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異界コンビニふしぎ夜話〜地図にない場所のINRIマート〜  作者: 地野千塩


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第十一話 オフ会と答えの行方

 怖いもの見たさ。


 今の明里はそんな言葉を思い出していた。今、明里は隣町のオシャレなバーにいた。


 こんな場所に立ち入るのも初めて。心には大邑を召喚し、ドキドキしながら大冒険中といったところか。


 バーには主婦やOLらしき女性が多い。あとはフリーターやミュージシャンを目指しているように雰囲気の男がいたが、今日は貸切りでとあるオフ会が開かれていた。


 あの都市伝説ブロガーのオフ会だった。ちょうど明里の住む土地の近くで開催されると知り、勢いで申し込んだ。


 前半はオカルト雑誌の編集者とブロガーとのトークショー。後半はダラダラと酒を飲みつつ、参加者達との雑談といったプログラムだった。


 薄暗いバーの雰囲気と都市伝説という組み合わせがマッチし、バーの中は想像以上に盛り上がっていた。


 人が多い場所もオシャレなところも居心地は良くはばかったが、トークショーに引き込まれて、バーの酒も美味しい。


 ほろ酔い気分でカウンター席で酒を飲んでいた。といってもあんまり飲みすぎるのも良くないので、バーテンダーにノンアルコールのカクテルをオーダーした。


「お、シンデレラか。ノンアルだが美味しいんだよな」


 その隣のブロガーがやって来た。名前は悠人。本名かどうかは不明だが、彼はこの名前で活動していた。


 年齢は四十歳ぐらいだろいか。シンプルな眼鏡をかけ、服装もシンプル。白シャツにジーンズ姿なので、都市伝説ブロガーだとは容姿からは分からないだろう。きちんとスーツを着たらエリートサラリーマンにも見えるかもしれない。顔立ちもそこそこ整っていた。


「今日は来てくれてありがとう」

「いえ」

「でも。珍しいね。学校の先生みたいな雰囲気の君が都市伝説?」

「すごい。私、前職は学校の教師だったんです」


 驚いた。悠人は明里のしていた仕事を言い当ててしまった。都市伝説ブロガーといっても無能ではなさそう。少なくとも観察眼はあるようだった。


「学校は辞めて正解だよ。子供の個性や才能を潰してナンボだしな。働く方もそんな感じさ」


 明里は前職について何も言っていないはずだが、あまり良い思い出がない事見抜いていた。その上で励ましの言葉も言えるなんて、何者?


 もしかしたら悠人ならあのコンビニの正体も分かるかもしれない。


 明里は悠人のブログの内容も誉めつつ、あのコンビニについて話してみた。


 幸い、他のオフ会参加者がオカルト雑誌編集者がやっているマジックに夢中だった。おかげで明里は悠人に全て話す事が出来た。


「なるほど。それは神隠しかね。いや、王道的な日ユ同祖論か。いやいや、異世界へのパラレルワールドかい?」


 明里の話を聞いた悠人は混乱し始めた。様々な都市伝説に詳しい悠人でさえの、この謎には頭を悩ませているようだ。


 黙って話を聞いていた明里だが、こうして自分の話を受け入れてくれた事は、嬉しい。ノンアルコールのカクテルを飲みながら、口元は緩んだしまっていた。


 こんな荒唐無稽な話は普通信じない。それだけにこの界隈が懐が広いというか、器が広いようだ。


 明里は勇気をだしてこのオフ会に参加してよかったと思う。確かに休職中の昼夜逆転の自堕落生活から一歩踏み出せたのかもしれない。


 心の中に召喚した大邑。これは良いお守りになっているみたい。


「携挙の可能性もあるかね?」


 頭を抱えれいた悠人はそんな言葉を呟く。


「携挙?」


 どこかで聞いたことがある。すぐに思い出した。あのコンビニで購入した漫画にそんな内容があったと思い出す。


 確か終末の大災害の前、キリスト教徒だけ天に引き上げられるという神学だ。神学というよるは、明里にとっては映画やアニメのような思想に見えるが。


「で、その携挙で残った人間が神社に隠れてこっそりキリスト教徒やってるとか?」

「うーん、パラレルワールドにしても荒唐無稽すぎません?」


 さすがに悠人の説はファンタジー過ぎてツッコミを入れたくなった。


「でも、そういった世界線があるかもしれないよ。まあ、都市伝説に答えなんてない。だからこそ、我々の考察はつきず、美しいのではないかね?」


 悠人の目はキラキラしていた。まるで新しいおもちゃを手にした子供のようだ。


 明里は深く頷く。確かにこの謎は、明確な答えがなくてもいいのか。答えはふわっとさせ、しばしの夢でも見るのも悪くないのか。明里は酔いはじめたのかもしれない。さっき飲んだ酒のせいだろう。


「しかし、そのコンビニ行ってみたいね。なんか肉まんでも食べたくなってしまったし」


 悠人は酒を飲み干すと、物足りなさそうな表情を見せた。


「やっぱりこの目で確認しないと分からない気がするね」

「そうですか?」

「今から行ってみない? うん、俺もそのコンビニ見てみたいわ」


 悠人は立ち上がり、明里もそうするように促していた。つまり、こコンビニまで案内しろということか。


 時刻はちょうど二十三時だった。もうすぐ深夜になるだろう。


「肉まん食べたいし。行ってみようぜ」


 明里は再び頷いていた。


 怖いもの見たさ。一人でこのオフ会に参加したつもりだったが、今はその言葉は悠人と共有しているような気分だった。

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