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アレステリア国物語  作者: 鳩峰浦
第一章
36/64

36 嘘つき

 「スパナの傷は?」

 

 「上手に避けてたわ。人体の構造にも、あの子詳しいから。致命傷になるような血管、内蔵、そういうとこを損傷しないように」


 「良かった。なら、回復も早いな」


 ソラ、ドレイク、スパナ。

 みな、強い意志があった。


 能力は申し分なかった。

 それでも、そんな生徒でも、覚醒しないことは、少なくない。


 死に直面する。

 死を目の前にする。

 それだけでは、覚醒できない。

 

 遺書を書き。

 ひとりぼっちにされ。

 

 手も足も出ない状況で、死を間近にして。

 

 それでも、それを拒否する。

 ぎりぎりの瞬間まで。

  

 その意志だけが、ノードを引きずり出す。

 

 本質的に、生き延びるための力なのだ。

 その命を奪われまいと、戦うための力なのだ。

 これだけは、教えてどうこうなるものじゃない。

 本人の心が、最後は試される。


 「コテツ君の方向で、ノードの覚醒に近い反応があったの」

 「覚醒に近い?」


 ララは手元の、水晶で出来たリンゴを見下ろした。


 「でも、消えた。竜を倒して」

 「竜を、倒した?」


 馬鹿な。

 

 ノードの覚醒なしに、そんなことあり得ない。


 「ハルに匹敵するほどの、逸材の可能性があるのに」


 「私たちにできることは、見守ること。死なずに済むよう、ぎりぎりを見極めること」


 ララの表情が、厳しさを増した。

 

 そう。

 間に合わないこともあるのだ。

 

 だが、ノードに熟達した警邏官が、場所を把握していて、すぐに助けられる所にいるだけで、著しく覚醒の確率が下がることもまた知られている。

 

 本能が察知するのだろう。

 自分を助ける力が近くにあると。

 

 だから、教師は遠く離れて、見守る。


 水晶がノードの覚醒を関知した瞬間に、全速力で駆けつけ、救出する。

 

 

 一番つらい仕事だ。


 ああ、だから、コテツ、キリン。

 お前達に、祝福と加護があることを。


***


 動けなくなって、どれくらいたったろう?


 指先の感覚がない。


 もう、疲れたな。


 コテツは、どうなった?

 ごめん、私をかばって。


 私のせいだ。


(お前のせいだ。)


 思考を、どす黒い闇が覆っていく。

 

 私が悪い。


 結局、どうにもできなかった。


(お前は何もできなかった。)


 何もかも、失ったまま。


 スタート地点にも立てなかった。


 何か、もうよく分からないや。


 何も証明できなかった。


 自分が自分だって。


 忘れてるのは、間違ってるのは、みんなの方だって。


 (間違ってるのはお前だ。)

 

 本当は。

  

 私が、間違ってたのかな。

 

 私、本当に、キリンなのかな。

 

 嘘をついてたのは、私の方なのかも。

 

 正しいのは、みんなの方で、間違っていたのは、私。


 狂っていたのは私。


 よく考えたら、そうだ。


 当たり前じゃない。

 

 世界中の、みんなが、私はキリンじゃないって言う。

 

 私の記憶は、嘘だって言う。


 なんだ、そうだ。


 (やっと気付いたか)

 

 嘘をついてたのは、私の方だ。


 世界中の人が、私が嘘つきだって。


 (そうだ。お前は嘘つきだ。)


 その通りだ。そっちが正しいに決まってる。

 

 (お前は、キリンじゃない。)

 

 私は、キリンじゃない。

 

 私なんて、いない。いない人間は、いなくなればいい。

 

 みんなに、迷惑かけちゃったな。

 

 嘘なんかついて。


 何を泣いてるの。

 泣く資格さえ、あなたにはないわ。



 この嘘つき。



 私は……いなければ良かった。

 

 いなくなろう。


 私は……


 「キリン!!!!」


 声が。



 「キリン!!!!!!」



 私を呼ぶ、力強い、声が。



 「キリン・アリスティア・ノノ!!」

  

 私のことを、信じている、声が。」



 「ふざけんな! 目を開けろ!!」

 「あきらめたら許さねぇぞ!! 起きろ!!」


 コテツ。

 

 コテツの叫び声が聞こえた。

 

 コテツの右手が、私の左手を掴んで。

 私を取り込んでいた、真っ黒な影から、私を引きずり出した。

読んでいただいてありがとうございます!

書きながら涙目の気持ち悪い作者です、、、この辺り、好きなんです、、、もしよければ評価・ブクマいただけたらとっても嬉しいです!

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