第7話『カードの分類分け!』
ワイワイと集まって来たゲイルの仲間を落ち着かせ、ケイスケは再びパソコンの画面にキャラクターカードを映してから振り返った。
「さて、諸君。これからキャラクターカードを作っていく訳だが、その前に色々と決めなきゃならん事がある」
『決めなければならない事?』
『なんだそれは』
「最初にルールを説明する時にコスト払いについて話しただろう? コストを支払う為には同じ種類のカードを除外しないといけない。という事は、カードを種類ごとに分類しないといけないんだ」
『なるほど』
「という訳だ。キャラクターカードを作る前に、カードの能力を分類分けしようか」
ケイスケはそう言いながらトランプを取り出し、四つのマークのカードを取り出した。
そして、それとは別に5のカードと7のカードを取り出してテーブルの上に置く。
「とりあえず実際の戦闘をイメージしながらカードの種類について話をしていこうか。まずこの5のカードがゲイル。お前だ。そしてこの7のカードが俺」
『ふむ』
「このまま俺はゲイルのカードに対して戦おうぜ! と言って戦闘を仕掛けた」
『このままでは私の敗北だな』
「そう。ここでゲイルは戦闘で勝つ為に、攻撃力を上げる事にした。ここで使うのは戦闘力を上げる為のカードだ」
ケイスケはダイヤのカードをゲイルのカードに重ね、笑いかける。
「これでゲイルのカードは数字分3上昇した為、8となった。このままでは俺が敗北してしまう。だが、俺はこのカードを使って手札を補充しよう」
ケイスケはクローバーのカードを捨てて、そこに書かれた数字分4枚のカードを手札という事にし、そこからダイヤの2を自分のカードに重ねた。
「これで俺のカードの力は9。このままじゃあゲイルは負けちまうな」
『私にも手札を増やすカードはあるのか?』
「無論あるとも」
ケイスケはそう言いながらクローバーのカードを置き、ゲイルの手札に3枚のカードを与えて、そこからダイヤの4をゲイルのカードの上に置いた。
「これでゲイルのカードは12。俺のカードは9だ。ここまでがスタンダードなカードゲームのやり取りだ。互いに手札のカードを使って戦闘力を上げて戦い合う」
『なるほど。だいたい理解したぞケイスケ。読み合いだな。無論この戦闘に全ての力を使う事もないだろうが、ここだと分かれば全力を注ぐべきだろう。何故なら、敗北した側は戦闘に負けた時点で無駄になってしまうのだから!』
興奮したゲイルはダイヤのカードを更に追加し、自分のカードのパワーを上げた。
『これで私のカードのパワーは16。ケイスケのカードは9。ケイスケの山札を7枚も削る事が出来るぞ!』
「ふっ」
『ん?』
「甘いぜ! ゲイル!! 俺は、手札からスペードのカードを使い、6以下のカードを破壊する!!」
『は、破壊だと!? それはどういう事だ』
「戦場から待機所へ送ると言っている」
『バカな! そんな事が出来るのか!? 許されるのか!』
「無論だ。こういうカードの種類もある。相手のカードを破壊したり、相手の手札を捨てたり、戦闘せずに山札にダメージを与えたり名」
『何という卑劣なカードだ……!』
ゲイルはぐぬぬと悔しそうな顔をしながら、ダイヤの重なったカードを見つめた。
ゲイルの言った通り、敗北した者は使ったカードを全て失うが、数値で勝っていた状態であっても破壊されてしまえば全てが無駄になる。
つまりは、誘われていたのだとゲイルは察し、項垂れた。
しかし。
「だが、ゲイルは手札にカウンターとなるハートのカードを持っていた為、そのカードを使う事により、俺のスペードの効果。破壊する効果を無効にする!」
『無効?』
「破壊する効果を無かった事にする。っていう効果さ。これで俺のカードは効果の解決に失敗し、お前のカードは無傷のまま戦場に残された」
『と、いうことは』
「互いに何もないまま戦闘が解決され、俺のカードが破壊される事になった」
『おぉ……!』
「こういう効果をぶつけ合う事がカードゲームだ。どの種類のカードをどれだけ入れるのか。組み合わせは? なんかを考えるのが楽しいってのもカードゲームの魅力だな」
『ふむ……しかし、そうは言うが、相手のカードを破壊したり、手札を増やすカードばかり入れれば勝てるのではないか?』
「そういうカードは元々の戦闘力を低く設定するからな。そればっかり入れても勝つことは難しいだろう。まぁ、難しいというだけで無論勝ち方も存在する訳だが」
『ふむ……なるほどな。難しいものだ』
ゲイルはテーブルの上を見てから、天を仰ぎ、ケイスケへと視線を落とした。
『だが、面白くなってきたな』
「だろ?」
それからケイスケたちは改めて、分類分けをするべくパソコンに向き直り、テキストに書き込んでいく。
「明確にこれはコレ! って決めるのはまぁまぁ難しいからな。何となくの指標だけ作って、後はアドリブでいこう」
『そうだな』
「とりあえず。なんとなーく色の分類分けはするぞ」
『色? マークでは無いのか?』
「マークでも良いんだがな。カードが重なったら分かりにくいだろ? マークが見えなくなって」
ケイスケはそう言いながらトランプを複数枚まとめて持って、ゲイルに見せる。
カードの束は完全には重なっておらず、少しだけズレているが、下のカードとその下のカードのマークを区別する事は困難だった。
「という訳だ。カード全体をその色で塗って、重なっていても分かる様にするから色を決めるぞー」
『ふむ、そうだな。ではまず、手札やコストを増やす色だが、これは青にしよう。母なる銀河。そして海。地球と我が母星の共通点だ』
「良いな。じゃあ手札を増やす色は青にしよう」
ケイスケはパソコンに手段を増やす系統のカードは青と書き込んだ。
『なら、破壊したり妨害するカードは赤ね。何かを生み出す色の反対だし。燃えている火のイメージだわ!』
「ふむふむ。では破壊・妨害系の色は赤にしよう」
『ならば、破壊から世界を守る物は緑であるべきだろう。大いなる自然。木々の力が小さき命や弱き命を守るのだ』
「確かにな。その通りだ。よし、他の効果を止め、自分のカードを守る効果は緑にしよう」
『残るは力を上げる系のカードか』
『悩ましいな。どういう色が良いんだ?』
「なら、黄色にしよう」
『黄色?』
ケイスケの提案にゲイル達は揃って首を傾げ、その意味を問う。
「黄色ってのは生命の色さ。希望に向かって進んでいく色だ。このゲームの根幹であり、共にあれば頼もしい。そういう色にしたいって考えてな」
『……ふむ。良いんじゃないか?』
『私は賛成だわ』
『俺もだ!』
「なら、決まりだな。これで四色揃った。それぞれハッキリとした色だし。重ねても違いは分かるだろう」
『うむ』
ゲイルは深く頷き、ケイスケもそれに応え、これでひとまずの分類が終わった。
ここからは非常に細かい作業となっていく。
そう。いよいよカードゲームにおける主役となる、それぞれのカードを作っていくのだ。
「という訳で、これで準備完了だ。やり方としては、どういう英雄だったのかを聞いて、効果を作る。んで、それをカードに当てはめて、レベルを決めて、それとなく数字を決める」
『そんな投げやりで良いのか?』
「あぁ。勿論だ。最初はザックリと作って、それから調整してゆく方が良い感じの物が出来る」
『そういうものか』
「だから全員の力が必要なんだ。順番に作っていこうぜ」
『あぁ』
ケイスケはその場にいる全員と手を合わせ、始まりの合図を鳴らした。