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第1話『宇宙人|襲来《しゅうらい》!』

[ 2055年1月1日 ]

 地球は異星人から侵略を受けていた!


 全ての始まりは先進国同士で競う様に行われた宇宙開発と、外宇宙へと放たれた過剰なまでの探索衛星である。

 何も変わらぬ日常が明日も来ると信じていた者達は、突如として現れた空を覆う宇宙船の群れと、代表として降りてきた宇宙人に震えあがった。


『我々は銀河連合議会より派遣された辺境調査団』


 言葉ではなく、頭に直接響くような声で届けられた意思は、地球に住む全ての人間に向けられていた。


『我々の要求は二つ』

『一つは宇宙にゴミを捨てる様な行為を止める事』

『そして、もう一つは銀河連合への参加である』

『我々は諸君よりも優れた科学技術を持つ。故に抵抗は無意味だ』

『大人しく銀河連合へと参加する意思を示せば、力による支配はしないと約束しよう』


 その声から悪意は感じられず、人々はひとまず安心出来るかと息を吐いた。

 しかし、直後聞こえてきた声に再び震えあがる事になる。


『なお、銀河連合への参加は個人単位で行ってもらうが、どうやらこの星は随分と数が多いようだ』

『適度な所で切り上げる』

『私がこの星を離れるまでに参加の意思を示さなかった者は、参加する意思なしという事で処分させて貰う』


 その一方的な言葉に地球に住まう人々は様々な感情に包まれた。

 激しい感情は暴走を生み、世界中の人々は混乱の中、それぞれが正義と信じた事を行ってゆくのだった。



[ 2055年1月4日 ]

 異星人が地球にやってきて三日程経ったが、銀河連合への参加人数は半数どころか一割にも達していない。

 それどころか、世界中で暴動が起きて銀河連合への参加どころではない状況だ。

 当然と言えば当然だが、世界は今、混乱の中にあった。

 そんな中、宇宙人と対話がしたいという青年が現れ、彼は宇宙にある母艦へと案内された。


「どーも。少し話をしたいんだが、良いかい?」

『お前は?』

「俺はケイスケ。この地球に住むただの人間さ」

『そうか。ケイスケ。私はゲイルだ』

「よろしく。ゲイル。いや、〝さん〟か〝様〟でも付けた方が良いか?」

『必要ない。お前が銀河連合へ参加すれば立場は同じだ』

「そうかい。俺はまだ銀河連合への参加はして無いから立場は違うと思うけど……まぁ、壁があるみたいで嫌だからゲイルって呼ばせて貰うわ」

『良いだろう』


 男は酷く自然な仕草でゲイルが用意した椅子へ向かい、丸テーブルを挟んだゲイルの向かい側に座った。


『それで? 私に話とは何かな? ケイスケ』

「あー。そうな。スマン。最初に謝っておくわ。実は話をしに来たっていうのは嘘なんだ」

『嘘?』

「そ。嘘。ホントの事を言ったら断られるかなと思ってさ。気を悪くしたか?」

『……いや、少々驚いたのは確かだが、不快な感情は無い。むしろ少し君に興味が出てきた』

「へぇ? そうなの?」

『あぁ。今日まで私に会いに来た者達は皆、私に怯えていたからな。ここまで正面から真っすぐに本音を喋っている人間は面白い』

「なるほど。まぁ、分かると言えば分かるけどね」


 ケイスケはフッと笑いながら、人間とは大きく離れた容姿を持つゲイルを見つめた。

 頭は異様に大きく、タコの様にいくつもの手足が生えて、自由に動き回っている姿は非常に奇妙だ。

 その上、言葉を口ではなく頭に直接送りつけてくるのだから、受け入れがたいのは当然の様に思える。


「それで、だ。俺がここに来たのは二つ目的があってな」

『聞こうか』

「一つはゲイルと友達になる事。そして、もう一つは……ゲイルと賭けをする為に来たんだ」

『賭け?』

「そう。賭けさ」


 ケイスケは椅子に深くもたれかかりながら、両手を組んでゲイルを見据える。

 その瞳に恐れはなく、姿も酷く自然で落ち着いていた。

 真実、友人と語らっている様に。


「これから俺と勝負をして、俺が勝ったら地球に住む人間全てを銀河連合へ参加させて欲しい」

『……ほぅ?』

「無論ゲイルが何かをする必要はない。全員が参加を終えるまでちょっとばかし待ってて欲しいってだけだ」

『なるほどな』


 ケイスケの言葉にゲイルは顔かどうか分からない物を歪ませて笑顔の様な物を作った。

 しかし、その姿は子供が見れば泣いてしまう様な歪な物で、おそらく大人でさえも顔を逸らしてしまう物だろう。

 だが、ケイスケは笑顔のまま、頷くだけだ。


「どうかな」

『どうか。と聞かれてもな。そもそもどんな勝負をするんだ? お前が一方的に有利な勝負であれば、賭けという名の挑発行為だが』

「あぁ、その点は心配ない」


 ケイスケは軽く笑うと、持ってきた鞄からいくつかの箱を取り出した。


『これは?』

「ゲームって奴さ。地球が生んだ娯楽だな」

『ほぅ?』


 ゲイルはテーブルの上に置かれた大小様々な箱を手に取り、興味深そうに中身を取り出したり、ケイスケに遊び方の説明を聞いては頷く。

 その瞳は興味深そうに輝いており、ケイスケの私物だからか、丁寧に扱っていた。


「ゲームって奴は基本的に平等さ。だから、これで勝負すれば、生まれながらの差で勝負がつく事は無いってワケだ」

『なるほどな。確かに、運動神経やらで決着がつく事は無いだろう』

「……」

『だが、大事な事を忘れているんじゃないか? ケイスケ』


 ゲイルが試すようにケイスケを見ながら発した言葉に、ケイスケはフッと笑いながら賞賛の意味を込めて手を叩く。

 純粋に、見下す様な感情は一切込めず、ただ賞賛のみを送った。


「それでこそ、君にゲームを提案した意味があったよ」

『……』

「ご明察の通り、ゲームで勝負をする場合、俺が圧倒的に有利だ。何故なら、俺はゲームの情報という強い武器を持っているからな」

『正直だな』

「それはそうさ。自分にだけ有利な状況で戦って何が面白い? そんなもの賭けでも何でもない。ただの詐欺さ。勝負というのは常に対等でなければいけない」

『だが、それでも君は、私にゲームでの勝負を提案した。君だけが勝ち方を知っている物を』


 責める様に放たれたゲイルの言葉に、ケイスケは笑顔のまま手を横に振った。


「その点に関しては誤解だ。言い訳をさせて欲しい」

『聞こうか』

「俺は確かにゲームでの勝負を提案したが、ここにある既存のゲームを使うつもりは無いんだ。これはあくまで、ゲームという物を説明する為の道具でしかない」

『では、君は何を用意するのかな』


 ゲイルの言葉にケイスケは今までで一番楽しそうな笑顔を浮かべると、明るく弾んだ声でゲイルに一つの提案をするのだった。


「ゲイル。俺は、君との勝負の為に、君と一つのゲームを作り上げようと思う」

『……』

「ルールの構築から、全ての要素を君と共に作り上げる。無論ゲームの知識は俺の方が多いから適宜、君には戦略やら考え方を教えてゆくつもりだ」

『……ふはっ、君は、それを本気で言っているのか?』

「無論だ。君との友情に誓って嘘は言わない」

『ハハハ! 友情! 友情か! まだ出会ってそれほど時間は経っていないぞ。友情が我らの間にあると、本気で君は思っているのか』

「あぁ」

『ハハハハハ!! これは傑作だ。まさか君の様な正気を失った人間が居るとはな!』

「そんなに笑わなくても良いだろう? 俺は今、異星人の友達が出来て喜んでいるんだぜ?」

『まったく。本当に愉快な男だな。君は……』

「そうかい?」

『まるで自覚なしか。まぁ良いだろう。君のその愉快さに免じて、この勝負乗ろうじゃないか!』

「助かるぜ」

『ただし! 少しでも私が不正をしていると感じた時には、拷問をして、苦しませてから殺す。良いな?』

「望むところだ」

『ふっ……やはり君は正気じゃ無いんだな。ではよろしく頼むよ。ケイスケ』

「あぁ。こちらこそだ。ゲイル」


 それからケイスケは準備の為に一度家に帰ると言い、数日後に大荷物を持ってゲイルの所に戻って来た。

 背負っていたリュックからはパソコンなど様々な道具が出てきて、それを広げてゆく。


『今度は何をするつもりだ? ケイスケ』

「前も言っただろ? ゲームを作るんだよ」

『ゲームを作るのに、これらの機器が必要なのか。ふむ? 随分と原始的だが、私の物を貸してやろうか?』

「あー。まぁ、宇宙的なパソコンにも興味はあるが、ひとまず俺の奴を使うよ。慣れてる方が作業もしやすいしな。これでやらせてくれ」

『まぁ、君がそういうのなら、構わない』


 ゲイルは少しワクワクとした様な表情で、ケイスケの使う古びたパソコンを見つめた。

 そして、ケイスケはまずメモ帳のプログラムを起動すると、一番上にタイトルを記載するのだった。


【誰もが楽しめて、平等で、シンプルながら奥深いカードゲーム】と。


「という訳で、コイツを作っていこうと思う」

『おー』


 ケイスケが胸を張りながら見せた画面にゲイルは手を叩き、やや離れた場所からケイスケ達の動向を見守っていたゲイルの仲間も同様に手を叩くのだった。


 こうして、ケイスケとゲイルのゲーム制作は始まったのだった。

こちらのカードゲームに関する活動は他にも行っております。

良ければ見て行って下さい。


https://lit.link/ForestToufu

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