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アレステリア国物語  作者: 鳩峰浦
第一章
18/64

17  ゼロ(♦)(♠)

 俺は、ちょっとした期待を持って、水晶の前に立った。


 確かに、これまで、どの力も俺は上手く使えなかった。


 だけど、本当は、何か隠された力が有るんじゃないか。

 

 ちょっとぐらい、何か自分には優れた力が有るんじゃないか。

 だから。

 きっと、ここで、それが明らかになって。

 俺の本当の力が分かるんだって。


 天才の弟。そして犯罪者の弟。

 

 お前等、ずっとそう言う目で見てきたろ?


 得意なものは、一対一の組手だけ。

 兄貴とは違うなって。そう思ってたんだろ?


 悔しくはない。兄貴はすげぇ。

 

 いや、本当は死ぬほど悔しい。

 

 俺だってさ。

 

 俺は、水晶に手を当てた。

 生徒たちが、静まりかえり。

 みんなが俺を見ていた。

 

 静寂。

 頭が真っ白になって、汗が噴き出してくる。

 

 何をイメージすればいいのか、分からない。

 

 そりゃ、そうだ。

 何も、使えたことが無いんだから。

 

 ララ先生の電撃。

 スザク先生の、見えない速度の動き。

 兄貴の、重くする力。

 

 どれも、頭に浮かべてみたところで。

 目盛りは、動かない。

 一ミリも。

 

 スザク先生が目を丸くしている。


 スザク先生が水晶に指を一本触れると、黄色い光を放って、目盛りは勢いよく振れた。


 「コテツ、二回目だ。やってみろ」

 「……はい……」


 分かってる。

 俺は兄貴じゃない。

 俺じゃ、駄目なんだ。

 

 俺はもう一度水晶に手を置く。

 でも結果は同じだ。

 当然だ、やり方が、分からない。

 何も変わらない。

 目盛りは微動だにしない。

 

 「0だ」

 

 スザク先生の声が、凄く遠くから発せられたように聞こえた。

 スザク先生が、俺の腕を掴んだ。

 「三回目、やってみろ」

 

 ***


 俺は再び屋上に来ていた。

 さすがに、なぁ。

 これは落第だろ。

 

 元から、駄目なら最初からそう言ってくれよ。入学とかさせて。

 4年もかけて色々教えて。

 期待なんかさせるなっつーの。

 

 とっくに気付いてたよ。1年生の時から。

 みんなが使える力が、使えないんだもんさ。

 でも、頑張れば、何とかなるんじゃねーか、と思っちゃったんだ。

 試験に合格したら、「ノード」は使えるようになるって聞いてたから、試験にさえ合格すればつて。 


 だってさ、兄貴は、天才だぜ。

 犯罪者だけど。

 くそ。

 

 あいつ。

 

 あいつさえ、いなかったら。


 ちょっとぐらい、もしかしたら、自分にも天才の力が眠ってるかもって、思うじゃん?

 自分が、普通以下だなんて。

 特別じゃないんだなんて。

 


 本当は、船を作りたかったんだ。

 馬鹿兄貴がいなかったら。

 海を見てるのが好きだったから、遠くまで、どこまでも行ける船を作って。


 そう、スクトゥムティアは、本当に行ってみたかったな。


 金貯めて、遠くの国に行くか。兄貴の弟ってばれないような……。 


 

 バシン、と背中をひっぱたかれた。


 

 何だよ。

 

 キリンが、俺を睨みつけている。

 「まさか、あきらめてるんじゃないでしょうね」


 「何だよ……。ほっとけよ。良かったじゃんか、お前、凄い才能あるじゃん。先生達も驚いてたぜ。ソラだって……。スパナもドレイクも、高い方だった。」

 「……たまたまよ」

 「?」

 「才能が0ってことないでしょ?」


 俺の話かよ。

 

 「「ノード」は今までもだめだった。そのまんまの結果だ。もう良いだろ、ほっとけよ」

 

 劣等感を、上塗りすんなよ。

 

 キリンは多分、警邏官(アレスター)になる。

 

 それも、多分、凄く優秀な。

 悔しくないと言ったら嘘になる。

 頭も良いし、才能がある。

 

 どっちもない、俺とは違う。

 

 予備警邏官か。


 予備警邏官補から、二等警邏官までは昇進できるって話だしな。

 

 別の道もあるさ、ハルを捕まえる手伝いくらい……。



 どがっと、何かに吹っ飛ばされた。



 「……痛ってぇな! 何すん……」


 荷物をぱんぱんに詰めたリュックサックで、フルスイングで殴りやがった。


 怒ろうと思ったが、それ以上にキリンが吊り目を吊り上げて、めちゃくちゃ睨んでいる。

 

 「……まだ終わってない!」


 なんだよ。


 別に、終わったなんて思ってねぇよ。

 

 何でお前が怒るんだよ。


 何でお前が泣いてんだよ。

 馬鹿じゃねぇの。

 

 恥ずかしいじゃねぇか。


 お前は良いよな、なんて思っちまった。

 筆記もできて、すげぇ才能もあって。

 

 天才に努力されたら、手も足も出ねぇって。

 

 でも、別に今日分かったことじゃない。

 薄々気付いてたことに、向き合っただけだ。

 


 お前になくて、俺にあるものだって、残ってるんだからな。



 「そんなの、知ってる」



 キリンが、俺の目を見た。


 「1の3がある。そこで満点取ればいいんだろ」

 そう言ったら、少し力が湧いてきた。


 だから、お前が泣くなよ。


 お前に泣かれるの、苦手なんだよ。

 

 ***


 教官室で、1の1の試験、1の2の試験の採点を急ピッチで進める。


 「ララ、これどう思う?」

 

 「どの子のこと?キリンさん? ソラちゃん? スパナ君? ドレイク君もへんてこだったわねー。あ、それとも……」

 

 ララは、気になった生徒の名前を次々に上げていた。

 

 もちろん、俺もそいつらは気になるが。

 

 俺はコテツの評定結果を見ていた。


読んでいただいてありがとうございます!

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