「自殺」
いよいよ事実上の最終章です!そのためこの第二十三章はかなーり長くなります。
「第一の女性だけの町の町長、水谷は男に我が身を売り渡そうとしたことを恥じて自殺しました。
これより、かの水谷の売国政策について述べたいと思います」
その夜の臨時ニュース番組。
再放送の再放送のそのまた再放送しかしないようなテレビ番組。
そのせいで本来テレビなど見ない層ですら、なぜだか電源を入れていた。
そして、その内容をみんな覚えた。
「そもそもなぜ、女性だけの町が作られたのか。それは全て、外の世界のオトコたちの欲望を剥き出しにした世界からの逃避であり、オトコたちに反省を促し、女性たちに配慮を持った真のオトコ、いや紳士へと進化することを願ったからです。
ですが、その志をすっかり失った今の彼女。いや、もはや外の世界にすっかり迎合した、性別的に女性と言うだけの存在。
それが、第一の女性だけの町を取り仕切っていたのです」
弘美や兼美と言うジュエルドプリンセスやビューティーレディー、またバー・カーマンの店長たちも、仕事の手を止めてテレビを見ている。元から客などいない時間帯とは言え、まるでそうする事が義務であるかのようにモニタを見ている。
「さてまず、この町の子どもの番組と言えば何でしょうか。そう、レッツゴー真四角です。それに対し第一の女性だけの町では、ドドラちゃんとか言うキャラクターを用いていました。
残念な事に、そのキャラクターは外の世界の連中によって簡単にオモチャにされてしまいました。とても子どもたちに、いや大人にも見せられないようなみっともない存在に成り下がっています。それなのにまったく改善しようとせず、それこそ勝手にしていればと言い出したのです。自分たちが不健全なそれをなくそうとしたはずなのに不健全なそれに使われていると言うのに、まったく何とも思っていないのです」
静江と撫子の婦婦と二人の娘、桜子と和美。また武美と言う少女も、レッツゴー真四角のそれと比べてずいぶんと色のキレイなドドラちゃんと言う存在を見つめ、その存在が不健全な事に使われていると言う演説に耳を傾けている。
「また、小学生以上の子どもを持つ皆様聞いて下さい。
かの町ではなんと、小学一年生からでも刑法が適用され牢獄に入る事もあります。それこそ誰がいつ何時、前科者と言う存在になるかわかりえない危険極まる町であると言わざるを得ません」
前科者と言う十字架は、当然この町においても重い。それこそしかのみと呼ばれるような職業にしか就けなくなり、ほとんど誰にも顧みられなくなる。まれに電波塔の職員になったりするのもいるが、給料は相当に差っ引かれる。
そんな風に小学一年生の段階で人生が決まりかねないほどに、第一の女性だけの町は危険だ—————。
(やはり貴方の言う通りなのですねお義母さん。私たちこそ、本当に女性たちを導ける存在である—————。だと言うのに何なんでしょうあの覚悟のなさは!)
(透子。今更だけどあんたって本当に心臓に毛が生えてるのね。ま、いざとなったら私が子どもたちもパートナーも、茂木江さん共々引き取ってやるから)
その演説を、感動して聞いている人間もいた。
一人目は、追川恵美の養女で小学校教師の追川絵里子。
最近子どもたちに殴らせるオトコの絵が入らなくなりいら立っていた所に流された義母の、いつにも増して力強い演説。
まだ独身の彼女だがこんな素晴らしい義母のそれに共感してくれるようなパートナーを探すべく、明日から婚活でも始めようと思い立つほどには気分も高揚し、同時にこの前の死刑執行に子どもたちを立ち会わせようとして止められた事の憤りも蘇って来た。罪人を見せるなならともかく小学生に血を見せる奴があるかとか言うぬるい事を言い出した同僚を養母の力で排除するぐらいの事はしてやるべきかとも思い、親の七光りでも何でも使ってやるかと覚悟に燃えている。
二人目は、魁歩美。
第一の女性だけの町が出来た時に幼稚園児として移住し、第二の女性だけの町が出来た時に自ら移住して来た女性。
母や妹が肉体労働に従事していた姿を嫌い、自分なりに目一杯勉強しれ管制塔の職員と言う超エリートになった女性。移住した時にはそれこそ小学生だった彼女は友人と引き離された事を恨みに思ってか母や妹にも心を開かず、仕事しかしないような人間に育った。
そんな男の友人もいたはずの彼女にとって第二の女性だけの町は実に魅力的に映り、創設と同時に移住を決行。第一の女性だけの町での実績を買われすぐ電波塔の職員となり、当初は十五階であったが現在は地上勤務で教官と言うか大御所のような立場となっている。
そんな彼女の心配は、同僚の落谷茂木江だった。少し前に体調を崩し、現在は入院中。入院中と言ってもブルー・コメット・ゴッド病院ではなく普通に病院であるが、あと半月は入院せねばならないらしい。今病院で演説を聞いているのだろうと思うとテンションも上がった。
「そして何より!室村社と言う存在と!手を組んでいるのです!」
そして追川恵美の演説のテンションも、上がった。




