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第098話 ほめられてのびるロイド


 俺達が服を着替えたり等の準備をし終えて、しばらくすると、メイドが朝食の準備ができたらしく呼びにきた。

 俺達はメイドについていき、食堂に向かう。

 食堂に着くと、すでに叔母上とクリフとヘレナが席についていた。


「おはよう。よく眠れたか?」


 叔母上が挨拶と共に聞いてくる。


「ええ。本当に良いベッドですよ。疲れも取れましたし、ありがたいです」


 俺は叔母上にそう返しながら席についた。

 俺が座ると、リーシャとマリアもまた、席につく。


「そりゃ良かった。まあ、今回の調査で使う船はお前らが乗っていたテールの小型船とは違うし、たいして揺れんから安心しろ」

「アシュリー号です?」


 豪華客船がいいな。


「いや、ウチの軍船だが、貴族仕様……というか、私仕様だから快適だと思うぞ」


 叔母上仕様ならほぼ豪華客船だろう。


「あと、乗組員が野蛮なのは嫌ですよ? ウチのマリアはちょっと荒くれ者がダメなんです」


 荒くれ者恐怖症なのだ。


「公務だし、普通の軍人だよ。一昨日の輩共とは違って、規律はしっかりしてるから安心しろ」

「らしいが、大丈夫か?」


 俺は一応、マリアに確認する。


「軍人さんなら大丈夫です」


 この国の軍人の質はわからないが、叔母上の部下なら大丈夫だろう。


「念のため、俺から離れるなよ」

「はい。そうします」


 マリアを目の届くところに置いておこう。

 後ろを振り向いたらいないっていうのはもう嫌だ。


「マリアもだけど、あなたもトラウマになってない?」


 リーシャが聞いてくる。


「マリアロス恐怖症か? 話しながら歩いていて、後ろを振り向いたら誰もいないのはホラーだわ」

「急に視界が真っ暗になった私はもっとホラーでしたね」


 誘拐された状況やその後の詳細は聞いていないが、怖かったんだろうなー。


「お前ら、苦労したんだなー……っていうか、よく無事だったな」


 叔母上が感心したように言うが、この人はこの人で苦労したと思う。


「色んな出会いもありましたしねー。なんとかなりました」

「ふーん、まあいい。調査の段取りとかはまた後で説明する。食事にしよう」

「そうですね」


 俺達は朝食を食べることにし、団らんの時を過ごした。

 そして、朝食を食べ終え、一度、部屋に荷物を取りに戻ると、屋敷の玄関で叔母上を待つ。

 しばらく待っていると、軍服に身を包んだ叔母上がクリフとヘレナを連れてやってきた。


「待たせたな」

「いえ…………2人を連れていくなんてことはないですよね?」


 さすがにクリフとヘレナはマズいだろう。


「当たり前だ。この子達がお前達を見送りたいって言ってきたから連れてきただけだよ」

「あ、そうなんだ…………わざわざ悪いな」


 俺はクリフとヘレナに向かって言う。


「いえ、大丈夫だとは思いますが、海は何が起こるかわかりませんから気を付けてください」

「気を付けてください……」


 いやー、小さい子はかわいいなー。

 俺にも弟がいるが、あいつは1つ違いだからかわいくもなんともなかった。

 尊敬の念をこれっぽっちも感じなかったし。


「ああ、問題ない。ちょっと出てくるだけだ」

「そうね。ちょっとした船旅よ」

「ですです。アシュリー様や軍人さんがいるから余裕です」


 本当は船には乗りたくないんだけどね。


「よし! では、行こう。クリフ、ヘレナ、留守を頼んだぞ」

「はい。いってらっしゃいませ」

「気を付けて」


 俺達はクリフとヘレナに見送られると、屋敷を出て、徒歩で港に向かうことにした。


「叔母上、留守は大丈夫なんですか?」


 しっかりした子達だとは思うが、まだ6歳と4歳では不安だ。


「問題ない。有事の際は私の部下が動いてくれる」

「部下?」

「私と共に漂流したアシュリー号の乗組員だ。王都に行った者もいるが、大半はここに残っている。屋敷の食事を作っているのもエーデルタルトの人間だ」


 あー、そういえば、他の乗組員のことを考えていなかった。

 叔母上だけが漂流したんじゃなくて、他の者もか……


「そいつらはエーデルタルトに戻らないんですか?」

「私に忠誠を誓った奴らだ。戻らんだろう」

「…………王都に行った奴っていうのは?」

「私が王都に行った際に酒場の娘に手を出した。ぶん殴って酒場の親父に突き出したな…………今頃は酒場で働いているんじゃないか? この前、子供が生まれたって手紙が来たし」


 王都に行ったんじゃなくて、置いていったのね……


「まあ、とにかく、留守は大丈夫ってことですね?」

「そうなる…………お前、やけにウチの子を気にするな」

「まだ幼いし、かわいいじゃないですか」


 血の繋がった従弟妹だし。


「殿下は魔術を褒められたから嬉しいんです」


 マリアが俺の本音を知ったかのように言う。

 合ってるけど。


「あー、なるほどな。わかる、わかる。エーデルタルトで評価されることじゃないしな。私もトラヴィス様に初めてお会いした時にめちゃくちゃ褒められて、絶賛されたもんだ」


 …………それで上機嫌で酒を飲み、潰され、ベッドインか?

 ナンパ野郎の常套手段じゃね?

 聞きたくなかったわー……


「ロイドもマリアに魔法を褒められると、すぐに上機嫌になるしね。似てるわ……」


 聞きたくなかったわー……

 というか、お前もたまには褒めろ。

 1号さんだろ。


お読み頂き、ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 実は親子か姉弟?と思うほどよく似てる二人だ。
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