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アレステリア国物語  作者: 鳩峰浦
第一章
29/64

29 100点じゃなくても

エピソード23の伏線回収回になります!よろしければそちらも是非!

 ソラとドレイクの二人は、壁に叩きつけられ……そのネバネバした液体で動けなくなっている。


 接着液か何かか……殺傷力はなさそうだが……。


 スパナがソラに駆け寄る。スパナなら、あの液体を溶かすか何かし、どうにかできるか……。

 

 ドレイクは一人で頑張ってもらおう。

 

 俺は身動きのとれないドレイクから巨大な黒鍵を回収すると、部屋の中央の、赤い球の方に走る。キリンと俺は背中合わせになって、ガーゴイルに対峙する。

 

 ガーゴイル二匹は、俺達に鉤爪で襲いかかっては、飛び退くことを繰り返す。

 

 正直、埒が明かない。だが、ここに引きつけないと、ソラやドレイクが襲われてしまう。

 

 目の前のガーゴイルの動きも見えるし、弱点は当然鍵穴で、光って見えるのだが……。とにかく動きが細かすぎて、捕らえられない。どうも、人間相手と勝手が違う。


 最期の目盛りの光が、徐々に薄くなっていく。 

 気持ちばかりが焦っていく。

 

 キリンが、肘で俺を突っついた。顔だけちらっと振り向くと、キリンが、「弾き飛ばして。」とサインを送ってくる。


 よく分かんねぇが、何かあるんだろ。


 俺は、再び襲いかかってきた俺側のガーゴイルの動きを読むと、全力で、黒い鍵を大振りした。


 ガーゴイルは、それを両手でガードしたが、弾き飛ばされる。



 次の瞬間、俺の耳の脇辺りを勢いよく、何か硬い物が飛んでいった。

 

 気が付くと、ガーゴイルの胸に鍵が刺さっている。

 俺は自分の黒鍵を小脇に抱え、急いで間合いを詰め、ガーゴイルに刺さった方の黒鍵を回した。

 

 再び、金切り声を上げてガーゴイルが動かなくなった。


 また、耳から液体が出てくることを察知し、俺は距離を取ったが……。


 頭上から液体が降り注ぎ、俺は身動きが取れなくなった。


 くそ…今度は頭から出てきやがった。


 あれ? スパナも液体に押し潰されてもがいている……。

 

 キリンが駆け寄ってきて、俺が小脇に抱えていた黒い鍵を手に取り、最後のガーゴイルとにらみ合う。キリンが黒い鍵を振り下ろし、それを受け流したガーゴイルがキリンに鉤爪を振り下ろすが、今度はキリンがそれを鍵で受け流す。


 一進一退の攻防。


 俺は少しずつ、液体を体から引っ剥がしながら、身動きが取れるよう、這いずり出る。


 早く加勢を……!


 キリンが振り下ろした黒い鍵が、ガーゴイルを捉えたと思った瞬間。


 ガーゴイルが中空に浮いた。


 飛べんのかよ! 

 物理的な飛行じゃない……。

 やはりマゲイアティアの魔術か……。


 中空から、ガーゴイルがキリンめがけて襲いかかる。すんでのところでキリンはかわすが、攻撃をしようとした時には中空に逃げている。


 圧倒的に不利。こっちの攻撃は届かないのに。

 目盛りの光が、消えていく。

 残り10分くらいか。

 まずい、試験終了まで、時間がない。


 ガーゴイルが口を開けた。

 その口から、大量のピンク色の花びらが吹きだす。季節外れの春の花。

 

 サクラの花。


 なんだこりゃと思ったが、視界が遮られ、前が見えづらく、うっとおしい。


 視界の右端で、何かが動いた。


 ソラだ。

 そして、左から、ドレイク。


 二人とも抜け出したんだ。


 両脇から、二人が縄を持ってガーゴイルに接近する。


 ソラに向けてガーゴイルが急降下した。かわしきれなかったソラは、二重三重にした縄をピンと張って打撃を受け止めようとするが、そのまま壁に吹き飛ばされる。


 だが、吹き飛ばされながら、ガーゴイルの首に縄が掛かる。


 反対側から、ドレイクの縄が、同じく首に掛かる。

 両脇から引っ張られ、身動きがとれず、縄を外そうと首に手をかけたガーゴイルの胸元に。

 見とれるほど美しいフォームでキリンが投げた黒い鍵が、矢の様に突き刺さった。

 

 さっきもこれをやったのか。


 凄まじいコントロール。そういやこいつ、弓矢がめちゃくちゃ得意だったな…。

 

 !

 

 鍵が刺さったまま、ガーゴイルが中空に浮かび上がる。ソラとドレイクが引きずられている。

 駄目だ、鍵を回さないと。


 俺はようやく自由になった上半身の力を振り絞って、下半身を引き抜こうとした。


 その時、キリンが縄を投げてガーゴイルの首に掛けた。


 そして、力強く地面を蹴ると、鍵に向けて飛んだ。


 鍵を掴むと、それを押し込むようにして、キリンはガーゴイルを床に叩きつけた。


 勝った、と思った瞬間。


 ガーゴイルの口から大量の花びらが噴出し、キリンの視界を奪う。


 キリンがひるんだ隙をついて、ガーゴイルが黒い鍵を抜き、ぶん投げた。


 黒い鍵が床をくるくると回転しながら、花びらが敷き詰められた部屋の中を滑っていく。


 目盛りの光が、消えていく。


 ここまで来たのに。

 

 間に合わない。


 


 黒い鍵に、駆け寄る影が見えた。



 ソラ!



 ***


 キリンちゃん。

 私は、あなたの役に立ちたかった。

 あの時、絶望してた自分に、光を灯してくれた。


 100点じゃなくて良い。

 30点で良いから。

 その手に、届いて。


 私は、黒い鍵を掴んで、キリンちゃんのフォームをイメージしながら、全力で投げた。


 ガーゴイルにまたがったキリンちゃんが、右手を伸ばした。


***

 

 ソラの投げた黒い鍵は、美しい軌道を描いて、キリンの右手に吸い込まれた。

 ガコッ。

 鍵が回る音がして、ガーゴイルが悲鳴を上げた。

 最後にガーゴイルから吹き出したのは、液体ではなく、大量のピンクの花びらだった。

 

 水晶の台座から外れた赤い球が、ころころとキリンの足下に転がってきた。

 

 キリンが拾い上げたとき、同時に、目盛りの光が全て消えた。

 間に合った。

 

 祝福でもするかのように降り注ぐ花吹雪の中、キリンが振り向く。


 そして、にっこりと笑って、ソラにピースサインをした。

 ソラがキリンに飛びかかって抱きついた。


 ***


 結果を聞くまでも無かったけど。


 規定通り緑と赤の球を集めた俺たち5人は2の試験も合格となった。


 まぁ、それぞれ頑張ったけど、最後はほとんどキリンとソラのお陰でなんとかなりました、みたいなとこがあった気もする。


 2の試験の前、ソラが走ってきて「私、キリンちゃんとペアで良い? 何かあったら、後で合流するから……コテツ君、嫌じゃない?」と。

 何故、何を俺が嫌がるのか、謎の質問があったが、エレナの妨害があったことを考えたら、結果として、二手に分かれて正解だったんだろうと思う。


 それから、一つだけ。


 エレナと、その取り巻きの男3人は、失格・退学、王都での取り調べになった。


 アリスアトリス試験官長いわく。


 「警邏官が、悪いことしちゃ駄目に決まってんだろ。こんな当たり前過ぎること、禁止条項に書くわけないだろ。試験以前の問題だ」とのことだった。

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