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第048話 作戦会議


 俺達は嫌々ながらもゴミ拾いをし、ゴミを指定の場所に捨てると、町の雑貨屋に寄って、地図を購入することにした。

 さすがは交易が盛んな港町だけあって、広域の地図から海図まで売っていた。

 俺はちょっと高いなと思ったが、必要な物なので購入し、宿に戻る。

 そして、部屋のテーブルに地図を広げながら今後の計画を練ることにした。


「海路を使ってもウォルターは遠いわね」

「それは仕方がない。問題はどれくらいかかるかだな」


 海図を見てもさっぱりわからん。


「途中途中で各港に寄って、補給がてらに情報収集をしましょうか」

「そうするか……」


 1ヶ月もかかったら最悪だし。


「あのー、軍船を奪うんですよね? テールの軍船で別の国の港に行くのはマズいのでは?」


 確かに……


「良くて拿捕。最悪は砲弾の雨で海に沈むか?」

「多分……」


 マリアがいやーな顔をする。


「となると、一気にウォルターを目指すか……」

「危険じゃない? 私達、海のシロウトよ? もっと言うと、私は泳げない」

「私もですー」


 俺もだよ……


「うーん、航海士を雇うか?」

「危険でしょ。それに、頷く人はいないと思うわ」


 だろうなー。


「あのー、やっぱり一気にウォルターを目指すのはやめませんか? まずはこの国を出ることを優先し、そこから地道に陸路で行きましょう。正直、私は沈没する未来しか見えません」


 かつて、嵐などからの沈没を避けるために船首に女神の像を取り付けたという。

 だが、ここにいるマリアはそれすらも凌駕しそうな不運の持ち主だ。


 俺の脳裏には『ほらー! やっぱりぃー!』と泣きながら海に沈んでいくマリアが見える。

 もちろん、その時は俺とリーシャも沈んでいる。


「…………そうね」


 リーシャがそっと目を逸らす。

 どうやらリーシャも俺と同じことを思ったようだ。


「となると、テールの隣国であるエイミルか?」

「いいんじゃない? エイミルはウチとは縁もゆかりもない国だし、貴族ってバレても駆け落ちして、冒険者をしてますで通るでしょ」


 エイミルはテールを挟んでいることもあって、エーデルタルトとは国交がほぼない。

 詳しくは知らないが、悪い噂を聞く国ではないし、いいかもしれない。


「マリアもそれでいいか?」

「はい。高所恐怖症の次に水恐怖症は勘弁願いたいです」


 だよなー。


「じゃあ、エイミルで決定ね。そう遠くはないし、2、3日で着くでしょ」

「2、3日…………殿下ー、あまり陸地から離れないでくださいね」


 マリアが上目遣いで懇願してくる。

 多分、嫌な想像をしていると思われる。


「わかってるよ。エイミルだったら小型船で十分だな。問題はどうやって奪うかだ」

「そこよね。警備がきつかったのよね?」

「ああ。魔法でどうにかできんこともないが、その後がダメだ。間違いなく、大ごとになるし、戦艦で追ってくる」


 船を奪って、はい、さようならでは終わらんだろう。

 絶対に追ってくるし、それこそ砲弾の雨だ。


「堂々と奪うのはダメ…………やっぱりこっそり奪う感じ?」

「そうだな。夜とかにこっそり忍び込んで奪おう」


 マリアがいる時点で危険だから堂々とは無理だ。


「それ、上手くいきますか? 夜とはいえ、警備はしているでしょうし」


 微妙……


「陽動はどう? この前の護符を使って、領主の屋敷を放火しましょうよ。それで騒いでるうちに船を強奪」

「ふむふむ。リーシャ作戦か」


 さすがは下水令嬢。

 自分の失敗を糧にした。


「ロイド作戦ね」

「お前だよ」

「どっちもですからケンカしないでくださーい」


 はいはい。


「ケンカしてないっての」

「そうよ。それよりも陽動作戦でいい?」

「うーん…………まあ、それでいくかー」


 どうやって護符を仕掛けようか……


「要は警備が薄い時に作戦を実行すればいいんですよね? 奴隷市の時にやるのはどうでしょう? この町にいる人って奴隷市が目当てなわけですし、当日は奴隷市をする会場にかなりの人が集まると思うんです。そうしたら領主的にも警備に人を割くと思います。その時に殿下の護符でぼやを起こせば、大騒ぎです。その隙にこっそりと奪いましょう」


 ふむ、さすがは下水……ってマリアー!?


「マリア、どうした? ついに下水に毒され、泥水ワインになったか?」

「あなたのせいでドス黒ワインになったのよ」


 あの純粋で疑うことを知らなかった田舎者が真っ黒に……


「それ、絶対によそでは言わないでくださいね。ウチのワインへの風評被害がすごそうです」


 確かに……

 冗談でも俺らが言ったらヤバそうだ。


「どうする?」


 俺はリーシャに確認する。

 もちろん、風評被害の方ではなく、作戦の方だ。


「いいんじゃない? 確かに警備の目は奴隷市の方に向くでしょう。領主の屋敷を放火するよりかはリスクが小さいと思う」

「奴隷市っていつだ?」

「さあ? あ、でも、ニコラが知ってるんじゃない?」


 この町の住人で宿屋の娘ならさすがに知ってるか。


「ちょっと聞いてくるわ」


 俺は立ち上がると、部屋を出て、1階の受付に向かう。

 1階に下りると、ニコラが受付に座りながら暇そうに頬をついていた。


「ニコラ、ちょっといいか?」


 俺は階段に腰かけ、ニコラに声をかける。


「あ、お客さん、どうされました?」


 ニコラがハッとして顔を上げた。


「ちょっと聞きたいんだが、奴隷市っていつだ?」

「あれ? 知らないんですか? 奴隷市が目的じゃないんです?」


 やっぱりここに来る客はそう思われるんだな。


「俺らはただの観光。ここに来てから奴隷市を知った」

「へー、観光ですかー。見るものはないですよ」

「それはお前がここの住人だからそう思うだけだ」

「そんなもんですかねー?」


 エーデルタルトにも一応、でっかい時計台がある。

 他国では有名ではないが、エーデルタルトでは有名な名所だ。

 王都に来た者は必ずと言っていいほど見に行くらしいが、俺には何が面白いのかさっぱりわからん。


「そうだよ。それで? 奴隷市はいつだ?」

「5日後です。昼間にそこの広場で自由市が開かれ、夜は特別な奴隷のオークションが開催されます。熱気がすごいですよ? 私的には嫌な熱気ですけど…………それにしてもお客さん、あんな美人とかわいらしい奥さんがいて、まだ欲しいんです? 好きですねー」


 何故にそう思う?


「俺はいらん。なあ、奴隷市ってそういう客が多いのか?」

「大半はそうじゃないですかね? もちろん、労働力や魔法を使える特殊な奴隷が欲しいっていう人もいるでしょうが、大半は女性目当てでしょうね。ほら、冒険者がたくさん集まっているでしょ」


 言われてみれば、ギルドの酒場で騒いでたな。


「ふーん、冒険者が買うのか……」

「冒険者は大変ですからねー」

「女を買う気持ちがわからん」

「そら、お客さんは恵まれてますもん。あの美人、ヤバくないです? 私、ガチへこみなんですけど」


 そうかもしれんな。

 子供の頃から隣に絶世がいた。

 慣れてきたが、今でも美人だとは思う。


「お前はモテるだろ」


 華やかだし、愛嬌がある。


「口説いてくるのがガラの悪いのばっかりなんですよね」

「この町に住んでたらそうだろうよ」

「お客さん、旅の人だよね? リリスはどうだった?」

「普通。まあ、ここよりかは治安がいいな」


 領主が二流だけど。


「やっぱりそうかー」


 リリスに行きたいのかね?

 まあ、リリスの方が大きいし、治安も良いならそっちが良いわな。


「移るのか?」

「考え中」

「ふーん……まあいい。教えてくれて感謝する。釣りはやるから夜にワインを持ってこい」


 俺は金貨1枚を手渡す。


「お客さん、わかってるねー。今日の晩御飯は精のつくものにしてもらおうか?」

「いや、魚がいい。せっかく港町に来たんだからな」

「了解。良いワインを持っていくよ」

「頼むわ」


 俺はそう言うと、立ち上がり、部屋に戻った。


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