表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アレステリア国物語  作者: 鳩峰浦
第二章
69/86

7 エレナ・ファルフィート/あいつらさえいなければ

 神童、と言われていた。


 小さい頃、周りの子はみんな私より劣っていて、バカなんだ、と思っていた。

 自分の家が、周りと比べて明らかに裕福だ、ということは、周りの子と違って、毎日綺麗な洋服を着れること、家には何人も召使いがいたこと、何より、外の子たちの家より、私の家は何倍も大きかった。「あのお屋敷のお嬢様」と言われていたのだから。


 もちろん、容姿にも恵まれていた。金色に近い茶色の艶やかな髪と肌理の細かな肌は母親から、薄茶色の二重の瞳は父親から。


 家の父親の書斎は、図書館のようだった。本を読むのも好きだった。運動も得意だった。走れば町の子の誰よりも速く、ダーツや弓矢の的当ての精度も、誰よりも高かった。


 全部持っていた。


 だから、この国で、一番のエリートになるのが当然だと思っていた。

 警邏官の上位職。王都の国家戦略室行政官。 父親に連れて行ってもらった、そこで働く行政官警邏官は、みな理知的で、しなやかで、華麗だった。


 私は、当然、それになるんだと思った。


 あいつらが、邪魔をした。

 

 キリン・アレステリア・ノノ

 ソラ・リードベルト

 

 入試の成績で、私より筆記試験が上位だった女子が2人いると聞いた。

 キリンはいつも本を読んでいて、物静かで、そして、知性を宿した意志の強い瞳に、にじみ出るような気品があった。

 おまけに、キリンの射的は、いかさまのようだった。私より、遙か遠く離れたところから、寸分違わず的を撃ち抜いた。


 ソラの知識量は、洪水のようだった。私の知らない、何千冊、何万冊という本の知識を、その脳に刻み込んでいた。

 

 先生も、他の生徒も、知らない。知るわけがない。私が、どれだけ隠れて弓矢の練習をしたか。夜な夜な図書室に通ったか。

 それでも、私がキリンに実技で勝つことは一度もなかったし。筆記で、二人に敵うこともなかった。一度だって。

 

 邪魔だった。

  

 

 この二人がいたら、私は一番になれない。

 

 2の試験。

 私は追い込まれていた。石を集めるのに立て続けに失敗して、時間ばかりが過ぎていく。

 1の試験の光景が脳裏に焼き付いていた。


 ソラとキリンが水晶の骸骨に触れたときの、鮮やかな、見たことのない光。

 凡庸な私の反応とは、違う。

 

 特に、キリンの放った光は、異質だった。

 

 素質。

 才能。

 

 産まれ持った力の違い。


 ずるい。

 なぜ?


 どうして私じゃないの?


 私は、特別じゃないの?


 試験に、落ちる。

 

 2の試験の残り時間が半分を切った時、喉が、からからに乾いた。

 全身が砂になってしぼんでいくようだった。

 

 あいつらさえ、いなければ。


 キリンとソラが、軽々と石を集めたのを見たとき。私の心は真っ黒になった。


 キリンとソラをだまし討ちして、石を奪い、2の試験を不合格になった私を待っていたのは、事業で騙されて破産し、母親に逃げられた酒浸りの父親だった。

 屋敷は、召使もおらず、荒れ放題だった。

 手紙の返事がしばらくないと思っていたが。

 

 私服で帰ってきた私の様子を見て、父親はうつろな目で呟いた。


 「お前も結局、期待外れだったな」 

 

 それから、家を飛び出して、しばらく記憶がない。

 黒いローブを着た男に会うまで。

読んでいただいてありがとうございます!

もしよければ評価★★★★★・ブクマ、感想等いただけたらとっても嬉しいです!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ