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第4話『相棒! パートナーカード!』

 ケイスケはゲイルを見て笑みを深めながら、口を開いた。


「これで大まかな説明は終わったし、俺が作ろうとしているカードゲームの全体イメージは掴めたんじゃないか?」

『そうだな。何となくではあるが』

「まぁ、別に今すぐ戦うってワケじゃねぇんだ。より具体的なカードを作りながら理解を深めて行ってくれ」

『そうだな』


 ケイスケは広げたトランプを片付けてから、再びパソコンの前に戻り、キーボードを打ちながらこれまでの話をまとめ始めた。


【山札の枚数は50枚】

【ゲーム開始時点で手札は7枚】

【各、プレイヤーの手番の始まりに2枚山札から引く】


『ん? 手札は7枚なのか? 5枚ではなく?』

「まぁ、5枚でも良いけど。多分動きにくいぞ? 動き始めは多い方が選択肢も増えるし、良い事だらけよ」

『そういう物か』

「まぁ、少なくとも俺は多い方が嬉しい」

『互いに同じ数なら良いか』

「どうしても気になるなら、後で変えれば良いさ」

『それもそうだな』


【カードを使用する際のコストは待機所の同色のカードをゲームから除外するか、手札のカードを待機所に置く事で支払える。手札は何色でも構わない】


『ケイスケ。気になったのだが、コストとして手札から待機所に置いたカードと待機所のカードを除外する事を一緒に出来るのか?』

「あー。1枚のカードのコストの支払いにか? あぁ、良いと思うぞ」

『なるほど。そうなればかなり自由が増えるな』

「あ、そうだ。ゲイル。連続で使うのは止めよう。何が何だか分からなくなりそうだ」

『連続?』

「手札から待機所に置いたカードをそのまま除外して2コスト。みたいなの」

『あぁ。そうだな。それには私も賛成だ。あくまでそれぞれの場所から同時に選ぶことにしよう』

「助かるぜ」


 ケイスケは諸々の注意事項もパソコンのメモ帳に書き、大まかなルールを纏めてゆくのだった。



 そして、いよいよ基盤となるルールが出来た事で二人は本格的なカード作りを始める事になる。


「さて、じゃあいよいよカードの作成を始めていくか」

『うむ……とは言っても何をすれば良いんだ?』

「そうだなぁ。じゃあまずは方向性を決めるか」

『方向性?』

「そう。まったく何もない場所から山札っていうまとまりを作るのは難しいからな。まずは中心になるカードを作ろう」

『中心となるカードか。どの様なカードだろうか』

「んー。俺ら自身……というよりは、俺達が最も信頼する相棒……部下、副官? 辺りのイメージかな」

『ならば、私は私の知る限り最も偉大であった者に頼みたい』

「……英雄。みたいなモンか?」

『そうだ。遠い昔に地へ還ったが、それでも今なお我々の心に火を灯し続ける英雄だ』

「それは良い。なら、ゲイル。お前の戦場はその英雄に支えて貰えよ」

『ふふ。そうさせて貰おう』


 ケイスケはゲイルに笑いかけながら、その英雄の特徴をメモ帳にまとめてゆく。

 丁寧に。

 ゲイルの心に残る火を違えず、消さない様に。


 そして、何となくのイメージを掴んだケイスケは頷きながらペイントのアプリを開き、保存されていた画像を開く。


『それはなんだ?』

「昔、俺のダチが作ってくれたカードゲーム作る用の素材だ。これらを組み合わせると、どんなカードゲームも簡単に作れるって訳よ」

『ほー。便利な物だな』

「まぁなー。とは言っても宇宙パソコンの方がもっと便利に作れるかも知れないけどよ」

『それは当然だ。我々の方が諸君の科学技術よりも優れているからな』


 ゲイルはケイスケに誇らしげに語った後、ふと穏やかな空気を身に纏うと、フッと笑う。


『しかし、ケイスケ。お前が作るのであれば、ソレにはきっと勝てないだろう』

「そうなのか?」

『あぁ。手の動きや視線を見ていればよく分かる。これまで君が何を考え、どう作ってきたのか。その素材を作った人間はよく知っているのだろう。だからその絆……とでも言うのかな。それに勝てる物など宇宙のどこを探しても見つかりはしないさ』

「そうか。宇宙一か。悪くないな。そういうのもさ」


 ケイスケはパソコンを見たまま笑い、僅かな間止めていた手も再び動かして、カードを作る作業に戻る。

 ゲイルは、ケイスケの背中を見ながら、その素材を作った者について聞いてみたいと思ったが、止めた。

 何となくであるが、ケイスケの事をここまで理解して、寄り添っていた人間が、ここに居ないという事が引っ掛かったからだ。


 ケイスケの様な人間と共鳴する人間だ。

 宇宙から来た奴がどんな奴か見に行ってみようなんて考えて一緒に行動するのでは無いだろうか。


 ここで、ケイスケと共に。

 何を考えているのか分からない顔をしながら、一緒にゲームを作ろう。なんて言ったのでは無いだろうか。


 そんなありもしない妄想をして、ゲイルはふと世の虚しさに触れた様な気分になった。


 全ての物は生まれた以上、いつか終わりへ向かう。

 それは命も、道具も、世界も同じだ。

 ならば、同じ目線で世界を見ていた半身の様な存在が消えてしまった時、残された命はどうなるのだろうか。

 自暴自棄になって、命をどうでも良いと思ってしまうのでは無いだろうか。


 ケイスケは……。


『ケイスケ』

「んー? なんだ?」

『お前は、何故ここに来た』

「いや、勝負をしに来たって言っただろ?」


 パソコンからゲイルに視線を移し、不思議そうな顔をするケイスケにゲイルは何も言わず、静かにケイスケを見つめた。

 そんなゲイルの真っすぐな瞳に、ケイスケはフッと笑いながら言葉を返す。


「まぁ俺も、ゲイルがこんなに話の通じる奴だとは思わなかったよ」

『ケイスケ』

「別に勝負を蹴られたってどうでも良かった。ただ、な。俺はまだ、生きてるからさ。生きてる限り、生き続けてやろうって思っただけだよ」

『……?』

「まぁ、分かんねぇだろうけどさ。足掻いて、もがいて、その先にある何かを掴んだ時。俺は初めて生きてる。この世界に生きていたんだって言えると思うんだ。ただそれだけなんだよ」

『そうか』

「あぁ」

『ならば、お前はその『生』を掴んだ後はどうする』

「さてな。俺にも分からん。何せここから先は未体験ゾーンだ。生憎と、俺は人生で足掻いた事も藻掻いた事も無いもんでね」


 自信に溢れた表情でそう言い放つケイスケに、ゲイルはまた少しケイスケに触れた様な気持ちになりながら頷く。


「さて。そんな訳で、完成だ。まぁ名前は……良いのも思いつかねぇし。よそ様のカードゲームからお借りして、『パートナーカード』とでも名付けるかね」

『パートナーカードか』


 ケイスケがゲイルに見せた画面には、攻撃力と防御力。そしてカードごとの特徴だと言った効果の書かれたカードが映っていた。

 そして……


『この右上にあるのがコストか?』

「いんや。コイツはレベルだ」

『レベル? コストとは別の物か』

「そ。パートナーカードは特別なカードだからな。出すのにコストは要らねぇんだ。ただ出すのに時間が掛かる」

『ほう』

「俺とゲイルの手番を順に行う訳だが、俺の手番が来たら俺のパートナーカードが、ゲイルの手番になったらゲイルのパートナーカードが一個上のレベルに上がる。パートナーカードは山札に含めないで横に置いておけば分かりやすいだろ?」

『なるほどな』

「んで。これが最後に話す強いカードに付ける制限の話なんだが……戦場に居る全てのカードはパートナーカードのレベル以下のコストのカードしか攻撃が出来ない様にする」

『つまり、今画面にあるカードは5枚でレベルは5までだが……5コストのカードが攻撃出来る様になるのは最低でも5ターン後という事か』

「そういうコト。だから強いカードばっかり入れてても、厳しいかもよ? って話な訳だ」


 ケイスケはクククと笑いながら、次なるカードを作るべく画面に向かってゆくのだった。

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