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女性だけの町BLACK  作者: ウィザード・T
第七章 「第一の女性だけの町の失敗」

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スタートはどこから

2024年6月7日、5行目の「三十年前」を「二十幾年前」に編集しました。

「あっちの町の人間はこんなシロモノを見てもなんとも思わないんでしょうね」

「そうそう。のほほんと過ごしてるのよ、きっと。あーあ、急いては事を仕損じるって本当よねー」


 第二の女性だけの町が出来た時に入って来た五十代半ばの職員たちは、益体もない食事風景を描いたイラストを告発して笑っている。

 自分たちの二十幾年前の決断を喜び、拙速に駆られた人間たちを笑っている。


「あなたは出来た?土木工事とか水道工事とか」

「無理無理、それこそオトコにやらせればいいのに出しゃばっちゃって。そのせいで私たちは本当大迷惑よ」



 彼女たちはそれこそ、第一の女性だけの町へ行こうか行くまいか迷っていた人間だった。

 だが彼女たちがその第一の女性だけの町へと行こうとしたその時、あのJF党事件が勃発。

 当然ながら「女性だけの町は危険である」と言う評判が広まり、多くの移住希望者たちが二の足を踏んだ

 さらにその頃、女性だけの町を分析した書籍が外の世界に発行され出していた。当然ながら二人はそれらの書物に目を通し、第一の女性だけの町の正体を掴んだ。



 女性が、女性の手により、女性のために作った町。


 都市計画から一個一個の建造物の建築さえも、男一人の手も借りずに作った町。強いて言えばそのための資材は男から買ったものの、それ以上の事は何もない。当然その中核に立つのは第二次産業であり、その伝統を受け継いでいるから今でも第二次産業が大きな顔をしている—————。


 そんな分析がいくらでもあふれ、「女性だけの町」の実情が浮き彫りになって行く。


 そして彼女たちにとって、それらの情報は決定的な物であった。



 女性たちが重機を動かし、水道を作り、ビルを建て、道路を敷く。

 フロンティアスピリッツにあふれたその作業をそれこそ何よりもドラマチックであり、多くの女性が夢のために戦った記録だった。

 女性だけの町の内外を問わず映画化・ドラマ化・小説化され、現在でも最大の観光地として町を築いた人間たちの共同墓地が存在している。

 創立から時が経ち健在であった人間もそこに入るための準備が進んでおり、今後尚更神聖化して行く事は必至だった。




「魁さん」

「ああちょっとぐらいいいじゃないの、あなたももっと激しく動かなきゃダメよ。あなたたちまだ若いんだから」

「まったくあなたたちがそれじゃ、私たちはまだまだこき使われる運命なのね。まあ、最後の最後までやってやるけど!って言うかあなたも勧誘したら?」


 二十代のこの町産まれの後輩に雑談を注意された魁歩美と、落谷茂木江。


 外の世界にいた時から共に仲良くしていた二人は、この町に多くの女性たちを呼び込んでいた。外の世界で男たちの作る乱暴でわいせつな代物に苦しめられていた人間たちに声をかけ、これまでの二十幾年で十人をこの町の町民にした。

 だが班長以上もっと上の役職の人間は彼女たち異常に多くの人間を町に呼び込んでおり、それが出世の差となっていたとか言う噂まであった。


「でも今度こっちに来たあの二人はかなり意欲的だそうですけど」

「まだ研修中なんでしょ、まあとにかくバリバリやってくれればいいけどね」

「結局それが一番大事よ」

 当たり障りのない事だけ言って、後輩の話を終わらせる。そして再びマウスを握り、次々とイラストを検索しては通報して行く。

「ソーシャルって言葉の意味が分からない連中を相手にするのは大変なのよ。あなたは一体何年ここに勤めてるの」

「五年です」

「言っとくけどね、ソーシャルってのは社会的って事。

 ソーシャルネットワークサービスってのは、社会的ネットワーク事業よ。社会的に言ってこんなふざけたシロモノが存在していると言う事自体、許し難い話なの」

「そう、所詮は私企業なのかもしれないけど、見なさいこの数字を。

 ここまで肥大したからにはもはや公共財でありその責務を取らねばならないと言うのにどうしてわからないのかしらね」


 ユーザー数、と言うかアカウント数は既に八ケタ。いわゆる複垢がいるとしても数百万単位の人間が関与している。

 これはもはやガス・水道・電気に類する公共財ではないか。

 私たちは、その公共財の清掃をしているだけ。


 それこそ、もっとも崇高なる使命。


 歪んだオトコたちの欲望を正し、女たちに自立する事の素晴らしさを教える。


 いずれ女を食い物にするようなオトコたちは世の中から見捨てられ、この世界は女を慮る事の出来る思慮深く懇切丁寧な男と自分をしっかりと持った女だけの世界になる。

 今はその世界へと向かって行く第一歩であり、自分たちこそ世界を変える存在である。




 歩美と茂木江は、その信念のもとにこの仕事をして高給取りとなっている。




 決して、金目当てのためだけの仕事で高給取りになっている訳ではなかった。

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