表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

5/271

第005話 ハイジャーック!


 俺とリーシャは起きると、マリアと共に朝食を食べた。

 そして、朝食を食べ終えると、マリアは部屋に戻り、出発の準備を始めた。


 俺とリーシャは物がなく、準備することがないため、自分達の部屋の窓からそっと外を見る。


「どう? 追手は?」

「ないな……まだ調査は終わっていないのか?」

「どちらにせよ、私とあなたが王都にいないことはバレているでしょ」


 そうなると、少なからず捜索隊は出ているはずだ。


「俺達の格好から宿の人から町の人へ噂になっている可能性が高い。さっさと逃げた方が良いな」

「服や下着を買いたいけど、我慢するわ」


 一応、ヨゴレを除去する魔法は使っているが、毎日、風呂に入り、入念なケアをする貴族令嬢にはきついだろう。


「悪いな」

「いえいえ。お互い様でしょう」


 まあな。

 正直、俺も風呂に入りたい。


「――殿下ー! リーシャ様ー!」


 俺達が窓から外を覗いていると、ノックの音と共にマリアの声がした。


「入っていいぞ」

「はい、失礼します…………何をしてらっしゃるんですか?」


 部屋に入ってきたマリアが聞いてくる。


「追手がいないかの確認だ」


 俺は窓から外を覗きながら答えた。


「あ、そうでしたね。変装でもした方がよろしいのでは?」

「もう遅いな。ところで、マリア、殿下はやめろ。やんごとなき身分なのはバレているだろうが、さすがに殿下はマズい」


 王族はマズすぎる。


「し、しかし、殿下に失礼になります」

「ならんから安心しろ。俺は廃嫡されたし」

「あ、そうでしたね。では、ロイド様と呼びます…………ふふっ、こう呼ぶと、王妃様になった気分になれ――すみません!!」


 マリアは上機嫌に笑っていたのだが、俺と同じく、窓から外を覗いていたリーシャがゆっくりマリアの方を振り向くと、急に謝罪した。


「マリア、出発時刻はいつかしら?」


 リーシャの声が冷たい。


「も、もうすぐです! ごめんなさい、ごめんなさい!」


 マリアが涙声で謝っている。


「よし、計画を実行しよう」


 俺はそう言って、窓から離れる。


「そうね。マリア、空港まで案内しなさい」

「ははっ!」


 マリアはこれでもかと言うくらいに頭を下げた。


 宿を出た俺達はマリアと共に空港を目指す。

 道中、誰ともすれ違うことはなかった。

 だが、家の中からチラチラと視線を感じていた。

 皆、貴族が気になるが、怖いから関わりたくはないのだろう。


「あれが空港になります」


 しばらく歩いていると、町の外の草原に数機の飛空艇が見えてきた。


「あまり大きくないわね」


 確かにサイズ的にはどれも小型船程度であり、乗客は10人程度しか乗れないだろう。

 とはいえ、ハイジャックする俺達には好都合である。


「この町にある飛空艇はそんなものですよ。でも、あのサイズでも教国まで行けるんです」


 というか、小さい方が魔力の消費が小さいから遠くまで飛ばせる。


「俺らの他に客はいないのかね?」

「いないそうですよ。他の便も数人です」


 ますます好都合。


「では、行こうか」


 俺達は草原まで行くと、飛空艇近くにある受付にチケットを提出した。


「はい、3名様ですね。どうぞあちらにお乗りください。もう少しで出発となります」


 俺達は受付の人に言われた飛空艇に乗り込むと、客室に入った。

 なお、客室といっても一つの大部屋でしかなく、床に絨毯が敷いてあるだけだ。


「安っぽいわね」


 リーシャが内装を見て、不満を漏らす。


「平民が乗る船ですからね。こんなものだと思いますよ」


 当たり前だが、俺達のような王侯貴族が乗る飛空艇は豪華だ。

 とはいえ、そんなものに乗る金はないし、警備も厳重だからハイジャックできない。


「まあ、贅沢を言うつもりはないわ。快適な空の旅を楽しみましょう」

「私、実は飛空艇に乗るのが初めてなんですよね」

「そうなの? まあ、特に思うことなんてないわよ。ただ、離陸の時は楽しいわね。そこの窓から外を見てなさいよ」

「そうします」


 リーシャが勧めると、マリアは窓から外を覗き始めた。


「俺はちょっと甲板を見てくるわ」


 俺はリーシャに手を上げる。


「いってらっしゃい」


 リーシャは満面の笑みで手を振ってくれたので俺は客室を出ると、階段を登り、甲板に出る。

 甲板では数人の男が最後のチェックをしていた。


「お客さん、何か?」


 1人の船乗りが俺に近づいてくる。


「チェックしているようだが、飛行に問題はないか?」

「もちろんです。チェックも終わりますので客室にお戻りください。もう間もなく離陸します」


 そうか、そうか。

 問題ないなら良かった。

 では、面倒だから一気に眠らせよう。


 俺は人差し指を上に向けた。


「スリープ!」


 俺が魔法を使うと、目の前の男も何かをチェックしていた男もバタバタと倒れた。

 俺は面倒だが、一人一人を背負うと、飛空艇の外に並べていく。

 そして、操舵室に入り、寝ている3人の魔術師も飛空艇の外に並べた。


「よし、これでオッケー」


 もうこの飛空艇に乗っているのは俺達だけだ。


「さて、では、出航!」


 俺は舵を握ると、魔力を流し、飛空艇を操作し始める。

 すると、飛空艇が宙に浮き出した。

 多分、客室ではマリアがはしゃいでいることだろう。


「さすがに小さい町だと警備もなく、ハイジャックが余裕だなー」


 俺はある程度、飛空艇を浮かすと、操舵室にあった方位磁針や地図を見ながらウォルターを目指し、飛空艇を飛ばせた。


お読み頂き、ありがとうございます。

この作品を『おもしろかった!』、『続きが気になる!』と思ってくださった方はブックマーク登録や↓の『☆☆☆☆☆』を『★★★★★』に評価して下さると執筆の励みになります。


よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【新作】
宮廷錬金術師の自由気ままな異世界旅 ~うっかりエリクサーを作ったら捕まりかけたので他国に逃げます~

【新刊】
~書籍~
左遷錬金術師の辺境暮らし 元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました(1)
左遷錬金術師の辺境暮らし 元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました(2)

週末のんびり異世界冒険譚 1 ~神様と楽しむ自由気ままな観光とグルメ旅行~

~漫画~
廃嫡王子の華麗なる逃亡劇 1 ~手段を選ばない最強クズ魔術師は自堕落に生きたい~

【販売中】
~書籍~
廃嫡王子の華麗なる逃亡劇 ~手段を選ばない最強クズ魔術師は自堕落に生きたい~(1)
廃嫡王子の華麗なる逃亡劇 ~手段を選ばない最強クズ魔術師は自堕落に生きたい~(2)

【現在連載中の作品】
その子供、伝説の剣聖につき (カクヨムネクスト)

週末のんびり異世界冒険譚 ~神様と楽しむ自由気ままな観光とグルメ旅行~

左遷錬金術師の辺境暮らし ~元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました~

バカと呪いと魔法学園 ~魔法を知らない最優の劣等生~

35歳独身山田、異世界村に理想のセカンドハウスを作りたい ~異世界と現実のいいとこどりライフ~

最強陰陽師とAIある式神の異世界無双 〜人工知能ちゃんと謳歌する第二の人生〜

廃嫡王子の華麗なる逃亡劇 ~手段を選ばない最強クズ魔術師は自堕落に生きたい~

【漫画連載中】
地獄の沙汰も黄金次第 ~会社をクビになったけど、錬金術とかいうチートスキルを手に入れたので人生一発逆転を目指します~
がうがうモンスター+
ニコニコ漫画

廃嫡王子の華麗なる逃亡劇 ~手段を選ばない最強クズ魔術師は自堕落に生きたい~
カドコミ
ニコニコ漫画

35歳独身山田、異世界村に理想のセカンドハウスを作りたい ~異世界と現実のいいとこどりライフ~
カドコミ
ニコニコ漫画

左遷錬金術師の辺境暮らし ~元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました~
ガンガンONLINE

【カクヨムサポーターリンク集】
https://x.gd/Sfaua
― 新着の感想 ―
[一言] 息をするように罪を重ねるなwww
[良い点] 愚王だと思ってたけど、こういうところがあるから主人公を時代の王にしなかったのかもな…w と考えると、ちゃんとした王様だった可能性すら出てくる
[一言] 〉「さすがに小さい町だと警備もなく、ハイジャックが余裕だなー」 国王はこの男を何でもっと早く投獄しておかなかったんだ! これから国際問題を次々引き起こすだろうな!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ