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アレステリア国物語  作者: 鳩峰浦
第一章
45/64

45 仲間でもいれば

 右と、左。


 ほぼ同時に、壁に何かが叩きつけられる音がした。

 その音は上下左右、高度を変えながら移動していく。

 速く動くだけじゃない、縦の動き。

 一体どうやって?


 音が近づいてくる。ここに居ちゃ駄目だ。

 背筋を冷たい汗が伝う。


 私は、単なる勘で斜めに飛び退く。

 背後で、さっきまで私が居た場所に、何かが弾ける音が響く。


 「良いぜ!持ちこたえるなぁ!」


 私は振り向かずに全力で馬車の方に走る。


 左手に、弾丸を固めながら。


 アリアステルの姿は見えない。その代わり、あっちこっちの壁を蹴り飛ばす音が響く。


 「速く動く力」と、何かもう一つ別の力を使って、壁から壁へすさまじい早さで移動をし続けてる。


 高速で左右に動かれたら、弾を当てるどころじゃない。


 嫌な予感がして、私は右に飛んだ。


 「何だお前? まぐれじゃないのか?」


 さっき私が走っていた辺りの地面を、アリアステルが激しく蹴り、砂埃が上がる。

 見えた。


 堅い地面を蹴った衝撃で、アリアステルの動きが止まった。


 「弾丸(デレオ)!!!」


 私は、左手に閉じこめた「空気の弾」を右手に移し、アリアステルの足下辺りに撃ち込んだ。 


 「うおっ!」



 空気弾は、アリアステルの周囲の地面に着弾し、地面を削り、激しく砂埃を上げる。

 「……なるほど、有名な、「希な力」の一つ。「閉じ込める力」。空気を極小まで閉じ込め、凝縮してるんだっけ? 上級研修で習ったぜ。実弾を向けられたのは初めてだが……。厄介な力だな」


 そんな研修あるの? 

 こっちは能力がばれてて、向こうのは分からない。

 不利にも程がある。

 私は馬車の裏手に逃げ込み、再び左手に空気を固め始める。

 

 あと、4発。


 馬車を背にしている、この状態は良い。




 上、左、右、前。


 見えなくても、4方向に絞れる。

 ……。

 こんな時、コテツが居たら。

 どの方向から来るか、見分けるに違いないのに。


 ふと、離れた場所にアリアステルが姿を現した。

 「一人じゃ、勝てないだろ。仲間でもいりゃいいのにな。良いこと教えてやろうか?」

 「良いこと?」

 「合格した他の生徒たちに、教師がお前のことを話してる。お前を俺から引き離して、審議権を行使すれば、王都と話し合えるかもってな」


 え……。

 「そうだ。そんなことして、不適切な審議権行使と言われりゃ、免許剥奪だ。だから、もし、そんなことしようとする生徒がここに来たら、そいつもこの追試に加えてやるよ」

 「それって……」

 「一蓮托生だろ? 審議権なんてまどろっこしいことは無用だ。何人がかりでも、俺に勝てりゃ、合格にしてやるよ」

 

 なんてこと……。

 

 「ま、自分の合格をドブに捨てるような馬鹿な真似、する奴がいるとは思えないけど、な」


 

 アリアステルが地面を、崖の岩肌を蹴り飛ばす音の間隔がどんどん短くなっていく。

 加速してるんだ。


 間断無いその音は、まるで豪雨のよう。

 アリアステルの言葉は、本当かどうか分からない。

 助けが来るかも知れない、そんな甘い考えを引き出す罠のようにも思えた。


 弱いな、私は。

 期待してしまった。

 

 こんなんじゃ、だめだ。

 それに、自分のことにみんなを巻き込むなんて。


 やらなきゃ。一人で。


 もう、私は昔の私じゃない。

 雨の中、待ってたって、何も変わらない。


 一人で、戦うんだ。

 自分の力で、みんなのところに帰る。


 上は、ない。

 

 もし外したら隙ができる。2回同じ隙は見せないはず。


 それなら、残り3方向。

 全部撃ち抜く。

 私は、空気を次々に、別々に閉じこめる。

 左手が鉛のように重くなる。


 「良い判断だ。相手の技の特性と、自分の力の特性。考えて、考えて、考え抜け」


 壁を弾く音が響き始める。音と音の間隔がどんどん狭くなる。アリアステルの速度が、衝突の威力が上がっていく。


 音が近づいてくる。

 来る!


 「当たれぇぇ!!」

 

 私は、装填した3つの空気の弾を、右・左・前に連続で解き放った。


 その瞬間、私は背中に、猛牛に突っ込まれたような衝撃を受け、宙を舞った。


 嘘……何で……!

 吹き飛ばされた先は、崖。

読んでいただいてありがとうございます!

もしよければ評価・ブクマ感想等いただけたらとっても嬉しいです!

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