47 強くなりそうでしょ
高速で、アリアステルが、辺り一帯の空間を飛び回っている。
速すぎて追えない!
「みんな! 止まるな! 動け!」
的を絞られたら終わりだ。
地面に、壁に、すさまじい勢いで。
飛び回りながらの超高速移動!
微かに見えた、アリアステルの手元から伸びる光の紐。
あれは……。
縛る力と速く動く力?!
縛る力は、紐状の物を自在に操る能力。
何かを壁や地面に伸ばし、縛り付けて、空間を自在に飛び回っている。
一人で、二つの力を使っているのか?
そんなことが……。
「!」
ソラが走りながら闇雲に電撃を放つ。
「ソラ!」
「きゃあああああ!」
突如現れたアリアステルに、ソラが吹き飛ばされ、山肌に打ち付けられた。
「がっ!」
ほぼ同時に、周囲に接着液をばらまいていたスパナも吹き飛ばされる。
「くそっ!」
「コテツ!」
駆け寄ってきたキリンと、背中合わせになって構える。
俺たちの周囲の地面に、山の壁に、無数の足跡が刻まれ続ける。
鮫と蜂の大群に同時に囲まれた気分だ。
これが教師級の力。
いや、知らなかった訳じゃない。
ララ先生が、竜の群を一撃で壊滅させた時から、化け物だとは思ってた。
「じゃあな新米ども!」
見えない、高速の敵。
それでも、物理的な攻撃だ。
見えないだけで、そこにいる。
「キリン、撃てるか?」
「さっき、半分の力で撃ったから、次で本当に最後よ」
「了解だ、任せろ、的を伝える」
俺は、背を向けたまま、右手を伸ばし、キリンの左手を握った。
***
視界が、鮮明になる。
コテツの見分ける力だ。
残ってる力で、限界まで固めた空気弾。
完全に見えてるわけじゃない。
でも、一番確率の高い方向。
できるだけ広範囲に、弾けるように!
「行け!!」
あれ……? 何……これ?!
***
「!!」
高速化した右足が、空を切る。
空中でバランスを崩す。
特注の透明警邏官紐『蜘蛛の糸』が千切れた。
そして、着地しようとした地面がない。
凄まじい爆風。
あの金髪のガキ。
空気弾で地面をえぐり、跳弾の岩で紐を切りやがった。
俺の動きを先読みして?
そして、ありえない高出力。
明らかにさっきと違う。
コテツとくっついてから、力の波長が変わりやがった。
バランスを整えろ。
身体を反転させて、左足で着地した。
その瞬間、青い目のガキが低い姿勢で飛び込んでくる。
「遅ぇんだよ!」
高速化を腕に移行し、小刀を振り下ろした。
はずだった。
小刀が、何かに弾き飛ばされた。
「なっ! てめぇ!」
刀を振り抜いたのは、最初にぶっ倒した間抜けなガキ。
「不意打ちは、確かに有効だ」
こいつ、気絶したふりをしてやがった!
こいつら……。演技か! 手でサインを送りあってやがった!
弾き飛ばされた小刀に予備の『蜘蛛の糸』を伸ばし、空中で掴む。
丁度いい、引き戻す軌道線上にキリンを先頭に、3人。
『蜘蛛の糸』を硬化して、薙ぎ倒して……。
キリンに小刀が迫った瞬間。
『蜘蛛の糸』を引く俺の右手が、手首を掴まれ下に引っ張られた。
なぜ、そこにいる。
コテツ・インバクタス。
それじゃ、まるで。
スザクの、「時間止め」じゃねぇか。
***
身体が、気づいたら、アリアステルの懐に入っていた。
なんだか分かんねーけど。
勝てる!
「うおおおおおお!」
ドレイクに小刀を弾き飛ばされ、がら空きのアリアステルの鳩尾に、俺は渾身の「砲撃」をたたき込んだ。
「がっ!!」
勝った!
そう思った瞬間。
一瞬白目になったアリアステルの目が、光を取り戻し、ぎらりと俺を睨みつけた。
そして、腹の辺りに破裂するような衝撃を受け、俺は意識を失った。
***
やばかった……。
手こずらせやがって…。ちくしょう、手加減しすぎた。
死んだふりをしてた方のガキも、顎を揺すって、意識を飛ばしてやった。
金髪のガキは……力の使い過ぎで倒れたか。
「あー、ずるい! 反則! 今のはこの子達の勝ちでしょ!」
「てめぇ! ララ! 見てやがったのか!」
馬車の影から、ララが現れた。
「こんなところでフォーチュナムまで使って。王都にばれたら減給よ。言ってやろ」
「うるせぇ! 最後に立ってた方の勝ちに決まってんだろ!」
ちっ、全くムカつく……。
だが、確かに、5人掛かりで、本来の力が使えない状態とはいえ、新米にここまで手こずるとは……。
あの、ハルの弟の掌底を受ける瞬間、俺は緊急事態用に、奥歯に縛り付けて仕込んであるフォーチュナムの錠剤の縛りを解いて、かみ砕いた。
意識が飛ばされた後、戻って来るために。
「強くなりそうでしょう? それに、最後のコテツ君、何だったのかしら」
満面の笑みを浮かべているララ。
変わんねーな。昔から。
「さぁな。ただ……良い連携だったかもな」
最初から、最後まで、シナリオ通りだったとしたら。
急場で、2の試験を応用して見せたのだとしたら。
良いチームだ。
そして、もう一つ。
ハルの弟と、ミリアム卿が拾ったガキ。
あれは共同行使じゃなかった。
こいつらは気付いてねぇだろうが。
共有した能力が、変質した。
妙な増幅の仕方だった。
見たことのない現象だ。
「面白ぇ連中なのは確かだ。どうせ研究を始めてるんだろ? 後で教えろよな」
ララは、笑って振り返った。
「ずいぶんと手加減してくれて、ありがとう。アリアステル君。相変わらず優しいわね」
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