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女性だけの町BLACK  作者: ウィザード・T
第一章 もう一つの女性だけの町
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「失敗都市」

 男たちの暴虐と、それを嬉々として受け入れる魂を売った女たち。


 そんな存在に愛想を尽かした人間たちの資金投入により、この町は出来上がった。


 真に女性の事だけを思う、女性だけの町として。


「今も外の世界では下半身に支配された男たちと、その下半身に迎合する女たちが溢れているのでしょうね」

「そんな地獄から抜け出すために私たちはモデルケースを示し、こうすればうまく行くのだと」

「なればこそなのです。残念ながらまだこの町は全世界の女性を養えるほど大きくはありません。ですがこの平穏無事を象徴したような、誰一人として傷付かず暮らせるような町。これが全世界のスタンダードになれば、電波塔も何も要らなくなります。

 第二、第三の女性だけの町が出来た暁には、この町で育った女性たちの手により皆が導かれるのです」


 ノアの箱舟でもないが、乗り遅れた人類に対してはそれなりに冷たくもなる。もちろん真女性党の党首としては拡充する気ではあるが箱舟の容量が知れている以上、何人かは置き去りにせねばならない。それこそ選別作業やむなしであり、色欲に塗れているようなオンナ共は拒絶せねばならぬと追川は思っていた。実際超党派の会合でもその手のオンナの移住を認めないと議決されており、まだ表立って発表はしていないがいずれ町議会を通過させ法案として成立、法律にする予定だった。


「いずれはこの町に寄付される資金はなくなるのでしょうか」

「そうですね。だからこそ丹治さんには教育の方もお願いしているのです」

「皆さんよくやっていますよ」


 そして現在はこの町の資金、後の「第二、第三の女性だけの町」のための資金を集めているのがこの丹治勝美だった。

 彼女は外の世界にいた時からやり手経営コンサルタントであり、幾多の男の企業を繁栄させその世界で頂点に近い存在と言われた。そんな彼女がこの町に参加した事は、追川たちにとって果てしない僥倖であり幸運であり、自信を与えるに十二分だった。


「崇高なる使命をもってすれば、我々がわざわざ動かず、余計な死傷者を出さずとも町は作れるのです」

「抵抗ある住民は少なくなかったのですか」

「いいえ。()()の信念に感動したのですよ。ですから何の問題もありません」



 そしてこの町の建造物やインフラストラクチャーを実際に作ったのは、九割以上男だった。

 男が、女のために、「女性だけの町」を作ったのである。


「あんな失敗都市とは違いますからね、町一つ作るのに戦争を二度も起こし、作ってからなお二度も大事件を起こしたような都市とは!」




 その男たちが作った町に入った追川恵美からしてみれば、「第一の女性だけの町」は「失敗都市」だった。




 女性たちが自ら機械を運び、建物を作り、道路を整備し、水道や電線の工事まで行う。


 発電所すらも自ら建築を行い、男から援助を受けたのは建築資材の一部と建築器具その他の提供先としてのみ。



 その町が現在進行形で存在し「繁栄」している事は、悪例として世の中に残ってしまったとさえ思っている。


 女性だけの町が作りたいなら、自分たちでゼロからやれ。資材や道具は提供するから、自分たちの手で作ってみろ。

 今後、そう言われる事は目に見えてしまう—————下手に成功したせいで。


 実際この町を作らせた時もそうさんざん言われ、無責任かつ一方的で要求ばかり多いと揚げ足取りされ、第一の女性だけの町と違い成功しないと散々馬鹿にされた。またかなり工賃を吹っ掛けられ、最初から自分たちで作るのの数倍の金を無駄に男に使ったとか現在進行形で陰口を叩かれているのも知っているが、追川たちは一向に気にしていない。


 自らの手で町を作るための行程を第二次大戦とその町では呼んでいるが、全く持って忌々しい言い草だった。

 それこそ何十人単位の死者が生まれ、今でもその「尊い犠牲者」の霊を守るための祭礼が恒例行事になっている。死ななくてもいいのに、なぜ死ななければならなかったのか。

 かつて、その町の住人が「第一次大戦」と呼ぶ男たちとの論戦においては共に戦っていたはずなのに。どうしてそんな真似をしてしまったのか。



 だいたい、第二次大戦などと言う呼び方が横行し出したのは誰のせいだ。

 それこそJF党と言う名の過激派が暴れ回り町そのものを揺るがしたからではないか。

 そんな人間を生み出しておいて何が平穏だ。

 その結果町を襲った三番目の苦難としての「第三次大戦」と言う呼び名が横行し、自然「第二次大戦」と言う言葉も定着してしまった。


「JF党事件と正道党事件ですね」


 そしてついこの前、「第四次大戦」とでも言うべき事件が発生した。対外的には第四次大戦とか言う名前を使っていないようだが、「第三次大戦」と同じく町全体を巻き込む集団テロ事件が大戦でなければ何が大戦なのか。


 世の女性が平穏無事に暮らすための町で、なぜに三度も大量の死者を生み出さねばならないのか。



「心ある人間たちの名を喧伝する事を私は恥とは思いません。

 そもそも、男たちが無自覚な罪を犯し続けなければこんな場所など存在する必要などないのですから。

 本当に、女たちの尊厳を踏みにじっておきながら全くの知らん顔。そんな事が許されるわけではないからこその資金援助なのです」


 そんな事を起こさせないためにも、決して「第一の女性だけの町」の真似をしてはならない。


 それが、追川恵美たちの統一見解だった。

さて先に述べたようにここで一日お休みをいただきます。第二章をお楽しみに。

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