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第093話 田舎じゃなきゃここの子になるのに


「それで島の調査に行って、帰らぬ人ですか……」

「そうだな……私は止めたんだ。そんなもんは部下か王都の兵にやらせればいい」

「そういうわけにはいかないでしょうよ。大手柄ですし……」


 そんな宝剣を取り返したのなら王家の覚えも良くなるしなー。


「同じことを言われた…………私に良い暮らしをさせたいし、出世して子供に誇れる親になりたいと言われた。そう言われたら私は何も言い返せん…………浮気性のくせに」


 叔母上がハンカチで目頭を押さえる。


「まあ、男はそう思うでしょうよ。しゃーないです」

「そんなつまらんものより、そばにいてくれた方が良かったわ。お前も妻や子供を残して…………いや、お前はいいか。出世には興味ないだろうし」

「王族ですしねー。適当に豪勢に暮らしながら魔術の研究をする生活の方が良いです」

「妻や子供をないがしろにするような男にはなるなよ……」


 でも、そういう男を好きになるのが女なんだよなー……

 叔母上なんかが思いっきりそうだ。


「そうします…………じゃあ、手伝わなくてもいいですか?」


 俺がそう言うと、泣いていた叔母上が鬼の形相で俺を見てくる。


「貴様、トラヴィス様の遺体をそのままにしておく気か!?」


 いや、知らん……


「というか、叔母上も子供がいるわけですし、そういうのは部下に任せた方が良いですよ」

「私の夫の遺体は私が回収する! 何のためにこれまで魔法を学んできたと思っている!?」


 ダメだ、こりゃ……

 自分は夫を止めて、ぐちぐち言うくせに、自分は良いらしい。

 さすがは王族。

 わがままだ。


「ですが、危険でしょう? トラヴィス殿はなんで亡くなられたんです?」

「罠だな。毒ガスらしい」


 普通にやべーよ。


「やめましょうよ」

「毒ガスなど私の魔法で防げるし、賊なんかの罠に負けるアシュリー様ではない」

「えー……」


 トラヴィス殿はよくこんなのを嫁に迎えたな……


「それに他にも私が出ないといけない理由がある」


 ん?


「それはなんです?」

「後で教えてやる。お前も魔術師だし、役に立つだろうからついてきてほしい。王家の宝剣以外の物は持っていっていいぞ」


 スカルは貴族から盗みを働いていたらしいし、お宝がいっぱいかもしれない。


「うーん……ようやく物語が書けそうな冒険だが、どうする?」


 俺はリーシャとマリアに聞いてみる。


「わたくし達が行かなくてもアシュリー様は行かれるでしょうし、一緒に行った方が良いと思います」

「私もそう思います。財宝ももらえてエイミルまで連れていってもらえるわけですし、協力すべきです」


 うーん、半分はそう思っているのだろうが、もう半分は共感だろうなー……

 じゃなきゃ、リーシャはともかく、マリアが賛成するわけない。


「じゃあ、手伝いましょう」

「うん、さすがはロイド! それでこそ栄えあるエーデルタルトの男子だ!」


 こいつ、さっきと言ってることが違うし……

 まあ、今度、ジャックに会ったら自慢すればいいか。

 本に書けそうな冒険だったぞーって……


「いつ行きます?」

「明日」


 早っ!


「急ですね」

「私はいつでもいいけど、お前らはさっさとウォルターに行きたいだろ。こういうのは早い方が良い」


 ホント、せっかちな人だなー。


「一日くらいは休ませてくださいよ」

「そうか? じゃあ、明後日な」

「補給とかしたいんですけど……」

「後で用意しておく」


 この人、仕事はできる人っぽいが、協調性は皆無だな。


「叔母上って魔法のカバンとか作れません?」

「作れない」


 役にも立たないっと。


「そうですか……」

「ん? なんだ? 欲しいのか?」

「俺も1つは持っているんですけどね。これからの旅を考えると、2つくらいは欲しいなーっと」

「ふーん……じゃあ、それもやる。補給物資を入れておくよ」


 叔母上、かっこいい!


「きれいなのにしてくださいよ」

「きれいって言われても普通のしかないぞ」

「これよりきれいです?」


 俺は肩にかけているカバンを持ち上げる。

 すると、叔母上がカバンを見て、呆れたような顔をした。


「…………そりゃな。というか、そのみすぼらしいカバンはなんだ? 魔法のカバンなんだろうが、もっと良いやつにしろよ」

「とある事情でもらったものなんですよ。でも、これを肩にかけると一気に王侯貴族に見えなくなるという便利なアイテムなんです」

「まあ、確かにな…………便利というか呪いのアイテムだが」


 こういう時に血を感じるな。

 俺と同じ感想だもん。


「これよりきれいならいいです。リーシャやマリアが持ってても不思議じゃないやつ」

「いや、逆にそういうのしか持ってないわ。そんな汚いのを探す方が大変だろ」


 まあ、貴族様だもんね。

 あの変人も貴族だが、あいつは論外。


「じゃあ、それでいいです」

「ん、わかった。夕食まで時間があるが、どうする? どっか行くか?」

「いや、疲れたから休みます。叔母上、風呂はあります?」

「悲しい質問だな…………お前、本当に王族っぽくなくなったわ。あるに決まってるだろ」


 そりゃそうか。


「じゃあ、風呂に入りたい」

「はいよ。ワインでも持ってきてやるからお前はそれでも飲んでろ。リーシャとマリアが先だ」

「ワインなんて気が利きますね」

「いや、普通だろ…………傲慢でわがままなお前はどこに行った?」


 そいつは墜落して死んだ。

 

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[一言] 見た目が悪いなら、普通のカバンの中に魔法のカバンを入れておけば良いのに
[良い点] 誉れは浜で死ぬ。 傲慢は森で死ぬ。new!
[一言] 掛け合いがいちいち面白くて大すき
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