43 取り戻したいもの
どうする。
こんな馬鹿なこと、到底、認められない。
やっと試験に合格したっていうのに。
学校の教師。
「ララ先生!」
「何?」
ララ先生は笑顔だった。が、明らかに怒っていて、顔の周りから電撃が漏れている。
でも、そんなことに構ってはいられない。
「先生、王都に掛け合ってください! キリンが不合格なのも、王都に連れていかれるのも、納得がいかないんです!」
ララ先生は、腕組みをしたまま、ぷい、と視線を逸らした。
「誰に何を頼むというの?」
「え?」
「あなたは、文字通り、死ぬ思いをして、何の力を得たの?」
「……」
「あなたは、警邏官なんじゃないの? 誰に、何を頼ると言うの?」
ララ先生は目を逸らしたまま、言葉を強めた。
「捕まえたい相手がいるなら、取り戻したい何かがあるなら、自分の力で何とかしなさい」
「それって……」
ララ先生が、俺の目を見た。
「キリンさんは、幽閉されるわ」
「!?」
「あの力は、禁忌の力なの。だから、あれが発現したときは、危険を避けるため、あの力を封じることになっているの」
なんだよそれ。
嘘だろ?
「そんな……先生……駄目だよ。あいつは、これからやらなきゃいけないことがあるんだ!」
「どうしたいの?」
「決まってるだろ、キリンを助けたいんだよ!」
ララ先生は、後ろを向いたままため息をついた。
「審議権を行使すれば」
「審議権?」
あっ、とソラが声を漏らしたのが聞こえた。
「授業で教えたでしょ? 他の警邏官の行動に疑義がある時、それに異議を申し立てる権利よ。今回なら、キリンさんを取り返した上で、アリスアトリスが、王都の指示に従うことに異議を申し立てることになるのかしら」
「……それって、国に背くことになるんじゃ……」
「国から、キリンさんの力は危険と判断されているの。分かる? それに従うの? 従わないの?」
……あ……。そんなの、決まってる。
「キリンは、危険じゃないです」
「それなら、アリスアトリスからキリンさんを取り返して、王都を説得してごらんなさい。急げば、まだ王都に着く前に追いつくでしょう。ただし……」
ただし?
「審議権の濫用は、警邏官の機動性を著しく阻害するわ。審議権の発動が不適切だったと判断された場合、一階級降格になる。警邏官になったばかりの「白色位」の降格は、警邏官資格剥奪よ」
剥奪。
その言葉に、講堂の生徒たちがざわめいた。
それはそうだ、何年もかけて、最後は死ぬ思いで勝ち取った資格。それを失うと言われたら。
「私には合理的な考えとは思えないけれど……大人しくしていれば、このまま、警邏官になれるのだから。さて、この中に、キリンさんを合格させるため、自分の合格を危険にさらしてまで、自分の得には何にもならないのに、助けに行こうという人が……」
「先生、ありがとう! 行ってくる!」
俺は講堂の外に全力で駆けだした。
後ろから足音が、1つ、2つ、3つ。
「……いいのかよ?」
「愚問だぞ」
「走り続けられる薬なら、作れるかも知れないですが……」
「それ、体力の前借りでしょ? スザク先生に言って馬車を借りる?」
「それ、採用」
移動と言えばスザク先生なので、王都の試験官の帰路を聞くとともに、追いかけ方を尋ねることにした。
***
「仲良いなぁ。あきれちゃうね」
「これっぽっちも躊躇しなかったわね」
思い出して吹き出してしまった。
スザク君もにやにやしている。
「後は、アリスアトリスの追試を乗り越えられるかどうか、か」
「それと、王都の管理官の試験を、キリンさんが乗り越えられるかどうか」
「キリンの性格なら、合格になりそうな気がするけどなぁ」
「キリンさん、前に出身地の話で他の生徒たちと揉めたことがあったでしょ?スクトゥムティア出身だって」
「……エレナとの件か? 良く覚えてるな。」
「身元調査結果の書類と全然違うから、本人の嘘ってことになっているけど……ずっと引っかかってるの」
そう、上手く言えないけど、嫌な予感がする。
「王都で管理官の適性検査を切り抜けるためには、きっと一人じゃだめ。あの子を本気で信じてくれる誰かが必要な気がする」
「希にみる、複雑な試験になったな」
「ま、あの子達なら、何とかするんじゃないかな。あ、私、嘘ついたから、しばらく使い物にならないので、よろしくね」
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次回からキリン奪取作戦開始です。もしよければ評価・ブクマいただけたらとっても嬉しいです!




