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女性だけの町BLACK  作者: ウィザード・T
第一章 もう一つの女性だけの町
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クラウドファンディング

「丹治さん」

「お疲れ様です」


 議論を終えた追川は、建物に中央の町議会から右端にまで来ていた。 

「今日もまた町民たちは元気ですか」

「無論です」

 町長が書類を持った女性と共に深々と頭を下げるその女性は、椅子から全く動く事はなくキーボードを叩いている。


「それで、寄付の方は」

「順調に集まっています」

 寄付の額を具体的に目の当たりにした追川の顔がほころぶ。支援者からの寄付金はこの町における重要な財源であり、今年も予算の一割近くをそこから当て込んでいる。

 しかも今年は予算の一割どころか一割二分に値する現金が入ったため、その分を余剰金としてプールできそうなほどだった。

「大半がごく少額ではありますが人数は非常に多く、これこそ我々が支持されている証だと言えますね」

「また口さがない連中が騒ぎますけど」

「もちろん一定以上の額を寄付した人間に絞ってですが続けますから、これは議会で満場一致の可決を見た話ですので」


 そして多額の寄付をした人間を「名誉市民」として、町内外を問わずに発表するのもまた恒例行事だった。

 今年度の「名誉市民」は七十二人おり、昨年度より三人増えている。


「と言うか相川さん、あなたそんな雑音を気にしているの?」

「ええ、連中は殴れる材料をいくらでも探していますから」

「本当、色欲に塗れた人間たちは醜い物ね。あなたはそんなレベルに落ちちゃダメよ」

「それを跳ね除けるのまた私の職務ですので」

「もちろんあなたの事は頼りにしてるけどね」

 その事をパフォーマンスであると非難する声が絶える事はない。

 わざとらしく協力者の名前を出して威圧せんとするなど第一に虚勢であり、第二に結局旧来男性指導者が使って来た権威主義ではないのかと言うのが主な非難の理屈だ。


「あのね、古来から男はその腕力で女たちを従わせて来たの。少しでも道理が通らない、ああこの場合の道理ってのは男にとって都合のいい道理って事ね、それに反論するとすぐさま男たちは暴力に訴えて来る。その拳によって女たちは何千何万年と泣かされて来た。男たちはそれこそ八方手を尽くして女たちを支配し、自分の物にせんと欲して来たわけ」

「ええ…」


 それらの非難に対し、追川は鼻で笑いながらもしっかりと理屈を組み立てて反論していた。

 男はそれこそ幾千年前から欲望に塗れ、多くの物を得ようとした。それは金銭や食料のみならず、異性でさえも同じ。それこそ一人では飽き足らず最高権力者ともなると二ケタの妻を侍らせることも珍しくなく、時代が下っても女を何人も囲う男の数はさして減らなかった。


「なればこそ私たちは戦って来た。女も男も同じ人間だと言うあまりにも当たり前の事を言い聞かせるために、ずっと戦って来た。権利を訴えて来た。

 でも私たちがいくらやってもなびかないのを知るや、男たちは女の同情を引き出したのよ。女たちの罪悪感を引き出し、男の言う事を聞かない人間はどうなってもかまやしないってね。まあ単純に奇形の集まりばかりで見るに堪えなくて、尚更離れただけだったけど」

「あれは同情を引くためだったのですか?」

「そうよ。あるいは自分が望むそれが現実に手に入らないからその代替品を作り出してるだけかもしれないけど、いずれにせよそんな物で女性たちの心をつかむ事は出来なかった」


 だが女性が自立すると共に、描かれた女性の数が増え出した。

 そこで目に付く女性たちはいろいろな面で見るに堪えず、幾たびもその事を訴え公共の場から排除するように要請して来た。だがたかが点と線の集まりに何を言っているのだと馬鹿にされ、しまいにはお前たちの方がよほど色欲に塗れていると言われた事さえもある。なればこそこちらも一匹残らず駆逐してやるとばかりに走り回ろうとしたが、その度に同じような事ばかり言われた。



「いや、一部出来てしまっていた」


 そして何より腹立たしかったのは、迎合した女性たちの存在だった。

 受容するだけでも面白くないのに、自らその奇形じみた女たちの装束を真似たり、中には自ら生み出すような女までいた。

 あまりにも醜い。情けない。女として風下にも置けない。


「私たちが淫乱男として修正せんとした可哀想な人形の作り手が女であったと言う話はもう数え切れない。その度に私たちは心底から彼女たちを憐れみ、その度に他にもっとその才覚を生かす道があると進言して来たつもりだった。だけど彼女らはもはや完全に洗脳されていて、私たちの言葉は雑音以下の扱いだった。私たちがどんなに悲しい思いをしているのか、自分たちが作り出した煽情的な存在がどれほどまで貶められているかを説いても、誰も耳を貸さなかった。精一杯頑張ったつもりだけど、もう限界だった。

 そして、同じように限界一歩手前まで来ていた人間たちが、この町を作ったの」

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