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アレステリア国物語  作者: 鳩峰浦
第一章
22/64

21 決着(♦︎)(♣︎)

 色の薄らいだ夕日が、明るさを増した一番星が視界に入る。

 スザク先生が飛びかかってきたのに気がついた瞬間に、もう弾き飛ばされ、地面に倒されていた。

 

 見えても、反応が間に合わない。

 これが、5速(クゥインク)


 脳が、全力で警報を鳴らす。

 動け、立て、駄目だ!


 光の矢が降ってくるのが見える。

 それは、俺の脳が見せる、スザク先生の攻撃。 5速の突進で、かわす間もなく吹き飛ばされ、地面に倒れた俺に、凄まじい速度で飛びかかってくる、先生。


 身体をよじり、回転しながらかわして、何とか足をもつれさせながら立ち上がる。

 地面に膝をついたスザク先生が一瞬見えて、消えた。


 左……から、右!

 何とか両腕を回してガードするが、再び吹き飛ばされた。

 地面に倒れ込む。

 まずい、これで抑え込まれたら。

 まずい、まずい、まずい。


 右、左、あちこちに動きながら、先生が飛びかかってくるのが、その軌道が見える。

 でも速すぎる。見えても、対処が間に合わない。

 

 こんなの、どうすりゃ……!


 立ち上がろうとした瞬間、背中の方から体当たりされ、吹き飛ばされてうつ伏せに地面に倒れ込んだ。


 意識が、ぐらぐらする。

 

 なんだよ、これ……。

 

 これが、警邏官の実戦用「ノード」。

 めちゃくちゃだ……。反則だろ……。見えてるのに間に合わないなんて……。

 ちくしょう……。

 

 「コテツ!!!!」

 


 キリンの声が聞こえた気がした。



 その瞬間、世界の輝度が上がった。

  


 夕闇が迫る中、確かに、あたりが明るく見える。

 スザク先生の動きが、さっきまでより遅く見える。

 はっきりと、先生が持つ手錠の鍵穴まで見えた。

 身体を起こして、手錠をかけようとした先生の手をかわすと、すれ違いざま、手刀で手錠を叩き落とす。

 

 「!?」

 先生が驚きの表情を浮かべながら、たたき落とされた力を利用して、身体を回転させながら放った裏拳をかわすと、先生のがら空きになった胴のあたりが光って見えた。


 「おおおおおっ!」

 俺は、身体をひねり戻しながら、全力で先生の胴のあたりに渾身の「砲撃(フラルゴ)」を叩き込んだ。

 「ぐおっ!」


 入った。

 と、思ったが、手応えが、硬い。


 瞬時に、スザク先生は身体をよじりながら右膝を上げてガードした。

 バランスを崩しながら、先生は後ずさった。



 「てめぇ……ふざけんなっ!」



  スザク先生の怒りの形相。



 そこからのことは、見えなかった。



 気が付いたら、仰向けに倒れ、両手を上にした状態で、俺は手錠をかけられていた。


 ***


 「……そんな……」

 力が抜けて、私は校庭にへたりこんでしまった。

 あそこまで追いつめたのに。

 

 最期は、何も見えなかった。

 

 叫んだスザク先生が、気が付いたら、コテツを仰向けに倒して、手錠をかけていた。

 

 5速(クゥインク)より、遙かに速い動きで。


 ……ん?


 あれ?

 5速より速い??

 試験は、5速までじゃ??


 「……ララ先生」


 「ん?」

 「あれ、反則じゃないですか?」


 「うん、そうよ。だって、この試験、5速までだもん。馬鹿じゃないの、生徒相手に、本当に本気出すなんて。まぁ、でも、珍しいもの見れたわね。スザク先生の「時間止め」。ほんっとうに見えないんだなぁ」


 「えーと、それじゃ……」


 「あ、そうよ。とりあえずおめでとう」

 

 スザク先生が、コテツを引っ張って立たせた。


***


 「勝負は、俺の勝ち」

 「……はい……」


 スザク先生が、手錠の鍵を外し始めた。

 終わった、か。


 でも、できるだけのことはやった。

 ここまでできたんだ、警邏官になれなくても、俺は……。


 「試験は、お前の勝ち」


 「……え?」


 「10分逃げ切る奴なんて、ほんとにいるんだな。勉強になったわ」


 「俺、逃げ切ったんですか」


 「ああ。何回も担任を殴りやがって。頭に来たから、本気出して捕まえてやった」 

 え、あ、それじゃ……。

 

 視界の端に、夕日を反射する、金色の髪の毛が見えた。

 

 キリンの笑顔。


 「コテツは、1の試験、合格。他の生徒は、明日の午前中に結果を張り出す。寮に戻っているやつらにも伝達しておくこと」

 

 スザク先生の声を聞いて、キリンやソラ、スパナが飛び跳ねているのが見えた。ドレイクは、腕を組んだまま、そっぽを向いていた。


 そして、エレナ達のグループは、地面に唾を吐いたり、舌打ちをしながら、寮の方に消えていった。

 

 ***


 教官室に向かいながら、俺はララと今日のコテツのことを話し合っていた。

 「よくかわしたわね、コテツくんのあの痛そうな突き」

 「喰らったら、吐いてたな」

 「で、何だったの?」

 「全然分からん。分からんが……確かに、俺の動きが先読みされてた。まるで、未来が見えるかのように」


 「未来予知? そんな馬鹿な。あり得ない。そんな「ノード」はどんな文献でも見たことがないわ」


 「だが、それを仮定すれば、あいつの入学試験の結果も、普段の組み手の強さも全部説明がつく。1対1の相手の動きが全て先に分かる、それと、正確に急所が見える。そんなことができるなら、入試の試験官が倒されたのも、納得だ」


 俺だって、試験のハンデ付き、体当たりしかできない状態じゃ、勝てなかった。

 見えないレベルまで速度を引き上げれば、予知も何もないだろう、と仮定して、どうにか取りおさえたのだから。

 

 「それからもう一つ。キリンの声が響いた後、明らかにコテツの動きが速くなった」


 「あ、やっぱりそうよね。……あれは……」

 「何か思いつくか?」

 「⋯⋯やっぱり、恋の力かしら!」

 「そうじゃねーだろ!」

 「えー、そうじゃないと、つまらないわ」


 駄目だ、ララはララで、そっちの話題になると頭がおかしい。


 自分で考えよう。


 あれは、どう考えても「速く動く力」の共同行使。」


 触れてもいないのに? しかも、まだキリンは「ノード」を覚醒させてないのに?

 

 ……専属契約?


 駄目だ、分からないことが多すぎる。試験の結果がどうであれ、王都技術局には報告だな。

読んでいただいてありがとうございます!

試験は次のフェイズに進みます。徐々に主人公達の力も明らかになっていきます⭐️

もしよければ評価・ブクマ、感想等いただけたらとっても嬉しいです!

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