24 2の試験
2の試験に残った生徒全員が講堂に集められていた。
これまでと雰囲気が全く違うのは、スザク先生も、ララ先生もいないこと。
会ったことのない、王都から派遣された試験官が、3人。講堂の真ん中に、水晶のドクロを背にして立っていた。
「今日から始まる2の試験、そして次の3の試験は、我々王都の試験官が管理する。試験官長のアリスアトリスだ、よろしく」
長めの髪を真ん中で分け、後ろ髪を縛っている。鋭い切れ長の一重の瞳、すらりとした細身の長身の男性だった。
少し離れたところに立っていたキリンが、試験管長のアリスアトリスを見て、驚いたように目を丸くしていた。
何だ? 知り合い? そんなことある?
***
アリスアトリス。
ミリアムの施設で、ワイバーンから私たちを助けてくれた、警邏官。王都に異動してたんだ。それに、試験官長っていうことは……やっぱり、かなり上位の警邏官なんだ。
「2の試験は、少し特殊な試験だ。全員、2人のペアか、3人のグループを作れ。誰と組むかは自由だ。30分後、作ったペアかグループで、ここに登録しに来ること」
生徒達がざわついた。ここで、急に誰かと組めと言われるとは。分かっていれば準備もできただろうに。
さて、どうしよう。
頭に浮かぶのは、もちろん、いつものメンバーだけど……。
「キリンちゃん」
振り向くと、ソラが立っていた。
「……ペア……私じゃ駄目かな?」
「え?! もちろん良いに決まってるじゃない。こっちから誘いに行くところだったわ」
「良かった! 頑張ろうね!」
ソラは、お世辞抜きで頭が良い。試験勉強も、何度助けられたことか……。
あ、コテツ達はどうしたかな。
きょろきょろと見渡すと、コテツとスパナが目に入った。
「ま、休みに家に帰らない同盟、だな」とコテツが言った。
ん、何かどこかから視線を感じるような……。
あ、ドレイク君だ。
「コテツ、スパナ。別に、良いんだぞ。協力して欲しいなら」
「面倒くさいから、早く来いよ、ドレイク」
「これに書いて下さい。もう、自分たちは書いてますから」
「……」
あ、黙って登録用紙受け取った。
ま、じゃあ、いつものメンバーということね。
「キリンさん、よろしいですか? 僕がそちらに入って、お手伝いをさせていただくというのも……」
なぜか、コテツがドレイク君の襟を引っ張る。
「いいから、とりあえずお前はこっち」
私はちらりとコテツを見た。
……何考えてんのかな?
「多分、これチーム同士で連携する場面があるんじゃないかなと思うんです? だから、取りあえずこれで二手に分かれて、行き詰ったら合流して情報交換しませんか?」
ソラが、また試験の先を読んだような話をしていた。
「そうしよう。2ー3だけど、まぁ同じチームということで」
コテツがソラの発言を受けて、まとめていた。
***
「よし、これで全部だな。」
生徒達が提出した登録用紙を長めながら、試験官長のアリスアトリスが言った。
「これから、試験会場に移動する。この移動の時点から、試験は開始だ。これから、一言も言葉を発してはいけない。それから、後ろを振り向いてもいけない。絶対にだ。破った者は、即失格だ。では試験開始。全員付いて来なさい」
そう言うと、アリスアトリスは講堂の出口に向けてスタスタと歩き出した。
先頭の生徒が歩きだし、全員がぞろぞろと学園の西の森の方へ歩いていく。
「ちょっと! え?! 俺、振り向いてないって!」
誰かが引きずられ、連れて行かれる音。
まじかよ……。失格して連れて行かれた?
アリスアトリスは一言もしゃべらず黙々と歩き続ける。
小一時間くらいは歩いたんじゃないだろうか。 森の中で、不意に開けた広場のような場所に出た。
かなり広いその場所には、いくつもの石の扉のような物がそびえ立っていた。
こんな場所が学校の付近にあったなんて、知らなかった。
「今からは、後ろを振り向いたり、周りを見たりしても良い。ただし、しゃべったら失格だ」
しゃべったら失格。
とは言え、周りを見れるようになるのは有り難い。
俺は、右斜め後ろに視線を向けると、キリンと目が合った。
キリンは首を傾げ、両方の掌を開いて「何なんだろうね?」というような仕草をする。
俺は首を振って「分かんねーな。」という仕草をする。
コミュニケーションは取れそうだが……。
「ここに、4つの扉がある。どこを選んでも良い。2人もしくは3人のチーム単位で、扉を選んで入れ。中に入ったら、これを探して持って来ること」
アリスアトリスは、王都の試験官が着るゆったりとしたローブの袖口から、緑色の球を取り出す。
「これを人数分集めて持ってきたチームは、その時点で合格だ」
球探し……か。何か宝探しの遊びみたいな試験だな……。
「それから、これ。この赤い球は一つで緑の球3つ分だ。だから、赤い球を一つ持ってくれば、そのチームは全員合格だ。どっちでも良い。手段も問わない。会話だけはしないこと。とにかく、球を持ってこい。制限時間は6時間だ」
アリスアトリスが円盤のような物を取り出す。
ぐるりと、12個の宝石のようなものが円形に配置され、埋め込まれている。
「チームごとに、これを一つ渡す。30分で1目盛りずつ消える。全部消えたら6時間だ。それから……」
アリスアトリスが何やら嫌な笑顔を浮かべる。
「1目盛り消えるごとに、入手されなかった緑の球は4つずつ、消えていく。つまり、最初は48個あるが、30分後には44個、1時間後には40個、6時間後には0個だ。だから、急げよ。赤い球は最後まで消えないけどな。あと、会話したら、これが全部真っ赤になるから、その時点で失格な。」
げ、まじかよ。
生徒が今…52人。
開始後30分まではほとんど全員に合格の可能性がある。でも、そっから先は、どんどん減っていくってことか。
いや、赤い球があるから、必ずしもそうとも限らないが……。
「じゃ、始め。俺はここで待ってるぜ。」
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