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アレステリア国物語  作者: 鳩峰浦
第一章
57/64

57 嘘と絶望

 「コテツ!」


 コテツがホールの壁の方まで吹き飛ばされ、壁際に置いてあった椅子とテーブルに突っ込み、ぐったりと床に倒れ込んだ。


 私は、弾丸を作り始める。

 ドレイク君がソラとスパナ君に目配せをする。

 ドレイク君の速く動く力。

 床に落ちていたコテツの小刀を拾い上げると、円を描くように回り込む。


 「スパナ君!」


 ソラもそれに合わせるように、ドレイク君と逆の方に回り込む。

 黒男がため息をついた。


 「何に刃向かっているのか、分かっているのか」

 

 スパナ君が中空に液体の入った瓶を投げる。

 スパナ君が私に示したハンドサインに従って、スリングショットで撃ち抜く。

 

 瓶から煙が噴き出し、黒男の周囲だけを包み込む。

 すごい、あんな物まで作れるの?


 「キリンちゃん!」

 「うん!」


 さっきは、あのよく分からない黒い布に吸い込まれた。


 でも、視界が奪われた状態で、別方向からなら!


 「落下する電撃!」

 「弾丸!」 


 私とソラが同時に、電撃と空気弾を叩き込む。

 煙の中、それは確かに黒男の居る場所に着弾した。

 

 それと同時に、加速したドレイク君が、煙の中の黒男を薙払うように小刀を振る。

 

 「!」

 小刀は、煙を素通りした。

 

 「うっ!」

 「きゃっ!」

 

 スパナ君とソラが何かに弾き飛ばされた。

 黒男は、ドレイク君の後ろに立っている。

 

 「速く動く力……?!」

 「違うよ」


 黒男は、両手を組んで、ハンマーのようにドレイク君の背中に叩きつけた。

 「ドレイク君!」


 床に倒れ込んで、動かなくなるドレイク君。


 「無駄な殺しは、悪影響があるから、しないよ」


 音もなく、黒男がコテツの方に向かっていく。

 「でも、この子だけは、邪魔だから」


 まずい、まずい、まずい!


 「止まれ!」


 私は小刀を抜いて走り、黒男の背中に振り下ろす。


 「!」


 手応えもなく、すり抜け、私はバランスを失ってコテツの前でよろけ、何とか踏みとどまる。


 振り向くと、黒男が腰に手を当てて立っていた。


 「しかし、本当に、今回は不運だった」


 私は、黒男を睨みつけた。

 「……あんた……一体何なの……」


 こいつが、私から、全部奪った奴。


 間違いない。


 何のために……どうしてこんなことを。


 「どうせ、君の言うことは、そこの邪魔な奴しか信じてくれないから、教えてあげようか?」

 

 黒男が、右腕を振った。

 

 「!!」

 

 コテツの左足に、太い針のようなものが刺さった。

 

 「やや遅効性の猛毒だよ。後1時間くらいで死ぬ」

 

 胃が、心臓が、体中の血管が凍り付いた様だった。

 全てを鷲掴みにされたような、恐怖。


 「君のことを本当の意味で信じてくれる人は、この世にいなくなるよ。キリン・アリスティア・ノノ」

 

 ゆっくりと、黒男が近づいてくる。


 「また、ひとりぼっちに逆戻りだ。残念だったね」


 心の中に闇が広がる。

 何度も、何度も感じてきた絶望。

 それでも。

 私は小刀を構えた。


 「何のために戦う? もう、何をどうしようと、お前は、どこまで行っても一人だ」


 私は、黒男を睨みつけた。

 涙でにじむ。


 「どうして……私から、大切なものを奪うの?! 私が何をしたっていうの?!」

 

 「何もしてないさ」


 黒男は即座に言い放った。


 「君は、ちょうど良かっただけ。知っている人は少なくないけど、有名すぎるわけでもない。嘘でだますのにちょうど良いサイズだったんだよ」

 「……ちょうど良い、サイズ……?」


 何……何を言っているの?


 「嘘で置き換えるにも、下準備が必要だから。物や記録、それから関わる人々の記憶。100人位で済んだ君は、うってつけだったんだ」


 「何を……何を言っているの?!」


 「タネ明かしだよ。もう一度絶望してもらおうと思って」


 絶望……!


 「この嘘は、自信作なんだ。だから、絶対大丈夫……のはずだったんだよ。君は、まもなく絶望して、嘘の一部になるはずだった」


 嫌だ。

 黒男の声が、心の中に入り込んでくる。

 私の意識の中に、土足で。

 

 嘘はね、栄養なんだ。


 この世界が、嘘で満ちてくれれば。

 それが全て養分になるから。


 君が嘘を受け入れて。

 嘘の方が本当だと信じてくれたらいい。


 もう少しだったのにな。

 でも、厄介な能力を持った奴が、たまたま君の側に現れてしまった。


 君のことを疑わない能力。

 君のことを、信じるだなんて。


 迷惑な話さ。

 だけど、もうすぐ、そいつは居なくなる。

 死ぬから。


 そしたら、君の言うことを信じる人はいなくなる。

 みんな、表面的には合わせてくれても。


 心の底から信じてくれる人なんていない。


 だから君は独りぼっち。

 辛いだろう?


 抗うから辛いんだよ。


 だから、止めたら?

 抗うのを止めたら、楽になる。

 さあ、あきらめよう。

 楽になりたいだろう?


 楽に……

読んでいただいてありがとうございます!

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