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第12話『マグマの様な猛攻』

 静かに始まったケイスケとゲイルの戦いは、サイコロでの戦いと、序盤から堅実かつ大胆に戦うケイスケによって大きくケイスケに傾いた物であった。

 が、続くゲイルの手番で、僅かな運を掴んだ事により、ケイスケに傾いた形勢が少しずつゲイルに傾いてゆくのだった。


 現在。

 ゲイルの残り山札は29枚。

 ケイスケの残り山札は38枚。


 ゲイルは自らの手札10枚を見ながら考える。

 果たしてどこまで展開するべきか、と。


 現状、ゲイルの待機所には10枚のカードがあり、重いコストのカードであっても無理なく登場させる事は可能だ。

 しかし、まだパートナーカードのレベルが2である以上、攻撃は2コスト以下のカードしか出来ず、ケイスケの場には防御用のカードも出されている為、生半可な攻撃では通らないだろう。

 それに、ここで無理して攻撃した所で折角生まれたコストを無駄に消費するだけであり、大きなダメージには繋がらない。

 動くべきタイミングはここじゃない。


 そう判断したゲイルは後の布石を作りつつも、今はまず防御を固める事にした。


「私は、待機所の黄色のカードを5枚除外し、『マルク・ヴェイン・ガーランド』を前列に登場させる」

「ほぅ?」

「まだレベルは2であり攻撃は出来ないが、このカードは前列に居ながら後列のカードを守る事が出来る優秀なカードだ」

「そうだな」

「そして、更に後列に『天使ましろ』を登場。このカードの効果により山札から1枚カードを引く」

「……ふむ」

「更に手札を2枚待機所に置き、待機所の『トレーニング器具』の効果を発動。このカードをパートナーカードに装備。このカードは攻撃力を0にする代わりに、元々の攻撃力の数値だけ防御力を高める事が出来るカードだ」

「だいぶ守りを固くしてきたな」

「今はまだ焦る時じゃない。私はこれで終了だ」


 ゲイルは落ち着きを取り戻した顔でケイスケに手番を渡し、深く息を吐く。

 焦りを捨て、ただ真っすぐに今目の前にある壁をジッと見つめた。


 今ここに来て、ゲイルは一つの失敗を悔いていた。

 それは賭けの事だ。


 かつてケイスケと賭けについて話をした時、ゲイルはケイスケの覚悟を本能的に感じ、自らも賭けに乗る事を宣言した。

 だが、今、ここに来て思う。


 ケイスケが賭けの対象を増やすと言った時、拒絶するべきであったと。


 現在、ケイスケが背負っている物は多い。

 地球人の命は元より、自らの命や存在。

 ケイスケを成す全てを賭けている。


 だが、ゲイルは所詮己だけだ。諦め、折れる事だって出来る。

 その差は余りにも大きかった。と、ゲイルはケイスケを見ながら思うのだった。


「俺の手番だ。2枚カードを引く」


 ケイスケは一度山札からテーブルの上に2枚のカードを移動させてから、深く息を吐き2枚のカードを手札に加える。

 この動きは、ケイスケがより深く集中している時に行う事であり、ゲイルはケイスケに意識を向けながら自身の手札と場を交互に見るのだった。


「パートナーカードをレベルアップ。そして……サバクゴムラトカゲでパートナーカードに攻撃。こちらの攻撃力は4。そちらのパートナーカードの防御力も4。互いに何も無い戦闘だな」

「……」

「どうする?」

「私はマルク・ヴェイン・ガーランドで防御する」

「……そうか。では俺は何もない」

「私も同じだ」

「まぁ、そうだろうな。じゃあパートナーカードでお前のパートナーカードに攻撃」

「その攻撃は『天使ましろ』で受けよう」

「ならば俺は何もない」

「そうか。では、『天使ましろ』はこのまま待機所へ送らせてもらおう。そしてこの時、待機所のカードをランダムに1枚山札の下に置く」

「まぁ、そうなるだろうな」


 攻撃が全てかわされたと言うのに、焦った様子もなくケイスケは頷き手札に視線をサッと走らせると手札から1枚のカードを取り出し、それをゲイルに見せた。


「俺は手札の『立花綾』を待機所に置き、効果発動。手札のカードを1枚選び、そのカードと同じ種類のカードを2枚手札に加える。俺は手札の『立花朝陽』のカードを選び、待機所へ置く。そして山札から『夢咲陽菜』のカードを手札に加える」

「……あぁ」

「そして、『夢咲陽菜』の効果を発動。2枚待機所へ置き、2枚引く」

「良いだろう」

「待機所の『夢咲陽菜』の効果発動。このカードと待機所のカードを除外する事で3コスト発生……」

「……」

「手札から『獄炎竜 ファイアブラスター』を後列に登場」

「なっ!? 赤のカードだと!?」

「あぁ。その通りだ」


 見えていたカードが少なかったとは言え、これまで一切見せていなかった赤のカードにゲイルは動揺し、叫んだ。

 しかし、ケイスケはあくまで冷静に、ゲイルの場を見つめる。


「『銀河連合の管理官 ガーラ』の効果は使わないのか?」

「……あぁ」

「そうか。ならば、お前の山札のカードを3枚上から待機所へ置いて貰おうか」

「良いだろう」

「そして、一応伝えておくが、ファイアブラスターは場を離れた時にも3点のダメージを与える。気を付けるんだな」

「分かっているさ」


 ゲイルの反応を見ながら、ケイスケは待機所に置かれた『立花綾』のカードを触り、効果を発動する。


「俺は待機所の『立花綾』を除外し、除外置場の『夢咲陽菜』を手札に加える」

「……止まらないな」

「止まっている余裕は無いぜ。ゲイル。そして俺はサバクゴムラトカゲの効果を発動。待機所の青のカードを除外し、このカードを待機所へ置き。山札からサバクゴムラオオトカゲを場に置く。そして……」

「……まだ動くのか」

「俺は手札を1枚待機所に置き、任意の色を1コスト。『幼き聖女 イザベラ』を前列に登場。これで手番終了だ」


 手札の消費は最小限に、盤面を更に強化する。

 そんなケイスケの動きにゲイルは深く息を吐きながら、自らの手番を始めるのだった。


「では私の手番だ。まずは2枚カードを引く。そしてパートナーカードのレベルアップ。これでレベル3だな。レベルアップ時効果。山札の上のカードを公開……イベントカードは登場出来ない為、そのまま手札に加える」

「あぁ」

「……すまない。少し考える」

「構わない……が、俺も少し飲み物を飲ませて貰うぞ」

「あぁ。すまない。私にもくれ」


 二人はすっかり乾いてしまった喉を潤しながら、再び舞台へと戻り、自分の状況。相手の思考。

 これから先の未来について考え続けるのだった。

 思考を止めればその瞬間に敗北する。

 それだけはゲイルもハッキリと分かっている所であった。


 ケイスケの手札は常に7枚を維持している。何が出てくるのか、まだ全てが分かった訳ではないのだ。

 ゲイルはゴクリと唾を飲み込み、深く集中した。


 そして、長い思考の中で、コレと閃いた場面を展開してゆくのだった。


「私は……パートナーカードの効果を使用する」

「ふむ」

「このカードは手札のカードを1枚まで選び、私の場にコストを支払わずに登場させる事が出来る」

「良いだろう」

「私が選択するのは、『シェリ』黄色5コストのカードだ」

「前列に黄色5コストが2枚。ギリギリまで攻撃をしないつもりか?」

「あぁ。今はまだ耐える時だ!」

「良いだろう。ならばお前が状況を揃える前に削り切ってやる」

「やれるものなら、やって……」

「俺は手札の『水激竜 アクアハザード』の効果発動!」

「っ!?」

「俺の場の、3コスト以上のキャラクターカードを1枚を待機所に置き、コストを支払わずにこのカードを登場する事が出来る!」

「何……? この状況で、新たなカードを登場する? しかし、お前の場は……まさか!!」

「俺が待機所に置くカードは、『獄炎竜 ファイアブラスター』」

「……!」

「このカードの効果はお前もよく知ってるよな?」

「場を離れた時に、3点のダメージか……!」

「そういう事だ。山札の上から3枚カードを待機所に置きな!」

「くっ……良いだろう」

「そして、更に。俺は手札のイベントカード『再臨する悪夢』を発動。俺の場の『水激竜 アクアハザード』を待機所に置く事で、そのコスト以外の、そのカードのコスト以下のカードを待機所から手札に加える。『水激竜 アクアハザード』のコストは4! 俺が選択するのは『獄炎竜 ファイアブラスター』だ」

「厄介な」

「一応教えてやるが、アクアハザードは待機所からも場のカードを待機所に送り登場する効果を持っている。次のターンも同じ事をしてやろう。お前の山札が無くなるまでな!」


 ケイスケはニヤリと笑い、ゲイルは悔し気に盤面を睨みつけるのだった。


 ゲイルの残り山札は21枚。

 ケイスケの残り山札は30枚。

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