表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アレステリア国物語  作者: 鳩峰浦
第一章
41/64

41 破壊する力

 竜が迫ってくる。


 「キリン!」

 コテツが投げたその光の固まりを私は右手で掴んだ。

 「私の左手を!」

 「え?」

 

 「私の手を掴んで! 離さないで!」

 

 コテツが私の左手を掴んだ。


 すごく、強い力が。

 圧倒的な力が。

 溢れてくる。


 これなら。

 私は、3頭の竜めがけて、浮かび上がるその力の名前とともに球を放出した。

 

 「破弾!!!」(デストゥルオ)


 巨大な力の固まりが3匹の竜を、玩具の様に吹き飛ばすとともに、横向きの竜巻のような暴風が吹き荒れ、森の一部を巨人が踏み荒らしたかのように。

 

 破壊した。

 

 

***


 すげぇ……。

 これがキリンの力……なのか?


 「うっ……」

 「コテツ!」


 反動か。

 身体に強い衝撃が走って、地面に膝をつく。

 

 ボスをやられても、竜たちの一部はまだ俺たちを睨みつけている。


 頭の中の光が解決策をささやく。


 何とか、もう一撃。あそこに、第2位の竜がいる。あれも倒せば、この群れは、ばらばらになる。

 「キリン」

 俺がキリンの瞳を見つめ、左手に力を込めたその時。


 辺りが真っ白に光り、雷の落ちる轟音が響いた。


***


 「ごめんなさいね。遅くなったみたい。」

 一瞬の出来事だった。


 俺たちを取り囲んでいた竜達は、全て気を失って地面に横たわっていた。


 これが、ララ先生の力。


 これが、ララ先生。


 目の前に立っているのは、間違いなく、いつも学校で俺たちに授業をしてくれていた、ララ先生だった。


 だが、今ははっきり分かる。



 怖い。

 


 この人が。



 象の前の蟻みたいなもんだ。


 こんなに、力の差があったなんて。

 

 「そんな目で見ないでよ。でも……そういうことよ。それも「ノード」に目覚めた証拠。相手と自分の差が分かるって、それだけ、強くなったってこと」


 ララ先生はそう言って笑った。

 いつもの、教壇で話すときの様に。


 「それに、今の私なんて大したことないのよ。そう、あなたのお兄さんとかに比べたら、ね」


 はっとした。


 俺は、先生が、俺の兄貴の話をするのを初めて聞いた。


 「先生……兄貴のこと、詳しいんですか?」

 「え? 別に……」


 ララ先生は、両手を顔に添えて、ちょっと恥ずかしそうにしている。


 あれ? 

 何か、顔赤くなってないか?

 顔だけじゃなくて……先生の周りに何かぼんやりと赤い光が見えるような……。


 「せ、先生?!」


 キリンがびっくりしたような声を上げた。

 見ると、ララ先生の周りに倒れている竜達がビクンビクンと跳ねている。


 「あ、ごめんなさい……。電撃が溢れちゃった……」ぺろっと舌を出す。

 痺れさせる力の電流が漏れ出してたってこと?

 危険すぎる……。


 いや、それぐらい、普段は力を抑えていて、今は出力を大幅に上げてるんだ。


 「帰ったら、力の調節の話をしようと思ってたけど、だめね、これじゃ」


 小さく舌を出して、少女のように笑うララ先生は、急速にいつものララ先生に戻っていった。 

 いつもの穏やかでちょっとぼんやりした感じに。


 「さて、2人とも、合格おめでとう」


 と、言って先生が笑った。


 それなのに、急に、真顔に戻った。

 

 「と、言いたいところだけど」


 え?

 何だ?

 

 「あなたたち、どうして二人一緒にいるの?」

 「……? どういうことですか?」

 

 「他の試験官は? スザク先生や、王都の試験官は、来なかった?」

 

 「いえ……一度も」

 

 ララ先生の顔が曇る。

 「……3の試験は、一人で受けるものなの。十分な距離を離して、お互いに遭遇・合流しないように配置して、それでも、万一、一緒になった場合は、試験官が感知して、すぐに引き離すことになっているの。最初から説明はしないけどね」


 「え……」


 「とはいえ、3の試験の合格条件は、ノードを覚醒すること。それは二人とも、満たしているから……別に失格ってわけじゃ、ないわ」


 俺はキリンに視線を送った。

 その瞬間、俺の視界は、飛びかかってきたキリンで覆われた。

 

 「やったーーー!!!!」


 キリンの不意打ちに、俺はそのまま地面に押し倒された……。

 何でこいつの突撃は、いつもかわせないんだ?

 「何すんだ……!」 

 「やった! やった! やった!!」

 「痛ぇ! やめろ! 馬鹿……!」

 

 俺に馬乗りになったキリンが、ポカポカと俺の胸を叩く。


 ポタッと、俺の頬に水滴が落ちた。


 「……泣くなよ、馬鹿。」

 「……ありがとう、コテツ」

 

 なんだよ、もう。

 全く、忙しい奴だな。


 でも、こいつのおかげかもな。

 試験の最初から最後まで、一人じゃ、どうにもならなかった。


 「あら、どきどきしちゃうじゃない」


 視界の端に、何かよく分からないことを言って、また少し赤くなっているララ先生が映った。


***


 おめでとう、コテツ君。

 そして……。分からないことばかり。

 コテツ君の「ノード」もキリンさんのノードも、共同行使した時、発現したことになってる。それまで、感知できなかった。

 

 おかげで助けに行くの遅れちゃった。

 そして、二人とも、希な力。特にコテツ君のの力は、一体何なのか⋯⋯。


 おまけに、二人でいるところを、感知できないなんて。

 何がどうなっているのか、異常すぎて、何も分からない。

 王都案件、か。報告書、大変だわ。


 ただ。


 ひとつだけ、確かなのは……


 王都の試験官長、アリスアトリスに視線を送る。


 キリンさんは、失格ということだけ、か。

 あれだけ協力しあって、試験を乗り越えた2人を引き離すのは、気が引けるけど。仕方ない。


読んでいただいてありがとうございます!

今回で試験編は終わりで、次回から王都編に移ります。


合格したかに見えたキリンですが、さらに試練が待ち受けます。


なるべく毎週数回の更新をしています、もしよければ評価・ブクマいただけたらとっても嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ