第057話 ギルドに虚偽報告
俺達は森を出て、1時間くらい歩くと、アムールの町に戻ってきた。
かなりお腹が空いてきたし、さっさと宿屋に戻りたいのだが、まずはギルドへの報告が先なので我慢して、ギルドに向かう。
ギルドは昼すぎなこともあって、他のお客さんはいなかった…………と思っていたのだが、やはり隣の酒場では酔っ払いが騒いでいた。
「うるさいなー……」
俺は酒場の方を見ながらルシルの受付に向かう。
「仕方がないですよ。酒場で騒ぐなとは言えませんし」
ルシルが困った顔をするが、塞いでしまえばいいだけだ。
「まあいい。依頼を終えたから報告だ。まずはタイガーキャットの魔石な。20個ある」
俺はカバンからタイガーキャットの魔石を取り出し、受付に置く。
「多いですねー。やはり大々的な討伐を計画した方が良いかもしれません。まあ、奴隷市が終わった後になるでしょうけど」
奴隷を買って、金がなくなった冒険者が集まりそうだな。
「そうした方が良いな。町の近いところでも見たし、数が多すぎる。あれでは商人や旅人が危ない」
そんなに危ないところだと、商人が寄り付かなくなる。
商人なんかにしてもいくら港があり、儲かるとはいっても命の方が大事だ。
「ですよねー……領主様に相談してみます。森はどうでした?」
「普通。タイガーキャットが出たが、他には何も見当たらなかった。人を見たというが、盗賊の類ではないと思う。見間違えかただの冒険者だろう」
「そうですか……まあ、そうかもしれませんね。では、依頼はそれで結構です」
適当だな。
これは本当にただの埋め合わせの依頼だわ。
「じゃあ、金をくれ」
「森の調査が金貨5枚でタイガーキャットの討伐が金貨10枚ですね。魔石はどうされますか? こちらで買い取っても良いですけど」
そういや、魔石は討伐の証明ってだけで魔石自体は別料金か。
「いくらだ?」
「銀貨2枚ですね」
うーん、微妙……
だが、この程度の質ではそんなものかもしれん。
「買い取ってくれ」
「かしこまりました。では、合計で金貨19枚になります」
ルシルがそう言いながら受付に金貨を置いた。
「明日もタイガーキャットを狩ろうと思うが、ついでにやる依頼とかあるか?」
俺は金貨をカバンにしまうと、ルシルに聞いてみる。
「うーん、採取なんかはしないですよね?」
「たいして金にならないんだろ?」
「まあ、高価なものは専門の知識や技術が要りますからね。あなた方では薬草程度でしょう」
薬草って、確か銅貨1枚だっただろ。
まだゴブリンの方が良いわ。
「やらない」
「ですかー……だったらタイガーキャットを大量に狩ってください。色を付けますから。ご覧のような有様でしてね……」
ルシルが隣で騒いでいる酔っ払い共を見る。
「この町の冒険者共はどうした? あの酔っ払い共は外部の者だろ」
奴隷を買いにきたスケベ共。
まともなのもいるだろうが、昼間から酒を飲んでいるような奴らはお察しだ。
「地元の冒険者は街道付近でタイガーキャットを倒しているか、この時期はリリスに出稼ぎに行ってます」
逆に地元の冒険者が減るのか……
「じゃあ、そうするわ。明日も南の森方向に行ってみる」
「お願いします。ギルドに寄る必要はないのでそのまま好きな時間に行ってもらって構いません」
「わかった。あ、そうだ。奴隷商の店ってイルカ……クジラ亭の先で合ってるか?」
「確かにイルカ亭の先ですけど……」
せっかくクジラ亭に言い直したのにイルカ亭って言うなよ。
ニコラが可哀想だろ。
「ふーん、じゃあ、行ってみるか」
「え? 行くんですか?」
ルシルが焦りながらリーシャとマリアの方を見る。
「なんだよ」
「いや、その、先に言っておきますが、奴隷だからって何をしていいわけではありませんからね。殺したら器物破損で罰金刑です」
逆に言うと、罰金で済むわけね。
「殺さんわ」
「いや、あなたはそうでも……」
あー、こいつ、完全に俺らがエーデルタルトの貴族だとわかってるな。
「何も性奴隷を買うわけではない。お世話係とか荷物持ちとかあるだろう。ちょっと気になるから見てみるだけだ」
「そうですかー……買うのはいいですけど、ちゃんと世話をしないといけませんよ」
本当にペット扱いだな。
「わかっている。ちなみに聞くが、獣人族を冒険者にできるのか?」
「できるできないで言えばできますが、この国では無理ですね。テールは獣人族に人権を認めていないので…………他の国なら大丈夫です」
低俗な国だな。
さすがはテール。
「冒険者登録はやめとくか…………別に外に連れ出しても良いんだろ?」
「構いませんが、門でチェックされますよ。捨てる人もいますから」
ペットだなー……
「わかった。まあ、行ってみるわ」
「あまり見た目に麗しい人を買わない方が良いですよ…………」
ルシルはそう言って、リーシャとマリアを見る。
どうでもいいが、俺が女を買うと決めつけてんな。
「別に他の女を求めているわけではない。ただの興味本位だ」
実際、いらない。
それどころじゃないし。
「ですかー…………男の人はみーんな、そう言うんですよねー」
ルシルがチラッと隣で騒いでいる酔っ払い共を見た。
「一緒にすんな」
でも、何故か、リーシャの方を見れない自分もいた……
怖いもん。
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