55 旅の仲間
「キリンさん、僕が来たからにはもう大丈夫! コテツ、お前は部屋で寝てて良いぞ!」
「何言ってるの、コテツ君がいないと駄目に決まってるでしょう? ね、キリンちゃん」
「う、うん……」
「……。ドレイク君、調合が不安定になるので、揺らさないでください……」
うん、何かうるさい。
何かとってもうるさいぞ。こいつら。
「お前ら、うるさいぞ……」
「何だとコテツ! お前では不安だから、管理官がこの僕を! ドレイク・アルベスタを指名して!!」
「あ、ソラとスパナもご指名だったわ!」
と、キリンはにこにこしている。
「キ、キリンさん……」
「とにかく、みんな、ごめんね。せっかく休んでたのに……。ただでさえ、今回はお世話になりっぱなし……何かお返しができれば良いんだけど……」
キリンが申し訳なさそうに言った。
「お返しなど要りません。キリンさんの為なら、どこへでも駆けつけますよ」
「…今度また試薬の感想をくれたら良いです」
前髪を整えながら、笑顔で目を閉じるドレイクと、調合を続けるスパナを見向きもせず、ソラが顔に手を当てて、何やら思案している。
「お返し…か…。ねぇ、キリンちゃん」
「ん?」
「キリンちゃんは、警邏官になった後の2年間の各国研修で、スクトゥムティアにも向かうんでしょ?」
「もちろん」
「それじゃ、私も一緒に行って良い?」
「え?もちろん良いけど……一緒に行ってくれるの?」
ソラが両手を上げて嬉しそうにしている。
「私は「科学の国」スコラスティアに行きたいんだけど、一人じゃ大変そうだから。スクトゥムティアに行く通り道になるし。だから、よろしくね!」
「うん!」
キリンとソラが手を取り合っている。
「……あ、自分もそれ、良いですか? スコラスティアに行くには、「商人の国」マルカンティアから、諸島連合である「薬の国」ヘルバスティアを通るか、「騎士の国」エクエスティアを通るルートになると思いますけど、自分の探している調合の材料が、どこかの国にあるはずなので。良ければ、少なくとも途中までご一緒させてください」
「え、本当?じゃあ一緒に行こう!」
スパナが調合を続けながらぼそぼそと言うと、キリンがソラの手を掴んだまま嬉しそうに言った。
「僕も、あー、エクエスティアに!「騎士の国」に、祖先は縁があるらしく、行かなくてはと思っていたんだ。ご同行させていただきたい」
「うん!一緒に行こう!」
キリンがくるりと振り向く。
「それで良い?コテツ?」
へ? 俺?
「ん?どういうこと?」
「どういうことも何も、だから、このメンバーでしばらく旅になるわよ。だから、一応意見を聞いておこうと思って」
…あ、そうか。
「?! コテツは要らなくないですか?!」
ドレイクが俺に向かって剣を構える。
「あ、ごめん。私、この2年間は、なんかコテツと一緒にいないといけないんだって。管理官からそういう条件出されちゃったから……ね」
「別にそれが無くても一緒に行く約束だったじゃんか」
……。
時計の音だけが、部屋に響く。
あれ?
俺、何か変なこと言った?
「そ……そう、だった……かもね。うん、ああそうなの。コテツがハルを捕まえるの大変だから、それは手伝ってあげる話をしてたわけ。あ、だから、ごめん、みんな、途中でもしハルと遭遇したときは、私とコテツで捕まえるから……」
「そのときは良いよ。ついでだもん。手伝う」
「…指名手配を逮捕するのは警邏官の仕事ですし」
「コテツの手伝いをする気は全くありませんが、キリンさんのお手伝いなら、いくらでも」 「だって」
キリンが若干ふくれっ面で俺を振り向く。
うえ……ぞろぞろと……。
まぁ、別に良いけど……。
「俺に止める権利はねぇよ。」
「もー、いっつもそう、はっきり言わないんだから!「みんなよろしく。」だって」
「勝手に翻訳するな!そんなこと言ってねぇ!」
まったく……。
小走りでソラが俺の近くに駆け寄ってきて、小声でささやく。
「……コテツ君さぁ。女の子との二人の約束、あんまりみんなの前でぱっと言わない方がいいよ」
……。
え?
さっきのまずかったってこと?
「そんな……」
!!!
「えっ! ちょっと……。きゃっ!」
俺は目の前のキリンの肩を掴んで、ソファの方に倒れ込んだ。
「コ、コテツ! 貴様何を……!」
ドレイクの叫び声をかき消すような、ガラスの割れる音と、金属音が響きわたった。
さっきまで、キリンが立っていた場所に、真っ黒な槍が突き刺さっていた。
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