49 審理管理官
「コテツ!」
「うわっ!」
金色の物体がレディッシュオレンジの光を放ちながら、もの凄い勢いで飛びかかってきた。
避ける間もなく、ソファにぶっ倒される。
他の危険は、大抵予測して、避けられるのに
なんでこいつの動きは読めないんだ?
「受かったの! 私も合格!」
俺に馬乗りになったキリンが、俺の襟首を掴んで叫ぶ。
「な、本当か? 何で……」
困惑した俺をのぞき込むように、ララ先生が、微笑む。
それは、教師から発せられたとは信じられない、意外な一言だった。
「ごめんね。コテツ君。あれ、嘘だったの」
「へ?嘘?」
「そう、本当はね……」
「コテツ! 貴様! キリンさんから離れろ!」
「ぐえっ! 止めろ、ドレイク……」
頭を引っ張るんじゃねぇ!
つーか、飛びかかってきたのはキリンの方だ……。
「ドレイク君、やめなよ。」
「うおっ!」
ソラがドレイクに電撃を流す。
「あら、複雑……」
ララ先生は両手を顔に添えて、楽しそうにしていた。
嘘をつく。
それは、警邏官に禁じられている行為。
***
キリンの下から抜けだし、壁際の花瓶の花の観察を始めたスパナのところに避難すると、スパナがコンパクトに、今回の顛末を教えてくれた。
キリンの能力は王都では、危険視されていた能力の一つで、その力を制御できるかを確認する必要があった。そのために、「追試」が行われたのだと。
1 何のために警邏官になりたいのか。
2 その力を使う動機に歪みはないか。
3 その気持ちが真実か。
4 心は強いか。
5 そして、身を挺してでも助けてくれる仲間がいるか。
アリアステルは、それを調べるための質問と、追いつめられた時の振る舞いを試験していたのだと。
いずれも合格だったらしい。
「いずれ、あなたたちも知ることになると思うけど」
ララ先生が、珍しく、悲しそうな顔でそう切り出した。
「昔、キリンさんと同じ力を持った警邏官がいたわ。天才だった。ハルのように」
ララ先生は、ハルのことを口にするとき、切なそうな、寂しそうな顔をする。
「でも、その人は、その力を制御できなかった。強すぎるその力に取り込まれてしまった。そして、それを止めてあげられるほど、心を許した誰かもいなかった」
ララ先生は笑った。
「でも、キリンさんは、きっと大丈夫」
俺はキリンの方を見た。
キリンを大人しいと言う人がいるが、俺からすれば初対面から殴るわ蹴るわ挙げ句に、一生残る噛みつき跡を身体に残されるわ……。
こいつを止めるのなんて、大変だけどな、きっと。
「ん? 何よ」
キリンは、顔をしかめてにらみ返してきた。
「別に」
「別にって、あんたね……」
その時、部屋に澄んだ鈴の音が鳴り響いた。
キリンが入ってきたのとは反対方向の、ぶ厚い樫の木で出来た、細かな装飾の施された扉がゆっくりと開く。
真っ白なローブを着た黒髪の男と、同じ服装の金髪の女性。
あれ、男の方は……試験官長のアリアステルじゃねーか。
「キリン・アリスティア・ノノ。審理管理官がお呼びだ。」
部屋の空気が、一気に緊迫したものになる。
「警邏官の誓いを直々になさる。来なさい。」
金髪の方の女性が澄んだ声でそう言った。
「審理管理官?」
聞き慣れない言葉。
「王都警邏官管理局第三位の官吏よ」
ララ先生がささやく。
「警邏官の上から3番目。ちなみにうちの校長は7番目くらいだから」
ぴんときてない顔の自分に、ララ先生が補足してくれた。
……相当、偉い人だ……。
「それから、コテツ・インバクタス。君にもお会いになるとのことだ」
え、俺?
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