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アレステリア国物語  作者: 鳩峰浦
第一章
55/65

55 旅の仲間

 「キリンさん、僕が来たからにはもう大丈夫! コテツ、お前は部屋で寝てて良いぞ!」

 「何言ってるの、コテツ君がいないと駄目に決まってるでしょう? ね、キリンちゃん」

 「う、うん……」

 「……。ドレイク君、調合が不安定になるので、揺らさないでください……」


 うん、何かうるさい。

 何かとってもうるさいぞ。こいつら。


 「お前ら、うるさいぞ……」

 「何だとコテツ! お前では不安だから、管理官がこの僕を! ドレイク・アルベスタを指名して!!」


 「あ、ソラとスパナもご指名だったわ!」

 と、キリンはにこにこしている。


 「キ、キリンさん……」


 「とにかく、みんな、ごめんね。せっかく休んでたのに……。ただでさえ、今回はお世話になりっぱなし……何かお返しができれば良いんだけど……」


 キリンが申し訳なさそうに言った。


 「お返しなど要りません。キリンさんの為なら、どこへでも駆けつけますよ」

 「…今度また試薬の感想をくれたら良いです」

 前髪を整えながら、笑顔で目を閉じるドレイクと、調合を続けるスパナを見向きもせず、ソラが顔に手を当てて、何やら思案している。


 「お返し…か…。ねぇ、キリンちゃん」

 「ん?」

 「キリンちゃんは、警邏官になった後の2年間の各国研修で、スクトゥムティアにも向かうんでしょ?」


 「もちろん」

 「それじゃ、私も一緒に行って良い?」

 「え?もちろん良いけど……一緒に行ってくれるの?」


 ソラが両手を上げて嬉しそうにしている。


 「私は「科学の国」スコラスティアに行きたいんだけど、一人じゃ大変そうだから。スクトゥムティアに行く通り道になるし。だから、よろしくね!」


 「うん!」

 キリンとソラが手を取り合っている。


 「……あ、自分もそれ、良いですか? スコラスティアに行くには、「商人の国」マルカンティアから、諸島連合である「薬の国」ヘルバスティアを通るか、「騎士の国」エクエスティアを通るルートになると思いますけど、自分の探している調合の材料が、どこかの国にあるはずなので。良ければ、少なくとも途中までご一緒させてください」


 「え、本当?じゃあ一緒に行こう!」

 スパナが調合を続けながらぼそぼそと言うと、キリンがソラの手を掴んだまま嬉しそうに言った。


 「僕も、あー、エクエスティアに!「騎士の国」に、祖先は縁があるらしく、行かなくてはと思っていたんだ。ご同行させていただきたい」

 

 「うん!一緒に行こう!」

 キリンがくるりと振り向く。

 

 「それで良い?コテツ?」

 

 へ? 俺?

 「ん?どういうこと?」

 

 「どういうことも何も、だから、このメンバーでしばらく旅になるわよ。だから、一応意見を聞いておこうと思って」

 …あ、そうか。


 「?! コテツは要らなくないですか?!」

 ドレイクが俺に向かって剣を構える。

 

 「あ、ごめん。私、この2年間は、なんかコテツと一緒にいないといけないんだって。管理官からそういう条件出されちゃったから……ね」


 「別にそれが無くても一緒に行く約束だったじゃんか」


 ……。


 時計の音だけが、部屋に響く。

 

 あれ?


 俺、何か変なこと言った?


 「そ……そう、だった……かもね。うん、ああそうなの。コテツがハルを捕まえるの大変だから、それは手伝ってあげる話をしてたわけ。あ、だから、ごめん、みんな、途中でもしハルと遭遇したときは、私とコテツで捕まえるから……」

 「そのときは良いよ。ついでだもん。手伝う」

 「…指名手配を逮捕するのは警邏官の仕事ですし」

 「コテツの手伝いをする気は全くありませんが、キリンさんのお手伝いなら、いくらでも」 「だって」

 キリンが若干ふくれっ面で俺を振り向く。

 うえ……ぞろぞろと……。

 まぁ、別に良いけど……。

 「俺に止める権利はねぇよ。」

 「もー、いっつもそう、はっきり言わないんだから!「みんなよろしく。」だって」

 「勝手に翻訳するな!そんなこと言ってねぇ!」

 まったく……。


 小走りでソラが俺の近くに駆け寄ってきて、小声でささやく。

 「……コテツ君さぁ。女の子との二人の約束、あんまりみんなの前でぱっと言わない方がいいよ」

 ……。

 え?

 さっきのまずかったってこと?

 「そんな……」



 !!!



 「えっ! ちょっと……。きゃっ!」


 俺は目の前のキリンの肩を掴んで、ソファの方に倒れ込んだ。


 「コ、コテツ! 貴様何を……!」

 ドレイクの叫び声をかき消すような、ガラスの割れる音と、金属音が響きわたった。


 さっきまで、キリンが立っていた場所に、真っ黒な槍が突き刺さっていた。

読んでいただいてありがとうございます!

もしよければ評価★★★★★・ブクマ、感想等いただけたらとっても嬉しいです!


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