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アレステリア国物語  作者: 鳩峰浦
第一章
42/64

42 不合格

「ノード」を発現させた、俺たち5人を含めた15人の生徒は、3日間の休みの後、講堂での合格発表を待つように言われた。


 そう、ソラも、スパナも、ドレイクも、無事「ノード」を発現させていた。


 ララ先生と入れ替わりで迎えに来た王都の試験官から、そのことだけ聞くと、もうすっかり力が抜けて、俺とキリンは馬車の中で一瞬で眠りに落ち、気が付いたら寄宿舎の自分の部屋のベッドだった。

 もう食事も摂れないほど衰弱していた。夕方先生が運んできてくれた簡単な食事をとり、そのまま再び眠りに落ちた。


 2日目の朝に食堂に行くと、ソラ、スパナ、ドレイクが居た。

 「ばりばりばり~」


 「痺れさせる力」を発現させたソラが、空中に放電して見せてくれる。


 すげ~。小さなララ先生だ。


 「これ、すっごく良く固まるんですよ。2の試験の、ガーゴイルの液体を真似たんです」


 一層不思議な薬品が作れるようになったスパナは、「調合する力」を延々と試し続けているようだった。


 そして、ドレイクは……。特にひけらかすことなく、刀を磨いていた。


 なんでも、「速く動く力」の特殊なタイプで、特に上半身を早く動かせるらしい。スザク先生みたいな高速移動特化とはまた違うらしいが……あの居合抜きがさらに速くなるとしたら、恐ろしい。


 「あれ、キリンは?」

 「あ、キリンちゃんは、外にいるよ。「ノード」の練習をしてるはずです」

 あいつ、まじめだよな……。


 練習って、どうやんの?

 俺はひょこひょことソラに聞いた裏庭の方に行った。


 キリンは、右手の先を校庭の木に向けて、集中していた。


 パン、パンと乾いた音がして、校庭の木の葉が2枚落ちた。


 これも、すげぇ力だよな。不思議だ。

 キリンが俺の方を向いた。


 「できる限り、弱い球を作って撃つ練習をしてるの。加減をして、疲れすぎないように、力をコントロールできるように」


 腰に手を当てて、そう言うキリンの姿は、何だか立派な警邏官補に見えた。

 見えたのだが……。


***


 名前とともに次々と合格が告げられていき、その最後に事件は起こった。


 「キリン・アリスティア・ノノ 不合格」

 「え?!」

  

 その場の誰もが耳を疑った。


 キリンは真っ青な顔をして、王都の試験官長のアリスアトリスに詰め寄る。


 「お前は合格の要件を満たさなかった」

 「そんな……どういうことですか?!」


 「話は以上だ。なお、お前の力について手続きがある。お前を王都に連行する」


 ガチャン、と手錠が掛かる音が響いた。


 見えなかった。


 いつの間にか、アリスアトリスはキリンに手錠をかけていた。


 講堂を静寂が包みこんだ。


 「待ってくれ!」

 「何だ? コテツ・インバクタス」


 「納得がいかない! キリンは「ノード」を発現させたじゃないか! 合格の要件は満たしたはずだ」

 「試験官長、僕も異議を」


 ドレイクが立ち上がり、ソラとスパナの方からも小さな声が聞こえた。

 

 アリスアトリスがため息をついた。

 

 「私は王都の規則に従って、試験の取り仕切りをするのみ。疑問や質問は、学校の教師にでも問い合わせるといい」


 アリスアトリスが、講堂の端に立つララ先生に視線を送った。

 

 その視線を追った一瞬。


 いつの間にか、アリスアトリスは講堂の真ん中の演台から、入り口の方に移動していた。

 

 速く動く力。

 

 「きゃっ!」

 演台の前で、手錠をかけられて立っていたキリンが、宙を舞った。

 まるで、つり上げられた魚の様に放物線を描きながら、背中を引っ張られるように飛んだキリンは、アリスアトリスの両腕に、お姫様抱っこの状態で背中から着地した。

 

 なんだ?

 何の力?


 いや、そんなことより。

 「待てっ!」


 俺とドレイクが駆けだした瞬間に、キリンを抱えたアリスアトリスが、開け放たれた講堂の入り口から姿を消し、同時に講堂の扉が閉じた。

 ドレイクが瞬時に講堂の扉に駆け寄り、開け放つ。

 ……。

 講堂の外には、すでにアリスアトリスもキリンもいなかった。

読んでいただいてありがとうございます!

今回から王都編になります、キリンを取り返せるのか?

もしよければ評価・ブクマいただけたらとっても嬉しいです!

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