黒な何かが覆った。

 

 この少女達を、殺してくれないか?

 

 真っ黒なローブを身にまとい、フードをかぶり、顔もはっきりと見えない、誰か。

 その男は、2枚の写真を私の前に見せていた。

 その写真に写っていたのは、間違いなく、キリンとソラだった。


 あなた、誰?


 ー君は、この少女達に恨みがあるだろう?ー

 

 その男は、私の質問に答えなかった。

 その言葉は、心に直接響いてくるようだった


 君は、奪われたんじゃないか?

 本当は君の物だったものを、全部。

 不公平じゃないか。

 不平等じゃないか。

 取り戻したくはないか? 


 簡単だ。

 君の人生を邪魔した、それを消し去ればいい。 

 そうだ。

 キリンとソラさえいなければ。

 

 私は自信を失わずに済んだ。

 試験だって焦らずに済んだ。

 道を、間違えずに済んだ。

 

 ー成功したら、これをあげよう。ー

 

 黒男の手から写真が消えて、いつのまにかその両手には、薄暗い雨の朝にも輝く、棒状の金属の塊が乗せられていた。


 角度によって、うっすらと、虹色の輝きをはなつそれを見て、鳥肌が立った。

 超希少金属。

 皇金ノブルアルムの延べ棒。


 それも、見たことのない大きさのものが三つ。


 それ一つでも、屋敷を買い戻してお釣りが来る。

 

 ーこの二人の少女は、この世界に危険をもたらす。だから、早く、亡き者にしないといけない。

 エレナ・ファルフィート


 君なら、それができるはず。ー

 

 ***

 

 マルカンティアの街外れ。

 高台にある山小屋は、黒男から拠点として使用を許可された場所の一つだった。

 高倍率双眼鏡を使うと、警邏官宿舎の動きも観察することができた。

 雨も収まりはじめ、視界も良くなってきた。

 飛行艇は失敗した。


 だが、おそらく何とか切り抜けるのだろうという予感はあった。

 やはり、もっと、直接的で、確実な方法を。

 黒男から付与された力を使って。

 

 キリン、ソラ。

 死んで。


 私のために。

 

読んでいただいてありがとうございます!

もしよければ評価★★★★★・ブクマ、感想等いただけたらとっても嬉しいです!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ