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女性だけの町BLACK  作者: ウィザード・T
第二十三章 正義は我にあり
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医師たちの感動

「私たちは!そもそも!世界のオトコたちが!あるべき姿に戻るべきであり!女を傷つけないようにと言うただ一つの希求を持って!女性だけの町を作ったのです!

 にもかかわらずオトコたちは厄介払いが出来たと浮かれ上がり!第一の女性だけの町の女たちはそこにはびこる存在を排除するどころか受け入れてばかり!


 これでは、一体何のための女性だけの町なのか!

 何のための女性だけの受精卵作りの研究なのか!

 何のための電磁バリアなのか!」


 追川恵美の演説は、誰が聞こうが聞くまいが流され続ける。


 そしてブルー・コメット・ゴッド病院の院長代理ことタイランもまた、演説を感動して聞く事の出来る人間の一人だった。


「院長」

「わかってるわよ、ったくもう……」


 その演説を邪魔するオキャクサマたちの相手をせねばならない自分が恨めしく、今すぐ津居山恵美とか言う追川恵美のパチモン女を蘇らせて雑事をやらせたいぐらいだった。

 レイプ事件のせいだろうが、ブルー・コメット・ゴッド病院を訪れる淫乱女たちの数はちっとも減らない。今から予約を入れても十日どころか半月待ちと言う状態であり、それこそこっちが先に倒れると言うかこの町ならぬこの世から去ってしまいそうである。それこそ院長多忙により休養うんたらかんたらとか言ってしばらく閉めてやりたいが、それをできるような権限はない。


 この町はユートピアであり、ノアの箱舟だ。そこから逃げ出していったいどこへ行こうと言うのか。わざわざ数京分の一の犯罪が連続したぐらいでおびえきり、数百どころか数十分の一単位の犠牲者がいる場所へと赴こうなど、それこそ「淫乱」で「変態」ではないか。

(もう知らないとか言えればどんなに気楽でしょうね!)

 今まで何人か、ブルー・コメット・ゴッド病院内で命を落とした。

 その全てが外の世界の実像を見た事によるショック死とされており、遺体は遺族によって引き取られたり引き取られなかったりしている。無論死が悲しくない訳ではないが、寸での所で外の世界の連中の慰み物にならなくて済んだと、津居山恵美さえも言っていた。







「考えてみてください!第一の女性だけの町が出来て半世紀近く!彼女たち自ら、三度の大戦があったと自ら認めています!

 第一次のそれはまだともかく、第二次大戦と言う名の栄光、自らの手で木を植えビルを建てたと言う過去の栄光!

 それこそが第三次大戦の根源であり、さらに次の大戦である第四次大戦の原因であると言わざるを得ません!

 テロリズムは無論悪です。しかしそのテロを巻き起こさせたのは、第二次大戦の栄光を絶対視し時代の変化と女性だけの町が作られた原点を見失った住民の責任でしかありません!それを棚上げし、第二次大戦時代の栄光に溺れた旧勢力は新勢力を封じ込め、流れを止めてしまった!

 選挙と言う民主主義にて最も重要な決定方法にて第一党を得たにもかかわらず、搦め手を使って彼らは政権を握り込んだ!これが、水谷自ら述べた第一の女性だけの町の欺瞞です!」




 また、もう一つの病院の院長もまた、この演説に涙を流していた。


 自分がやって来た事、これからやる事は何の間違いでもない。

 世界を、女性だけでなく男性にとっても住みやすいそれにする。


 そのための追川恵美たちの志に改めて感動したのだ。


「病室でも皆さんは元気に見てるかしら」

「無料開放にしているので皆さん見ていると思います。無論病の方が大事で生で見られない人は多いと思いますが」

「……」


 看護師は何も言わない。

 看護師からしてみれば、医療に集中しずらく面倒くさい材料だった。いつもの退屈なテレビ放送もまた、集中を削がれないと言う意味ではありがたい。


 それこそ何べんも何べんも隙間なく流される同じ内容の演説など、数回も聞かされれば覚えてしまう。本当なら仕事に集中してくださいとタイランのように言いたかったが、それをするには相手の顔が澄みすぎ、それ以上に自分の仕事が少なすぎた。

 もうあらかたの住民をPTSD認定しまくったせいか、引田水花の仕事は減っていた。無論本来の意味での患者を診る仕事があるが、院長自ら診なければならないような患者などめったにいない。

 それこそ、院長室でのんびりとテレビを見ると言うある意味相応しい仕事が残るだけだった。


「院長」

「何ですか、手短に」

「売店の品ぞろえがあまりにも貧相であると患者の皆様から」

「病院食や衣服については不自由はないんでしょう」

「ですがあまりにも品ぞろえが乏しく、自販機も万年売り切れ状態で」

「病院は買い物をする場所ではありません」


 だから、その仕事を楽しんでいる所に入り込んで来た存在にまともに対応などしない。


 中村と言う患者が売店及び自販機の商品がしょぼいとこぼしている事など、引田にはどうでもよかったのだ。

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