表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

46/278

第046話 魚は美味しい


 俺達は暗くなった宿屋の女に見送られ、宿屋を出た。

 そして、宿屋を出た俺達は同時に宿屋に立てかけられている看板を見上げる。


 どう見ても、イルカだ。


「イルカだな」

「イルカね」

「イルカですねー」


 俺達の意見は一致した。


「まあいい。市場を見に行こうぜ」

「そうね」

「何か買ってもいいですか?」


 マリアが聞いてくる。


「別にいいぞ。宿代が浮いたし、欲しいものがあったら買え。テールに来ることなんて二度とないしな」


 来たくないし、来ることは絶対にない。


「はーい」


 マリアは嬉しそうに笑った。


 俺達は市場に行くと、色んな露天商を見て回る。

 露天で売っているものは各地の特産やアムールのおみやげなど様々なものが売られていた。

 俺が見たい魔法系のアイテムは売っていなかったのでリーシャとマリアに付き合いながら多くの店を見ていく。

 すると、とある店でマリアがじーっと貝殻の置物を見ていた。


「これをくれ」


 俺はマリアが見ている貝殻を指差しながら店主に言う。


「あいよ。銀貨1枚だ」


 その辺の海岸に落ちてそうな貝殻が銀貨1枚は高いと思うが、マリアが気にいっているようなので文句も言わずに銀貨を払った。


「ありがとうございます」


 マリアは嬉しそうに笑う。


「せっかくだしな」


 エーデルタルトの貴族令嬢はこういう時に絶対に物をねだらない。

 ただ、じーっと見て、主張するだけだ。

 そして、それを見て、買わない男はモテない。

 めんどくさいが、こんなものだ。


「良かったわね、マリア」

「はい」

「ところで、ロイド、私にはこの貝殻が似合うと思わない?」


 慎ましやかさを美徳とする令嬢も既婚者になるとこうなる。

 もちろん、答えは一択。


「そうだな。お前に似合わない物はないが、特に似合うだろう。店主、これもだ」

「あいよ。それも銀貨1枚だ」


 俺はまたもや銀貨1枚を払う。

 そして、その後も市場を見て回り、色んなものを見たり買ったりすると、夕方になったため、宿屋に戻った。


 宿屋に戻ると、受付にいた元気を取り戻した宿屋の女に夕食を頼み、部屋で一息つく。

 しばらくすると、宿屋の女が夕食を持ってきたため、少し早いが食べることにした。


「魚だな」

「門番の人も海産物が特産って言ってたしね」


 まあ、港町だしな。

 漁師もいるって言ってたし、魚料理がメインだろう。


「海の魚は泥臭くなくて美味しいです」


 我先に食べているマリアが幸せそうに言う。

 それを聞いた俺とリーシャも魚料理を食べてみることにした。


「ほうほう…………うん、まあまあ美味いな」

「やはり獲れたては違うわね。エーデルタルトの王都だと、塩漬けか川魚だもの…………うん、確かにまあまあね」


 まあ、こんなものだろう。


「清々しいほどに徹底してますね」


 マリアが呆れた。


「マリア、ここはテールだぞ?」

「そうよ。敵国」


 褒めることはない。


「あなた方は同盟国だろうと同じことを言いそうです……」


 まあ、リーシャは言いそう。


 俺達はサービスのワインと共に魚料理を堪能すると、風呂に入る。

 そして、風呂から上がると、まったりする。


「料理もワインも美味しかったし、部屋もきれい。まあまあ、良い宿じゃないの?」


 リーシャは今日もバスタオル一枚でベッドに座っている。


「まあな。Aランクはこういう宿にタダで泊まれるんだからすごいわ」


 多分、金貨10枚近くはすると思う。


「ジャックには似合わないけどね」


 確かに。


「私はお風呂が良かったです。ルシルさんが言ってたようにこの町は本当に潮風がネックですね。髪がべとつきました」


 俺もそれは思った。

 リーシャとマリアは髪が長いからもっとそう思うだろう。


「観光にはいいけど、その辺を考えると、海辺は住みたくないわね」

「ですねー」


 俺もそう思う。

 魚料理は美味しかったし、満足なのだが、べたつきは嫌だ。

 後は治安の悪さ。


「市場にも奴隷がいたな」

「いたわね。獣人族。首輪つけてたけど、あれペット?」


 商人っぽい男が獣人族の女の首に鎖付きの首輪を付けて歩いていた。


「みたいですね。人権なしって感じでした」


 あの扱いならティーナが逃げようと思う気持ちもわからんでもない。


「外国って本当にウチとは違うな」


 エーデルタルトではまず見ない光景だ。


「需要ないみたいだしね」


 そう言ってたな。


「まあ、確かに戦争奴隷の需要はないだろうな。ウチは軍事力が高いし、手柄を取られたくないんだろうよ」


 男なら戦場に出て、手柄を立てるもんだ。

 それがエーデルタルトの男子。


「そうね。よくわからない種族に手柄は譲らないでしょう」

「ちなみに聞くが、俺が女の奴隷を買ったらどうする?」

「殺す」


 やっぱりね。

 即答だよ。


「まあ、買う気もないが、エーデルタルトに獣人族を見ない理由もわかるわ」

「奴隷以外の獣人族っていないんですかね?」


 マリアが聞いてくる。


「さあ? ウチは当然ながら、リリスでも見なかったし、いないんじゃないか? というか、獣人族ってその辺に住んでるのかね? それともどっか別の地に住んでいる集落から攫って輸入しているものなのかねー?」


 生態がよくわからん。


「調べてみます?」

「別にどうでもいいだろ。俺達には関係ないし。それよりもシージャック計画だわ」

「そうね。明日は朝から海岸清掃だっけ?」


 リーシャがちょっと嫌そうに聞いてくる。


「そうだな。まあ、掃除なんか適当にやれ。調べるのは魔導船の有無とシージャックした後のことだ」


 追手をどうするかも考えないといけない。


「わかったわ。まあ、見てから考えましょう。ワインをもう1本空けていい?」

「そうだな。歩き疲れたし、ご褒美にしよう」

「あ、じゃあ、ニコラさんに声をかけてきます」


 マリアはそう言うと、テーブルから立ち上がった。


「ニコラ?」

「誰?」


 俺とリーシャが首を傾げる。


「お二人はもっと他の人に興味を持ちましょうよ。この宿の女の子です。イルカの看板の子」


 あー、ニコラって言うんか。

 聞いてないから知らんかったわ。


お読み頂き、ありがとうございます。

この作品を『おもしろかった!』、『続きが気になる!』と思ってくださった方はブックマーク登録や↓の『☆☆☆☆☆』を『★★★★★』に評価して下さると執筆の励みになります。


よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【新作】
宮廷錬金術師の自由気ままな異世界旅 ~うっかりエリクサーを作ったら捕まりかけたので他国に逃げます~

【新刊】
~書籍~
左遷錬金術師の辺境暮らし 元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました(1)
左遷錬金術師の辺境暮らし 元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました(2)

週末のんびり異世界冒険譚 1 ~神様と楽しむ自由気ままな観光とグルメ旅行~
週末のんびり異世界冒険譚 2 ~神様と楽しむ自由気ままな観光とグルメ旅行~

【販売中】
~書籍~
廃嫡王子の華麗なる逃亡劇 ~手段を選ばない最強クズ魔術師は自堕落に生きたい~(1)
廃嫡王子の華麗なる逃亡劇 ~手段を選ばない最強クズ魔術師は自堕落に生きたい~(2)

~漫画~
廃嫡王子の華麗なる逃亡劇 1 ~手段を選ばない最強クズ魔術師は自堕落に生きたい~

【現在連載中の作品】
その子供、伝説の剣聖につき (カクヨムネクスト)

週末のんびり異世界冒険譚 ~神様と楽しむ自由気ままな観光とグルメ旅行~

左遷錬金術師の辺境暮らし ~元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました~

バカと呪いと魔法学園 ~魔法を知らない最優の劣等生~

35歳独身山田、異世界村に理想のセカンドハウスを作りたい ~異世界と現実のいいとこどりライフ~

最強陰陽師とAIある式神の異世界無双 〜人工知能ちゃんと謳歌する第二の人生〜

廃嫡王子の華麗なる逃亡劇 ~手段を選ばない最強クズ魔術師は自堕落に生きたい~

【漫画連載中】
地獄の沙汰も黄金次第 ~会社をクビになったけど、錬金術とかいうチートスキルを手に入れたので人生一発逆転を目指します~
がうがうモンスター+
ニコニコ漫画

廃嫡王子の華麗なる逃亡劇 ~手段を選ばない最強クズ魔術師は自堕落に生きたい~
カドコミ
ニコニコ漫画

35歳独身山田、異世界村に理想のセカンドハウスを作りたい ~異世界と現実のいいとこどりライフ~
カドコミ
ニコニコ漫画

左遷錬金術師の辺境暮らし ~元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました~
ガンガンONLINE

【カクヨムサポーターリンク集】
https://x.gd/Sfaua
― 新着の感想 ―
> イルカの看板の子 クジラて言うたれやw
[一言] クジラとイルカを間違った可能性も微レ存
[一言] このメンバーで獣人奴隷を入れるとしたら、おばあちゃんかおじいちゃんになるよね。 雑用をする人として。 獣人なら高齢でも足腰が丈夫そうだし、執事とかはやはり年齢層が高い方がそれっぽいw
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ