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女性だけの町BLACK  作者: ウィザード・T
第二十二章 「最後通牒」
153/182

反応は

「今すぐ、第二次産業の待遇を改善してください」




 第二次産業の待遇を、改善しろ。




 あまりにも唐突な要求に、百恵すらも動かなくなった。


「おっしゃる意味が分かりかねますが」

「私たちの町では第二次産業に従事する人間が一番多くの賃金を得ている。その事はご存知でしょうか」

「ええ」

「それは、私たちの町が出来たのは誰のおかげか、その考えが根底にあります」


 金閣寺を作ったのは大工さんとか言う小学生レベルのジョークに等しい発言を、水谷町長は真顔で言っている。


 誰が偉いのか。


 それは、このアイディアを考え出した人間ではないか。


 女性だけでの繁殖を実現させた遺伝子研究の学者、最高の防衛システムを作り上げた電波塔のシステムを作り上げた学者、町のデザインを決めた人間も無論だが、それ以上に女性だけの町と言う先進的を極めた存在を口にし、そのために人員を集めた存在より尊いそれがいると言うのか。


「要するに汗水垂らして肉体労働に勤しむ存在が偉いと」

「まあそんなのは全員そうだろと言われればそれまでなのですがね。所詮私たちは女であり膂力は男性には敵いません。故にどうしてもインフラ整備の仕事は人が少なくなりやすく、人材の不足は問題になります。

 ですから、私たちはその手の産業を意図的に優遇し町を守っています。まあ、少しばかりインチキもしていますけどね。本来第二次産業でもないゴミ回収業をそこに入れたり、トイレ掃除もまたしかりですけどね」


 その上にまったく臆面もなく、自分たちの欺瞞を言い触らす。こっちの弱みを見たから自分のそれも公平に見せてやったとでも言うのか。

「その事を取り上げる存在はいないのですか」

「以前いましたが選挙で落選しました。いや、落選はしていませんが失脚はしました」

「そうですか」


 その上に自分たちの欺瞞を正そうとした存在を放逐してやったと公言する。

 いったい何様のつもりだろうか。


「そうして第二次産業を盛り立てて他に問題は起きなかったのですか」

「起きなかったのかと言うと」

「犯罪の発生率です。彼女らは先におっしゃられたように膂力があり、普通の女ならば三人や四人でかかっても止められないかもしれません。そうなればそれこそ町の秩序を乱す根源となります」

「逆に質問させていただきますが、そちらの町での刑法は何歳から適用されるのですか」

「十八歳からですが」

「私たちの町では七歳からです」

「七歳!」

「一応小児刑法と言う形を取っていますが、小学生でも暴行を行えば大人と同じように刑務所に行き四文字名を与えられ、中には拘束衣を着せられたケースもあります。

 ああ四文字名と言うのは刑務所内で呼ばれたり、ニュースになる時に使われる適当な文字の並びです」



 七歳と言えば、小学校一または二年生。


 そんな時分から刑法と言う網にかけ、前科者を産み出す。そこまでして必死に暴力を抑制し、それこそ第二次産業絶対主義とでも言うべき町を作り出そうとしている。



「で、結局自分たちがうまく行っているのだから自分たちに従えと」

「そうではありません。しかしこの町に来て驚いたのですが、やけに道路の状態が悪いように思えます。何でもあちらこちらに通行止めの道路があり、しかも現状復旧の見通しも立たないとか」

「それは我々の町の都合です」

「ですがこのままでは住人たちにとってこの町は魅力を失ってしまいます。道路を修繕できる業者はいないのですか」

「一応町営、と言うか公務員としていますが」

「その従業員、と言うか担当公務員はどれだけの数がいるのですか」

「えっと…確か十人ちょうどかと、あれ?この前増えたっけ……?」


 どうしても自分の言う事を聞けと迫って来るものだから正直に答えてやると、水谷町長は顔色を失っていた。

「まあこれから、千人単位で増えますので」

「それは……」

「室村社とか言う欲望の塊の存在を使います。どうしても自分たちの欲望を優先し世の女性たちを苦しめるのであれば、この町を築いた先人のように骨身を削ってもらうまでです。

 そう、あなた方のように……」




 口にしている間に、実に素晴らしいアイディアに思えて来た。


 第一の女性だけの町がこの町は誰のおかげでできたのだとばかりにインフラを守る第二次産業様絶対主義を掲げるとか言うのならば、こっちだって町が出来た時の原点回帰するまで。



 そう、この町は元から、オトコたちに作らせた町。

 オトコたちが己が罪を認め、女性だけのために作ったオトコたちの罪科のシンボル。

 なればこそ、現在進行形の戦犯である室村社のような存在にそれをやらせるのが当たり前ではないか。

 無論そうでなくなればそんな事を言う気もないが、どうしても女性を傷つけたくて仕方がないのならばそれぐらいの事をしてもらわねば困る。




「室村社ですか……まあかの社の製品には我が町もお世話になっていますね」

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