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アレステリア国物語  作者: 鳩峰浦
第一章
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59 コテツの力


 ララ先生達3人に、ゴーレムの肩から噴出された黒い煙が吹き付けられる。


 すぐさま3人は距離を取った。


 「何をしやがった……」

 アリアステルが顔をしかめている。

 

 「今に分かるさ」

 

 身体には異常がないことを確認した3人が、ゴーレムを取り囲む。


 「異様に堅い。だから……」


 ハルモニアさんが、アリアステルとララ先生に目配せした。


 「……!」


 目の前が、霞む。

 俺はよろけて、ひざを突く。


 「コテツ! ……毒が……」


 キリンが俺を支える。

 

 情けねぇ。

 回って来てんのか。

 

 その霞んだ目の先に、ぼんやりと光が見えた。ゴーレムの額のあたり。

 

 そこに、ゴーレムの体のあちこちから光が集まっている。

 

 「キリン」


 思いつきだけど、多分できるはず。


 「俺の右手を握って、あいつを見てくれ」


 「え……うん……」


 キリンもはっとした様子だ。

 

 「先生たちが、引きつけてくれてる。あいつは俺たちを気にしてない」

 

 頭痛と、吐き気におそわれながら、俺はキリンの目を見た。

 

 「俺が空気の弾を作る。あそこ、狙って打てるか?できるだけ、細く、針のように」


 「……できる、やる」

 「頼むぜ」


 あの場所は俺にしか、正確に見えない。

 俺が動けない以上、この方法しかない。


 「あいつをぶち壊せば、解毒剤も手に入るさ。あの解毒剤が本物だってのは、さっき見て分かった」


 「うん……うん!」

 そんな不安そうな顔すんなよ。


 大丈夫だ。

 キリンが、握った手に力を込める。


 「痛てぇよ! 馬鹿力……!」


 「この方が、光がはっきりするの……!」

 「なるほど、そういう仕組み……か……」

 

 胸やら関節やらが痛む。

 

 「コテツ!!」

 「大丈夫だ……気にすんな……」


 空気を折り畳んで、閉じこめて、圧縮していく。

 小部屋に押し込めていくイメージ。

 

 少しずつ、少しずつ重ねていく中で、左手から体中の力が抜き取られていくようだ。

 

 改めて、よく、こんなのを何発も作って、撃ってるもんだ。

 

 甲高い金属音が響いた。

 

 ハルモニアさんが、ゴーレムの打撃を小手で受け止め、その隙にアリアステルがゴーレムの右足の、膝の辺りに激しい蹴りを加える。

 

 みしっ、と、土と石でできた体のきしむ音が響き、ゴーレムの体が傾く。

 

 「一局集中雷撃ジャベリン!」

 

 ララ先生の指先から、一筋の光線のような雷光が走る。

 

 「グっ!」

 

 アリアステルが蹴りを入れた辺りを、正確に、その雷光が射抜いた。

 

 ゴーレムの右足が崩れ、ゴーレムは左膝をつき、右手で体を支える。

 

 「!」

 

 ゴーレムが、壊された右足の残骸を掴むと、胸の中心から、右手の先に向けて赤い線が伸びていき、右足の残骸が赤い光を放ち始める。

 

 「いけない、伏せて!」

 ララ先生の声が響いた。

 

 キリンと手をつないだまま、反射的に身を伏せた。

 瞬間。

 

 爆風が巻き起こり、視界が粉塵で覆われる。

 「……!」

 少しずつ、視界が戻ってくる。

 ララ先生が膝をつき、青ざめた顔で荒い息をしている。

 

 床には、ジグザグに焼け焦げたような跡。

 

 多分、ララ先生が、爆風を閉じこめるように、高濃度の雷撃を走らせた。

 

 それが、どれほどの出力を必要とするのか。

 ララ先生の消耗の具合を見れば分かる。

 

 「面白い力の使い方をするね。警邏官も、どんどん進化しているんだな。半分も力が出ないだろうに、相殺するとは驚きだよ」


 見ると、ゴーレムの右足が元に戻っている。どういう仕組みなんだ……。


 それに、「半分も力が出ない」って。

 さっきの黒い煙か?


 「ただ、こちらも力をだいぶ使ってしまったよ」


 「それは良かった。」


  ハルモニアさんの声が響いた。


 「!」


 ハルモニアさんの伸ばした手に呼応するように、部屋の四方から、赤い布が伸び、ゴーレムの両手を縛り上げた。


 「む……!」


 縛られたゴーレムは、その場所から微動だにできなくなった。

 「これは……」


 「なかなか筋の良い調合士だ」


 部屋の四隅のカーテン。


 それだけじゃない。

 何かの液体で、強度が高められている。


 いつのまにか、スパナが部屋の四隅に駆け回り、カーテンを変質させたんだ。


 「せーの!」


 ソラとララ先生が手をつないで、カーテンを掴む。

 ソラが先生の力を補ってる。

 そうか、二人とも「痺れさせる力」。同じ能力の単純増幅。 


 「ぬぐぅうううううおおおおおおおおお!!」

 カーテンを伝って、二人で掛け合わせた電撃がゴーレムを襲う。


 ゴーレムにヒビが入る。


 「!」


 ゴーレムの胸辺りから、また、足に向けて赤い線が伸び始める。まずい、また爆発が……。


 次の瞬間、ゴーレムの右足が、次いで左足が、付け根から寸断された。


 刀を振りぬいたドレイクが姿を現す。

 誰にも見えない、凄まじい斬撃。


 「やるじゃねぇか新米! オラァ!」


 アリアステルの前回し蹴りが、ゴーレムの顔を捉える。


 「!!」


 顔と頭がひび割れ、真っ赤な球体が露出した。

 「くそっ……速度が乗らねぇ……」

 アリアステルが床に膝をつく。


 「キリン!!」


 俺は固めきった空気弾をキリンに渡し、全神経を集中し、真っ赤な球体に合わせた照準を、キリンに伝えた。


 ***


 細く。

 強く。

 研ぎ澄まされた、矢のように。


 コテツの力が加わった、自分1人で造るより、遥かに強力な、弾丸。

 

 私は、極限まで押しつぶしたその弾丸の通り道を、コテツが定めた照準に向けて、寸分の狂いもなく、解き放った。


 ***


 金属のこすれるような、甲高い音が響き、真っ赤な球体が割れると、ゴーレムは頭の先から崩れ落ち、跡には砂と土と石の山だけが残った。


 「やったじゃん」


 俺は、隣のキリンに声をかけた。

 キリンは、まだ何が起きたのか、理解できないかのように、放心した顔で立っていた。


 「……もう、標的はねーから、大丈夫だぞ」

 「っ!」


 キリンははっとして、俺の右手を放した。


 キリンが噛みついた跡が残る、俺の右手を。


 


 キリンの手が離れた瞬間、ドクン、と動悸がして、急速に目の前が真っ暗になった。

 

 ***


 床に膝をついたコテツを支えようとした瞬間。

 「!」

 砂と土と石の上から、黒い影が吹き出し、蜷局を巻いた蛇のような姿を現す。


 それは、凄まじい速度で私に向かって襲いかかって来る。

 

 弾丸も。

 みんなも。

 先生達も。

 

 間に合わない。


 

 耳を突き破るような、甲高い叫び声。 



 閃光が、黒い影を切り裂いた。



 何も見えなかった。


 いつの間にか私の前に立ちはだかったコテツが、振り抜いた右の拳。


 コテツは、そのまま崩れ落ちるように、床に倒れた。 

読んでいただいてありがとうございます!

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