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番外編短編・おでん

 学校という場所は矛盾した場所だ。


 翔太は小学六年生。たった今、国語のテストが返ってきた。「この小説の作者の意図は何でしょう?」という質問がバツだったが、先生はエスパーだろうか?


「先生、小説家の頭の中が見えるんですか?」


 そんな質問をしただけで怒られた。


 道徳の授業ではLGBTの人を差別やめよう、多様性と聞いたが、これって何だ? ちょっと変わった質問もダメ?


 翔太はこのダブルバインドにモヤモヤ。


 それにこういった空気の読めない発言を繰り返す翔太は、クラスで浮き、地味ないじめにもあっていた。


 最近は「いじめはダメ」という共通認識はあるあらしい。なので手口はより巧妙になっている模様。


「あーあ、学校なんてやめたいよ。登校拒否している人は立派じゃないかね?」


 そんな事を呟きながら、学校からの帰り道を歩く。今日はランドセルがやけに重く感じるが。


 県道沿いの道は、 夕焼けに染まり、田舎らしい呑気な風景に変わっていたが。


「は? コンビニ? こんな所にコンビニなんてあった?」


 どうやら個人経営のコンビニらしい。INRIマートというが、見た事ない。新しく出来たのだろうか。


 もう季節は秋なので、おでんののぼりも立っている。派手なデザインののぼりは風に揺れていたが、それを見ていたらお腹が減ってきた。


 寄り道する事は校則で禁止だったが、まあ、いいか。どうせ学校なんてダブルバインドと答えが一個しかない場所。校則をちょっとやぶるぐらいは気にしない。


 店に入ると、おでんの出汁の匂い。個人経営のコンビニに信頼はなかったが、この匂いはいい。


 さっしくレジ前にあるおでんのケースを眺める。透明なつゆに大根、肉団子、糸こんにゃく、

 はんぺんとさまざまな具がある。


 どれも一個百円だった。


「う、うまそう」


 正直、全部食べたいぐらいだが、手持ちは百円だけだ。


「今日からおでんはじめました。ぜひ!」


 派手な金髪の店員が来て営業トークまでしてきた。


「どれがおすすめ? いや、どれも美味しそうで」


 この店員は稲荷晴人という名前らしい。制服に名前が刺繍されていた。


「どれもおすすめですよ!」

「そ、そう?」


 そんな事言われても迷ってしまう。


「お客様、自分で答えを出しましょう。きっとそれが一番です」

「間違っていたら?」

「それでも自分で見つけた答えだったら、後悔はありません。よく、考えて」


 晴人は営業スマイルを崩さなかったが、何か気づきを与えてくれているような……。


 国語のテストも、学校という場所の矛盾も、もしかしたら自分で見つける答えがあるのかもしれない。


 もちろん、このおでんも。


 翔太は散々悩み、大根のおでんを買った。


「ありがとうございます。またお越しくださいませ」


 もしかしたら、はんぺんや肉団子の方が正解だったかもしれないが、自分で決めたのなら、後悔はないはず。

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