表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
女性だけの町BLACK  作者: ウィザード・T
第十三章 「特攻隊」
89/182

過激化の予兆

第三章開幕。今回は水曜日~月曜日更新、火曜日休みとなります。

 第二の女性だけの町において、一番就きやすい仕事は何か。


 それは、公務員である。


 下手すれば試験も何もなく、面接で認められれば即公務員になれるのだ。


 だからこの町での公務員の地位は低く、安定職にも関わらず婚姻率はやたらと低い。




 もちろん、役職によるのだが。





「離職率、と言うか追放率は依然として高止まりです」

「知ってるわよ……」


 追放担当部署の空気は、いつも良くない。他の公務員に比べればかなり給料は良かったはずの勝ち組部署が、今や負け組になってしまっている。

「人員の補充はないの」

「ありますけど」

「でもこの仕事には慣れてないんでしょ、そんなの補充しても」

「上層部自ら指導に当たるそうです」

「迷惑をかけてしまうのね…………」


 元々追放を望むような人間をガンギマリ女とか言って非難する事がまかり通っている以上、これほどまでに恥ずかしい行いもないはずだった。


 そのはずだったのにだ。


「最初に配属された時には閑職だと思ってガッカリしてたけど、いざとなると適当に暇で楽しい職場だったのにね……」

「早食いはやめません?」

「わかってるわよ、オトコらしいって。でもね、そうでもしないとまともに休憩時間が取れないのよ」

「そうですけどね……」

 新人だった時分には二十五分かけていた食事が、最近は十五分になっている。最近では水道を捻ってもまともに出ないので、コンビニで二本お茶を買う事も珍しくない。給食時間が三十分でありしっかり咀嚼するのが町是となっていると言うのに、大人になればなるだけ食事時間がどんどん短くなる。どうせ昼休みの時間など決まっているのだから時間を惜しむ必要もないはずだが、食事さえせずにだらける時間が欲しくなってしまう。


「午後は何人来てるんだか」

「三人です」

「あなたお客様の対応頼める?」

「出来ますけどどうしたんです」

「いや単純に疲れただけ。こういうのダメよね」

「ダメですよ。気持ちは重々わかりますがね」


 中学時代から必死に学問に身をやつしたにもかかわらず、エリートに成り損ねた自分。最初は不貞腐れていたが、数年かけて環境にも適応できた。

 それこそめったに来ないような頭のおかしい連中に対しハイハイと対応し、適当にその連中のデータを調べてブルー・コメット・ゴッド病院などに送る。その上で適当な事を言って連中の迷妄を断ち切ると言うか、もてあそんでやる。そう考えると実に楽しい職場だったはずだ。


 だが、そんな楽しい職場でも数年同じ事をやっていれば飽きる。と言うか、毎日同じメニューを大量に食べさせられていれば嫌にもなる。それ以上に、あまりにも量が多すぎた。もちろんお残しは許されない。胃袋が縮むような年でもないはずだが、それでも出てくるメニューはぶっちゃけて言うとゲテモノである。それでも彼女は、そんなゲテモノメニューを毎日召し上がらねばならない。自分と、パートナーと、三歳になった娘のおまんまのためである。

 

「本当、どいつもこいつも野蛮人よね」

「そうですけどね、まあ幸い経費で催涙スプレーは落ちてますけど」

「殴りかかられたら労災下りるのかしら」

「下りますよ、岸議員の家族にも相当な額が下りたとか」

「うー怖い怖い、でそのオトコは処刑されたんでしょ」

「もうとっくに骸になってますよ」

「墓なんかないんでしょうね」


 追放を求めて来るのは、同じ公務員ばかり。

 

 しかし書類なんかまともに見る事もせず、道具を動かしてばかり。汗臭さを恥じる事もなくむしろ誇り、腕力の強さを誇り合う。


 それで妙な自信でもつけてしまったのか、誰も彼も迷わない。どうせ鳥なき里の蝙蝠で外に出ればすぐさまオトコに組み敷かれて慰み物にされるのに。刈谷とか言う岸を殺した輩の死体は、他の死刑囚と同じように火葬され無縁仏扱いされてひとからげに墓に入れられている。もちろん墓石などなく、看板が一枚あるだけ。一部では木像でも作って住民たちに自由に石でも投げる権利を与えようとか言う意見もあるらしいが、さすがに却下されている。


「とにかく勉強して資格得て、電波塔を含むどこかに転属を願うしかないかもね」

「それこそ難関ですよ。毎年何人が電波塔転属願を出してるかご存じですか」

「知ってるわよ、十五人の枠に千人とか。あそこで働けるのはそれこそスーパーエリートよね、議員の方がまだ可能性あるわよ」

「そうね。まあせいぜい目の前の仕事をこなしましょう、いずれ暇な時が来るんだから……」


 いずれ暇な時が来る。


 その言葉を一体どれだけ言い続ければいいのかわからないのも事実だった。


 

 この日の午後結局、予約の三人+飛び込みの二人の計五人を捌かなければいけなくなり、ブルー・コメット・ゴッド病院のベッドの空きは一床だけになった。一応明日退院者は出るが、それが津居山院長の心を癒す事などあり得ないのは明白だった。




※※※※※※




 もちろん、この件は議会でも問題となっていた。


「大量の公務員たちの追放希望について、町長はどのようにお考えでしょうか」


 酢魯山議員は、追川恵美町長に水を向ける。

 

「その件に対しましては、無論善処しております」

「善処とは」

「虚偽の広告の記載の排除要請です」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ