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第047話 偵察と掃除


 翌日、俺達は朝早くに起きる。

 寝ぼすけなリーシャを何とか起こし、朝食を部屋で食べ、準備を終えると、宿屋を出た。

 そして、まだ準備をしている市場に行くと、北に向かって歩いていく。

 すると、どんどんと潮の香りが強くなっていった。


「カモメの鳴き声も聞こえ始めましたし、海って感じがしてきましたねー」

「だなー」


 俺もそこまで海に行ったことがあるわけではないが、潮の香りと鳥の鳴き声が聞こえてくると、海に来たっていう感じがする。


 俺達が海の情緒を感じていると、家屋が立ち並ぶ通りを抜け、海に出た。

 海は港となっており、朝早くから大勢の漁師が忙しなく、働いている。

 港に停まっている船は大半が漁船のようでそんなに大きくはない。


「魚臭いわね」


 確かに生臭い匂いがする。


「それは仕方がないだろう。しかし、漁船ばっかりだな…………」


 港には漁船がずらっと並んでおり、海がほとんど見えない。


「漁師に聞いてみる?」

「忙しそうだし、やめておこう」


 気性が荒いらしいし、トラブルの元だ。


「あっちに防波堤がありますよ」


 マリアが指差した方向には海に向かって伸びている防波堤があり、防波堤の先には灯台が見えている。


「あそこからなら港の全貌が見えそうだな。行ってみよう」


 俺達は漁港をスルーし、灯台の方に向かった。

 灯台に行くまでに何人かの釣り人を見たが、結構釣れているようで魚が豊富なのがわかる。

 そして、灯台まで来ると、灯台の中に入ろうと思い、扉を開けようとしたが、鍵かかって中に入れなかった。


「ダメ?」

「ダメだな。まあ、関係者以外は無理だろう」


 そんな気はしていた。


「ここからでも結構見えますよ」


 マリアが言うように灯台に上らなくても十分に港全体が見える。


「私達がさっきいたところはあそこですね。漁師さん達専用の漁港って感じです」


 港はエリアが3つに分かれていた。

 俺達がさっきいたところには漁船がひしめいており、マリアが言うように漁港だろう。


「右側は商船ね」


 漁港の右側には数が少ないが、商船が見えている。

 今は朝早いから少ないのだろうが、多分、これから増えていくと思う。


「左側が軍だな……」


 漁港の左側には大砲を積んだ明らかな軍船が見えている。


「詳細は見える?」

「待ってろ」


 俺は目に魔力を集中させると、視力を上げる魔法で軍船を見る。


「大型が3隻、中型が10隻、小型が20隻はあるな…………そこまで大規模な艦隊ではないが、厄介なことは確かだ」


 この領地の規模を考えれば、この程度だろう。


「魔導船は?」

「大型が1隻、中型が2隻、小型が4隻だ」

「それって多いの?」

「いや、普通。こんなもんだろ」


 魔導船は無風でも走れるというメリットがあるが、無風の海なんかほとんどない。

 とはいえ、とっさの方向転換等には優れているため、どこの軍も数隻は持っているはずだ。


「奪えそう?」

「うーん、当たり前だが、警備の兵が多いな…………しかも、いつでも出港できるようにしてある」


 基地にいる兵が多すぎる。

 まだ朝だぞ。


「奴隷市のせいかもね。今の時期は商船が多いだろうし、海賊や事故のために備えているんでしょう」

「多分、それだな」

「漁船や商船に魔導船はある?」

「ない。魔導船はどうしても魔術師が必要になるからな」


 漁師に魔術師はいないだろうし、商人にしても魔導船を持っている人は少ないと思う。

 魔術師を雇えばいいかもしれないが、高いだろうし、その費用を使うなら飛空艇を使うだろう。


「となると、軍から奪うしかないわね」

「だなー」

「奪うならどれ?」

「小型船か中型船だな。大型船は魔力消費が大きい」


 当たり前だが、船が大きくなればなるほど魔力の消費は大きくなる。


「私達3人だと小型船?」

「そうだが、船でどこまで行くかによる。一気にウォルターまで行こうとすると、小型船では厳しいだろう」


 かなりの距離があるし、長旅に耐えられる船じゃないといけない。

 シージャックをするわけだからあまり他の港には寄れないだろうし。


「その辺は地図を見ながら相談ね」

「だな。とりあえずはもう十分だ。地図を買って、宿に戻ろう。計画を考える」

「そうね」


 俺とリーシャは用件が済んだので歩き出す。


「あのー、清掃の仕事はー?」


 話に加わらず、防波堤から海を覗き込んで魚を見ていたマリアが顔を上げた。


「清掃、ね……」

「しないとマズいか?」


 やりたくない。


「仕事放棄はマズいような気がします。せめて、午前中は掃除しましょうよ」

「…………掃除をすると、学生時代の懲罰を思い出すんだよなー」

「…………そうね」


 貴族学校では問題を起こしても退学になったりすることはないが、奉仕活動という名の清掃ボランティアをしないといけなかった。

 これが結構、屈辱なのだ。


「私はしたことがないです。殿下はサボりすぎ、リーシャ様は遅刻が多すぎるのが悪いんですよ」


 正論を言う皆勤賞の男爵令嬢。


「あんな授業より、魔術の研究の方が有意義だろ」

「私は魔術のことに詳しくないのでそれはちょっとわかりかねますが、授業くらいは出ましょうよ」


 面白くないんだもん。


「私は出てた」

「リーシャ様は堂々と悪びれもせずに午後から来てましたね…………」

「メイドが起こしてくれなくてね」


 嘘つけ。

 お前が起きないだけだろ。


「…………そんなんだから廃嫡になったんじゃないですか? 次期王も王妃も悪知恵ばっかり成長して、この体たらくですもん」

「……………………」

「……………………」


 そ、そんなことないぞ!

 イアンだって、実習ばかりに力を入れて、座学は寝てたそうだし…………となると、こいつか。


 俺はチラッとリーシャを見る。


「わたくしのせいだと?」

「お前の遅刻のせい」

「どう考えても殿下が魔術に傾倒したからでしょう」


 いや、お前のせい。


「ケンカしないで掃除しましょうよー。したくない気持ちはわかりますが、そうやって掃除を誤魔化そうとするところですよー」


 ハァ、やるか……


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