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第14話『僅かな勝ち筋への光』

 遂にケイスケのパートナーカードがレベル5となり、全てのカードが解禁された。

 後は、山札を削り切るだけなのだが……ケイスケは手札を見ながら考え込んでいた。


 ゲイルの盤面にはパートナーカードを守る事が出来るカードは3枚あり、上手く受け流されてしまえば何も出来ないまま消耗する事になってしまうだろう。

 故にケイスケはこれだけ追い詰めた状況であっても冷静に思考を巡らせるのだった。


 現在

 ゲイルの残り山札は17枚。

 ケイスケの残り山札は23枚。


 ケイスケの手札は現在4枚であり、ゲイルは7枚だ。

 無理に攻めれば、ゲイルの手札に残された切り札によって容易く敗北してしまうだろう。


 故にケイスケは慎重に事を進めるのだった。

 まずは、様子見から始める。


「俺は、パートナーカードで、ゲイルのパートナーカードに向かって攻撃」


 ケイスケのパートナーカード『ルーク』は装備カードを待機所へ送る事で、ゲイルのパートナーカードの防御を超え、残りの山札を大幅に削る事が出来る。

 しかし、それをゲイルは嫌がるだろう。

 ならばここは、サイドのカードで防御に出るはず……であるが、ゲイルは静かに頷くだけだった。


「良いだろう」

「……防御カードは選択しないつもりか?」

「あぁ。無論だ」


 ジッと静かな瞳で見つめ返してくるゲイルに、ケイスケは悩んだ。

 ここで効果を使えば相当枚数削る事が出来、勝負を決める決定打となるだろう。

 もし、数値を上昇させる事が切っ掛けとなり発動するカードがあった場合、仕留めきる事が出来なくなる上に、次の攻撃手段を失ってしまう。

 そうなれば、レベルが5となり、全てが満ち足りたゲイルによってケイスケの盤面は突き崩されてしまうだろう。


「……」

「どうするんだ。ケイスケ。効果は使わないのか?」

「っ」


 挑発する様に、効果を使えと言葉で、視線で訴えてくるゲイルに、ケイスケは瞳を閉じながら小さく息を吐いた。

 深く、深く思考する。

 ここから繋がる勝ち筋を、思考する。

 そして、下した決断は……。


「いや、使わないでおこう。貫通は4点だ。ゲイル」

「そうか。では4枚のカードを待機所へ送るぞ」

「あぁ」


 ケイスケの決断に、ゲイルは心の中でギリギリの賭けに成功したと喜んでいた。

 もし効果を使われていれば負けていた。

 無論、効果を打ち消す事は出来るが、それを使えば最終的に押しつぶされて敗北していたのだ。


 まさに薄氷の道を歩んだ形になる。

 が、ここで得た利は非常に大きい。


 何故なら、ケイスケの攻撃は2回しか残されておらず、上手く受けきれば攻撃を受け流す事が可能だからだ。

 そしてそれはケイスケもよく理解しており、ケイスケは小さく笑みを浮かべたまま手番の終了を宣言するのだった。


「では、私の手番だな」


 ゲイルはカードを2枚引き、パートナーカードのレベルを5に上げる。

 待ち望んでいた。

 この瞬間を、どれだけ待っていただろう。


 現在

 ゲイルの残り山札は11枚。

 ケイスケの残り山札は23枚。


 本当にギリギリの命を繋いだ形である。

 しかし、この1ターンがあれば届く。それは確かだった。


「では行くぞ! ケイスケ!」

「あぁ」

「まずは『マルク・ヴェイン・ガーランド』で、『本屋の娘 タマキ』に攻撃」

「何も対応はない」

「ではそのまま待機所へ送って貰おうか」

「あぁ、そしてこの時、タマキの効果発動。俺は山札からカードを1枚引く」


 アッサリと一つの戦闘が終わり、防御のカードを1枚しか出していなかったケイスケはこれで防御キャラクターが居なくなってしまう。


「では次に、『シェリ』でパートナーカードに攻撃。この瞬間『シェリ』の効果発動。このカードは私の場のカードの合計コスト分だけ攻撃力が上昇する。合計で25点だ!」

「それを受ける訳にはいかないな。俺は手札の『守護者 オーロ』の効果を発動。俺の場に『聖女』を名称に含むカードが居る時、このカードはコストを支払わずに後列に登場出来る。そして、この時このカードは防御カードとして指定する事が出来る」

「だが、耐えられないだろう。そのまま待機所へ送れ」

「あぁ」


 ゲイルの猛攻で、ケイスケの盤面は次から次へと剝がされてゆく。

 今までの時間が嘘であったかの様に、ゲイルとケイスケの有利不利はクルクルと入れ替わっているのだった。


 そして、当然ゲイルはこれで止まらず、パートナーカードの効果を使う。


「パートナーカード! 『英雄ゲイル』の効果発動! このカードを行動済み状態にする事で、同じ銀河のカードを1枚選び未行動状態にする事が出来る。私が選ぶのは当然、『シェリ』だ!」

「だろうな」

「『シェリ』で更に攻撃! パートナーカードを選択だ!」

「……受けよう」

「では超過ダメージ12点のダメージを受けて貰おうか!」


 ゲイルの宣言にケイスケは大人しく山札のカードを待機所へ送っていく。

 これで、ケイスケの山札は残り、11枚となり、両者の山札枚数が並ぶ。

 が、まだゲイルの猛攻は止まっていなかった。


「私は手札からイベントカード『立ち上がる意志』発動。コストとして手札を2枚待機所へ送り、更に手札から『シェリ』のカードを待機所へ送る事で、私の場の同名カードを1枚選び、未行動状態にする事が出来る!」

「その効果に対応だ。俺は手札のイベントカードを発動。待機所のカードを5枚除外し、『蘇る魂』を発動! 対応は……あるか!?」

「『銀河連合の管理官 ガーラ』の効果発動! その効果は無効だ!」

「くっ」

「では受けろ! 『シェリ』で追加攻撃!!」

「俺は手札のイベントカード『最終防衛ライン』を除外して発動。山札の残り枚数以上のダメージを受ける時、その数値を半分にする。この効果は1ゲームに1回だけ使用する事が出来る。俺が受けるダメージは6点だ」

「……仕留めきれなかったか。手番終了だ」


 これで

 ゲイルの残り山札は11枚。

 ケイスケの残り山札は5枚。


 ここからの逆転など不可能だと、ゲイルの仲間たちも確信した。

 だが、ケイスケはまだ諦めてなどいない。

 そしてゲイルもそれをよく理解していた。


 そう。ケイスケはまだ何も負けていない。まだ逆転の為の手は残っているのだ。

 その為に、ケイスケは待機所へと手を伸ばし、そのカードの効果を使った。


「手番終了時。俺は待機所のイベントカード『蘇る魂』の効果……発動! 待機所のこのカードは手番終了時のみ使用する事が出来る」

「……きたか」

「このカードと待機所のカードを5枚除外する事で、待機所のカードを1枚選び、俺の場にコストを支払わずに登場させる事が出来る! 俺が選ぶカードは」

「当然」

「『獄炎竜 ファイアブラスター』だ!! 登場時効果発動!」

「私の山札を3枚待機所へ送る」

「そして、待機所の『水激竜 アクアハザード』の効果。『獄炎竜 ファイアブラスター』を待機所へ送り、『水激竜 アクアハザード』を俺の場に登場する。『獄炎竜 ファイアブラスター』の効果、発動! 山札を3枚削ってもらおうか」

「……あぁ」


 既にこのターン『銀河連合の管理官 ガーラ』の効果を使用しているゲイルに、一連の流れを止める事は出来ない。

 そして、これで再び二人の山札の枚数は完全に一致した。


 ゲイルの残り山札は5枚。

 ケイスケの残り山札は5枚。


「これで勝負の行方は分からなくなったな」

「……あぁ。そうだな」

「次の俺のターン。お前を仕留めきれなければ、俺は守り切る事が出来ず敗北する」

「だが、逆に、このターンさえ守り切れれば私の勝ちだ」


 誰かのゴクリと唾を飲み込む音が静かな部屋の中で響き渡る。

 そして、前のめりになりながら皆が見守る中……遂にケイスケの手番が始まろうとしていた。


「俺のターン……!!」


 その結果や如何に――!

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