表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

95/278

第095話 敗、北、感!


 紹介を終えた俺達は夕食を食べることにした。

 夕食はパン、肉、サラダ、スープというオーソドックスなものだが、さすがに貴族の家が出すものなので質が良い。


「まあまあだなー」

「そうね。こんなものでしょう」

「…………その芸、いつまでやる気です?」


 芸じゃない。


「味付けがいいな」

「香りも良いわよね」

「普通にすべて一級品だと思いますよ」


 まあ、結論としては美味いな。


「ウチはオリーブが採れるからな。肉を焼くのにもドレッシングにも使える」

「へー……確かに一味違いますね」


 オリーブで儲けているって言ってたけど、確かにこれは売れるわ。


「買っていく?」


 リーシャが聞いてくる。


「買っても誰も調理できんだろ」


 油を舐めるんか?


「それもそうね。ドレッシングくらいは買えるかな?」

「ここを出る前に町の店を見てみよう。テールとは違う意味で滅多に来られるところではないしな」

「そうしましょう」


 ここはそんなに栄えた町ではないから女の買い物に付き合うのも楽だろう。

 …………多分。


「気に入ってもらえたのなら良かった。明日は休むんだったな?」

「ですね。ゴロゴロします。正直、まだ揺れている錯覚がするんですよ」


 実際に揺れているわけではないが、何故か揺れるように感じる。


「まあ、休め。私は仕事で家を空けるが、何かあったらメイドに言え」

「そうします」


 俺は頷くと、ワインを一口飲み、食事を再開する。

 食事中、従弟妹の2人にエーデルタルトのことを話したり、逆にギリスのことを聞きながら交流し、食事を終えた。




 ◆◇◆




 食事を終えた俺達は再度、風呂に入ると、部屋に戻り、一休みすることにした。

 俺はベッドに腰かけ、リーシャとマリアはテーブルについて、まったりとしている。

 俺もリーシャもマリアもすでに寝間着に着替えており、さすがのリーシャもここではバスタオル一枚の半裸ではなかった。


「良い子達だったじゃないの」

「そうですねー。2人とも素直でかわいかったです」


 まあ、確かにかわいかったし、微笑ましかった。


「叔母上の子とは思えん」

「顔立ちは似てましたよ。それに次期当主ですからちゃんと育てているのでしょう」


 大変だねー。

 あと、地味に気になっているのはヘレナの方がどう育つかだ。

 エーデルタルトの風習を学ばないといいけど……


「まあ、2人とも立派な貴族に育ってほしいな…………ん?」


 俺達が話していると、ノックの音が響いた。


「誰だ?」


 俺は不機嫌を隠さずにノックの音が聞こえた扉に向かって聞く。


「すみません、クリフです」


 クリフ?

 うーん、正直、これは失礼を通り越してありえないことなんだがなー……

 まあ、子供にはわからんわな。


 食事を終え、後は寝るだけの客人夫婦の寝室を訪ねてはいけないのだ。

 もっと言えば、客室に近づいてさえもいけない。


 だって、ね?


「いいか?」


 俺はリーシャとマリアに確認する。


「うーん…………まあ、6歳の子供だしね」

「私も構いません。何か話があるんでしょうし、せっかくの機会ですからね」


 2人はそう言うと、ワインを持って、ベッドの方に移動した。


「入っていいぞ」


 俺は2人がテーブルから離れたので入室を許可することにした。

 すると、ゆっくりと扉が開かれ、クリフがそーっと覗いてくる。


「どうした?」

「あ、あの、マズかったでしょうか?」


 マズいが、そういうことをしていたわけではないので問題はない。


「いや、何かあったのかと心配になっただけだ」


 こういうのは今ここで教えることでもない。

 というか、もしかしたらこれがマナー違反なのはエーデルタルトだけかもしれないし。


「遅くにすみません」

「大丈夫だ。何か用か?」

「あのー、ちょっとお話をいいですか?」


 話?

 さっきすればいいのに……

 いや、叔母上に聞かせられない話か。


「いいぞ。まあ、座れ」

「はい。ありがとうございます」


 クリフはおずおずと部屋に入ってくる。

 そして、チラッとベッドにいるリーシャとマリアを見ると、申し訳なさそうにテーブルまでやってきて、椅子に座った。


「そんなに固くなるな」

「すみません。お邪魔でしたでしょうか?」


 クリフは再び、チラッとリーシャとマリアを見る。


 意味をわかって言ってる?

 いや、そんな感じでもないな。


「話をしていただけだ。話なんかいつでもできるし、問題ない。それよりも滅多に会うことのないお前の話を聞きたい」


 めっちゃ優しいな、俺。

 自画自賛。


「そ、そうですか……」


 クリフはあからさまにホッとした表情をしている。


「しかし、明日じゃダメだったのか?」

「明日は母と共に町を回るんです。ロイドさん達は明後日に母と共に出ると聞いていますし、その前に話をしたくて」


 まだ6歳だっていうのに仕事か?

 大変だねー。


「お勤めご苦労様。話って何だ? エーデルタルトのことでも聞きたいのか?」

「いえ、魔法のことを聞きたいんです」


 魔法?


「なんだそんなことか…………俺はてっきり領主になりたくないとかそういう類かと思っていた」


 よくあることだ。

 だって、子供は遊びたいし、つまらない仕事なんかしたくないものだし。


「領主にはなりたいと思っています。亡き父のように立派な男になりたいんです」


 まぶしー!

 魔術に傾倒して、ロクに学んでこなかった俺にはこの6歳がまぶしすぎる。


「そ、そうか……それでこそ男子だ!」

「はい!」


 うわー……

 リーシャとマリアの方を見れねー……

 あいつら、絶対にニヤニヤしてると思う。


お読み頂き、ありがとうございます。

この作品を『おもしろかった!』、『続きが気になる!』と思ってくださった方はブックマーク登録や↓の『☆☆☆☆☆』を『★★★★★』に評価して下さると執筆の励みになります。


よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【新作】
宮廷錬金術師の自由気ままな異世界旅 ~うっかりエリクサーを作ったら捕まりかけたので他国に逃げます~

【新刊】
~書籍~
左遷錬金術師の辺境暮らし 元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました(1)
左遷錬金術師の辺境暮らし 元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました(2)

週末のんびり異世界冒険譚 1 ~神様と楽しむ自由気ままな観光とグルメ旅行~
週末のんびり異世界冒険譚 2 ~神様と楽しむ自由気ままな観光とグルメ旅行~

【販売中】
~書籍~
廃嫡王子の華麗なる逃亡劇 ~手段を選ばない最強クズ魔術師は自堕落に生きたい~(1)
廃嫡王子の華麗なる逃亡劇 ~手段を選ばない最強クズ魔術師は自堕落に生きたい~(2)

~漫画~
廃嫡王子の華麗なる逃亡劇 1 ~手段を選ばない最強クズ魔術師は自堕落に生きたい~

【現在連載中の作品】
その子供、伝説の剣聖につき (カクヨムネクスト)

週末のんびり異世界冒険譚 ~神様と楽しむ自由気ままな観光とグルメ旅行~

左遷錬金術師の辺境暮らし ~元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました~

バカと呪いと魔法学園 ~魔法を知らない最優の劣等生~

35歳独身山田、異世界村に理想のセカンドハウスを作りたい ~異世界と現実のいいとこどりライフ~

最強陰陽師とAIある式神の異世界無双 〜人工知能ちゃんと謳歌する第二の人生〜

廃嫡王子の華麗なる逃亡劇 ~手段を選ばない最強クズ魔術師は自堕落に生きたい~

【漫画連載中】
地獄の沙汰も黄金次第 ~会社をクビになったけど、錬金術とかいうチートスキルを手に入れたので人生一発逆転を目指します~
がうがうモンスター+
ニコニコ漫画

廃嫡王子の華麗なる逃亡劇 ~手段を選ばない最強クズ魔術師は自堕落に生きたい~
カドコミ
ニコニコ漫画

35歳独身山田、異世界村に理想のセカンドハウスを作りたい ~異世界と現実のいいとこどりライフ~
カドコミ
ニコニコ漫画

左遷錬金術師の辺境暮らし ~元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました~
ガンガンONLINE

【カクヨムサポーターリンク集】
https://x.gd/Sfaua
― 新着の感想 ―
[一言] 一気読みしたんですけど最高によかったです。 これからも追っていこうと思います
[一言] 良い子がマブシーッ!(>ω<)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ