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第096話 本当に叔母上の子か?


「それで、魔法のことを聞きたいって言っていたが、魔法に興味があるのか?」


 俺は絶対にリーシャとマリアの方を見ないようにして、話を続ける。


「はい。ロイドさんは優秀な魔術師と伺いました。それで相談に乗ってほしいのです」


 良い子だわ。

 でも、俺には毒だ。

 だって、俺が良い子だったことなんてないし。


「叔母上ではダメなのか?」

「母は礼儀作法や領主としての仕事を主に教えてくれます。魔法はあまり教えてくれません」


 あの人、感覚で魔法を使っているからなー。

 教えるのはドヘタだ。

 実際、俺も子供の時に教えてと叔母上にねだったことがあるが、『こうやって、こう!』とだけ言われ、チンプンカンプンだったことを覚えている。


「魔法を学びたいのか?」

「はい。やはり魔法があるとないとでは大きく違います。特にこの町は海に面しております。最低でも魔導船を動かせないと……」


 お国柄かねー?


「ふーん、なるほどー……」

「あの、それでなんですが、僕は魔法を使えるようになれますかね?」


 そこからかよ……

 叔母上は本当にダメだな。


「大丈夫だ。お前もだが、ヘレナも魔術師としても資質は十分にある」


 最初に食堂で見た時から気付いていたことだ。

 魔力も十分にあるし、訓練すれば魔法を使えるようになるだろう。


「本当ですか! 嬉しいです!」


 この嬉しそうな顔を見ると、本当に別の国に生まれたかったなーという思いが出てくる。


「良かったな」

「はい! あの、魔法を教えてもらえませんか?」


 魔法を習得し、自らエーデルタルト一の魔術師を名乗って何年になるだろう?

 こんなことを言われたのは初めてだ。


「いいだろう。最初の初歩だけだからたいした手間ではない。お前だけでいいか?」

「あ、ヘレナも呼んできていいですか? ヘレナも魔法を使いたいって言ってましたし」


 有望な兄妹だな。


「呼んでこい。あ、起きてたらでいいからな。無理に起こすものじゃない」

「はい!」


 クリフは元気よく返事をすると、立ち上がり、嬉しそうに部屋を出ていった。


「ようやく子供らしくなったな」


 俺はクリフが出ていった扉を見つめながら言う。


「そうね。食事の時なんか無理してる感がすごかった」

「部屋に入ってくる時もでしたね」


 リーシャとマリアも同意する。


「良いことだ。あの年齢で大人ぶられてもかわいくない」

「そうね。子供は子供らしくしないと」


 お前は子供らしくなかったけどな。

 ガキが男を夫として見るなや。


「私達はお邪魔ですか? 邪魔なら先に寝ますけど……」


 マリアが聞いてくる。


「いや、悪いが起きてろ。ヘレナが来る」


 兄がいるとはいえ、男だけだと不安に思うかもしれない。


「あー、それもそうですね。じゃあ、起きてます」

「ロイドが4歳の子に何かをするとは思えないけど、不安でしょうしね」


 やめろ。

 12歳の子が好きというレッテルを貼られた嫌な思い出が蘇る。


「俺は普通に同い年くらいが良いわ」

「私?」

「私ですか?」


 お前らだよ。


「他におらんだろ」

「そっかー」

「いやー、愛されてますねー!」


 なんでそんなに嬉しそうなのかがわからん。

 たいしたことは言ってないだろうに……


 俺が何年経ってもわからない女心に悩んでいると、部屋にノックの音が響いた。


「クリフか?」


 俺は今度は不機嫌さを出さずに普通に確認する。


「はい」

「入っていいぞ」


 俺が入室の許可を出すと、扉が開かれ、嬉しそうな表情のクリフとそんなクリフに手を繋がれた不安そうなヘレナが熊のぬいぐるみを抱いて部屋に入ってきた。


「わー、かわいいぬいぐるみですねー!」


 マリアがヘレナが抱くぬいぐるみを見て、嬉しそうな声をあげる。

 すると、ヘレナはとことことマリアのもとに向かった。


「テディ、です」


 ヘレナが熊のぬいぐるみをマリアに見せる。


「いい名前ですねー」


 マリアが笑顔でそう言うと、ヘレナがうんうんと頷いた。


「…………名前があんの?」


 俺は小声でクリフに聞く。


「…………ええ。あれは父上がヘレナの誕生日に買ったものでヘレナが大事にしているぬいぐるみです」


 なるほど……

 そりゃ大事だ。


「かわいいわね」

「ですよねー」


 リーシャにもぬいぐるみとかをかわいいと思う感性があるのだろうか?

 リーシャの部屋でそういうのを見たことがないが……


「ロイド」


 俺がリーシャをじーっと見ていると、リーシャが手招きしてきたため、ベッドに行き、マリアの隣に座った。


「殿下、かわいいですよね?」


 マリアが『わかってんな?』っていう顔で見てくる。

 かわいい…………確かにかわいいとは思うが、俺はパニャの大森林で熊におはようって言われた時から熊が嫌いなのだ。

 まあ、このぬいぐるみはデフォルメされているから嫌悪するほどでもないし、目の前にいる血の繋がった少女を傷つける趣味もない。


「確かにかわいいな…………ヘレナ、ちょっと貸してくれるか?」


 俺がヘレナにそう言うと、ヘレナはちょっと嫌そうな顔をしながら熊のぬいぐるみを渡してきた。

 俺は熊のぬいぐるみを受け取ると、魔法を使って、熊のぬいぐるみを浮かせる。


「わー!」


 ヘレナが熊のぬいぐるみを見上げながら感嘆の声をあげた。

 俺は次に熊のぬいぐるみを動かし、空中を歩かせたり、ヘレナに向かってお辞儀をさせたりする。


「すごい! すごい!」


 子供は単純でかわいいなー……


「ヘレナ、これが魔法だ」


 俺はそう言うと、魔法で操作していた熊のぬいぐるみをヘレナの頭に乗せた。


「す、すごいです! 私もやってみたい……」


 実に懐かしい気持ちになる。

 俺も叔母上の魔法を初めて見た時に同じリアクションをした。

 返ってきた答えは『こうやって、こう!』だったけど……


「よしよし、そういうわけで魔法を教えてやろう。この魔法は初心者でもできる簡単な魔法だからすぐに覚えられる」


 手を使わずに物を動かす魔法は最初に覚える魔法であり、魔力操作の訓練にも適しているのだ。


「お、お願いします!」

「よし、ヘレナ、クリフ、こっちに来い」


 俺はそう言いながらテーブルの方に行く。

 すると、2人もテーブルまでやってきたので座らせた。


「喜べ、エーデルタルト一の魔術師である俺が教えてやるんだからな」

「エーデルタルト一……すごいです!」

「ロイド様ってすごい人だったんですね!」


 子供はかわいいなー……

 変な意味じゃないぞ!


お読み頂き、ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
ララは買ったとき10歳じゃなかったでしたっけ? 61話に歳の話があります。
[気になる点] 10歳じゃなかったかな?
[一言] 何と言うか、まさかおば上と同じ感覚派とかではないですね?無いと思いたいw
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