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第二話 地図にない場所

 相変わらず昼夜逆転している明里だったが、夕方、楽しい気持ちで目が覚めた。


「今日もあのコンビニ行こう」


 コンビニに行くことが楽しみなんて。世間の基準からしたら、だいぶショボいかもしれないが「もし都市伝説ブログのような事が本当だとしたら?」と思うと胸が躍ってきた。


 思えばこんな感覚は久しぶり。トラウマで泥沼の中にいるような気分だったが、今は少し心もさっぱりしていた。


 明里はベッドから起き上がると、スマートフォンで改めてINRIマートについて検索した。前に調べた時は、何か情報を見落としていたのかもしれない。


「ダメだ、やっぱりあのコンビニの情報が出てこない」


 やはりネットではあのコンビニについて何の情報もなかった。


「もしかして私のスマフォ、なんか故障でもしてる?」


 そう思ったが、特に異常はない。


 もっとも複雑な機器的トラブルも考えられる。着替え、財布とスマフォ、鍵を持つと、駅に向かった。隣町の駅前にはネットカフェがあった。をこで検索したら何かわかるかもしれない。


 一時間だけ個部屋を借り、パソコンでインターネットをする。


「ダメだ、ココにも情報ない」


 つまり、機器的なトラブルでも何にもなかった模様。相変わらずなぜインターネット上でINRIマートの情報がないか疑問だったが、地図サイトであのコンビニの住所を改めてみたが、そこは空き地。


 さらにその住所で調べると、昔ここに稲荷神社があった事がわかった。残念ながら、戦前に廃神社となり、その後に空襲の被害も大きく、取り壊され、現在は空き地という事だけはわかった。土地の所有者もわからない。結局、ネットカフェでもろくな情報がつかめず、漫画を読み、ドリンクバーやトーストなどを楽しんでいたら、あっという間に五時間以上も居座ってしまった。気づけばもう夜。


「まあ、ネットカフェも面白かったけど、あのコンビニ行こうか」


 当初の目的を思い出す。元々は稲荷神社があった土地にあるのも気になる。やはり、都市伝説ブログが言うような土地?


 そして昨日のように県道沿いの道を歩きながら、あのコンビニへ向かう。


 夜だったが、今日は昨日より早い時間の為か、トラックなど車の通りも多い。


「あれ? 空き地?」


 しかし、地図通りに昨日と同じ場所に行ったのに、なぜか辿り着けない。目の前には空き地が広がっているだけで、コンビニのコの字もない雰囲気だった。


「一体どういう事?」


 さっぱり分からない。もしかしたら、昨日の事は全部幻覚だったのだろうか。その割にはツナマヨおにぎりの味や海苔の感覚などがリアルに思い出せる。あの稲荷晴人という店員の金色の髪や手の甲の傷跡なども。


 やはり狐に化かされていたのだろうか。明里は首を傾げるが、さっぱり分からない。


 翌日。


 そんな事もあり、ますます探究心がそそられていた。


 今日はあのコンビニ自体を調べるのではなく、都市伝説ブログを読み漁る。正直、この世への被害妄想のような陰謀論ティストな都市伝説は興味がないが、この世の不思議を純粋に探究している都市伝説ブログはちょっと面白い。


 特に「この世の不思議夜話」という都市伝説ブログは面白く、ついつい見てしまった。特に異世界やパラレルワールドに行った人へのインタビュー記事が面白い。


 そんな別世界に行った者へのインタビューを読みながら、とある共通点に気づく。どの人も現世で虐められたり、失業したり、辛い経験をした時に、まるで逃げ場所のような異界が現れるという事だった。


「もしかして、ネットカフェで十分楽しんで後にコンビニに行こうとしたから、行けなかった?」


 そんな気がした。確かに昨日は、一昨日ほど気分が沈んでいなかった。


「まさか。まさか、そんな事って……。あのコンビニ、もしかして異界にある?」


 そんなバカな話はないと思いながらも、今夜もあの県道沿いの道を歩くと……。


 あっけなくコンビニにたどり着いてしまった。


 目に前には夜闇の中でぽっかりと灯りがついたようなコンビニ、INRIマート。


「いや、まさか」


 おかしな事もあるものだ。地図にない場所にたどり着いてしまった。


 まさか自分だけが見ている幻覚だろうか。こんな話を医者にしたら、間違いなく、入院させられるだろう。薬漬けになるかもしれないが。


 明里の眉間の皺は深くなる。これは単なる自分の妄想、幻覚、夢のような悪寒がしてきた。職場でのトラウマが消えず、単なる現実逃避を楽しんでいるのだろうか。


 そう思った時だった。明里の目の前を一人の老婆が通り抜け、コンビニにが入っていった。老婆が入るの同時に、賑やかな音楽も響く。コンビニに入店した証のように。


 別の人間もこのコンビニの中に入店したのだ。


「たぶん、幻覚ではない?」


 首を傾げつつも、明里も老婆の後に続く。中に入ると、同じように音楽が響いていた。

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