41 破壊する力
竜が迫ってくる。
「キリン!」
コテツが投げたその光の固まりを私は右手で掴んだ。
「私の左手を!」
「え?」
「私の手を掴んで! 離さないで!」
コテツが私の左手を掴んだ。
すごく、強い力が。
圧倒的な力が。
溢れてくる。
これなら。
私は、3頭の竜めがけて、浮かび上がるその力の名前とともに球を放出した。
「破弾!!!」(デストゥルオ)
巨大な力の固まりが3匹の竜を、玩具の様に吹き飛ばすとともに、横向きの竜巻のような暴風が吹き荒れ、森の一部を巨人が踏み荒らしたかのように。
破壊した。
***
すげぇ……。
これがキリンの力……なのか?
「うっ……」
「コテツ!」
反動か。
身体に強い衝撃が走って、地面に膝をつく。
ボスをやられても、竜たちの一部はまだ俺たちを睨みつけている。
頭の中の光が解決策をささやく。
何とか、もう一撃。あそこに、第2位の竜がいる。あれも倒せば、この群れは、ばらばらになる。
「キリン」
俺がキリンの瞳を見つめ、左手に力を込めたその時。
辺りが真っ白に光り、雷の落ちる轟音が響いた。
***
「ごめんなさいね。遅くなったみたい。」
一瞬の出来事だった。
俺たちを取り囲んでいた竜達は、全て気を失って地面に横たわっていた。
これが、ララ先生の力。
これが、ララ先生。
目の前に立っているのは、間違いなく、いつも学校で俺たちに授業をしてくれていた、ララ先生だった。
だが、今ははっきり分かる。
怖い。
この人が。
象の前の蟻みたいなもんだ。
こんなに、力の差があったなんて。
「そんな目で見ないでよ。でも……そういうことよ。それも「ノード」に目覚めた証拠。相手と自分の差が分かるって、それだけ、強くなったってこと」
ララ先生はそう言って笑った。
いつもの、教壇で話すときの様に。
「それに、今の私なんて大したことないのよ。そう、あなたのお兄さんとかに比べたら、ね」
はっとした。
俺は、先生が、俺の兄貴の話をするのを初めて聞いた。
「先生……兄貴のこと、詳しいんですか?」
「え? 別に……」
ララ先生は、両手を顔に添えて、ちょっと恥ずかしそうにしている。
あれ?
何か、顔赤くなってないか?
顔だけじゃなくて……先生の周りに何かぼんやりと赤い光が見えるような……。
「せ、先生?!」
キリンがびっくりしたような声を上げた。
見ると、ララ先生の周りに倒れている竜達がビクンビクンと跳ねている。
「あ、ごめんなさい……。電撃が溢れちゃった……」ぺろっと舌を出す。
痺れさせる力の電流が漏れ出してたってこと?
危険すぎる……。
いや、それぐらい、普段は力を抑えていて、今は出力を大幅に上げてるんだ。
「帰ったら、力の調節の話をしようと思ってたけど、だめね、これじゃ」
小さく舌を出して、少女のように笑うララ先生は、急速にいつものララ先生に戻っていった。
いつもの穏やかでちょっとぼんやりした感じに。
「さて、2人とも、合格おめでとう」
と、言って先生が笑った。
それなのに、急に、真顔に戻った。
「と、言いたいところだけど」
え?
何だ?
「あなたたち、どうして二人一緒にいるの?」
「……? どういうことですか?」
「他の試験官は? スザク先生や、王都の試験官は、来なかった?」
「いえ……一度も」
ララ先生の顔が曇る。
「……3の試験は、一人で受けるものなの。十分な距離を離して、お互いに遭遇・合流しないように配置して、それでも、万一、一緒になった場合は、試験官が感知して、すぐに引き離すことになっているの。最初から説明はしないけどね」
「え……」
「とはいえ、3の試験の合格条件は、ノードを覚醒すること。それは二人とも、満たしているから……別に失格ってわけじゃ、ないわ」
俺はキリンに視線を送った。
その瞬間、俺の視界は、飛びかかってきたキリンで覆われた。
「やったーーー!!!!」
キリンの不意打ちに、俺はそのまま地面に押し倒された……。
何でこいつの突撃は、いつもかわせないんだ?
「何すんだ……!」
「やった! やった! やった!!」
「痛ぇ! やめろ! 馬鹿……!」
俺に馬乗りになったキリンが、ポカポカと俺の胸を叩く。
ポタッと、俺の頬に水滴が落ちた。
「……泣くなよ、馬鹿。」
「……ありがとう、コテツ」
なんだよ、もう。
全く、忙しい奴だな。
でも、こいつのおかげかもな。
試験の最初から最後まで、一人じゃ、どうにもならなかった。
「あら、どきどきしちゃうじゃない」
視界の端に、何かよく分からないことを言って、また少し赤くなっているララ先生が映った。
***
おめでとう、コテツ君。
そして……。分からないことばかり。
コテツ君の「ノード」もキリンさんのノードも、共同行使した時、発現したことになってる。それまで、感知できなかった。
おかげで助けに行くの遅れちゃった。
そして、二人とも、希な力。特にコテツ君のの力は、一体何なのか⋯⋯。
おまけに、二人でいるところを、感知できないなんて。
何がどうなっているのか、異常すぎて、何も分からない。
王都案件、か。報告書、大変だわ。
ただ。
ひとつだけ、確かなのは……
王都の試験官長、アリスアトリスに視線を送る。
キリンさんは、失格ということだけ、か。
あれだけ協力しあって、試験を乗り越えた2人を引き離すのは、気が引けるけど。仕方ない。
読んでいただいてありがとうございます!
今回で試験編は終わりで、次回から王都編に移ります。
合格したかに見えたキリンですが、さらに試練が待ち受けます。
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